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さて、製作に取り掛かってから早二週間。
「よし、オッケー」
『やっ……たぁー!!』
これなら申し分ない。まさかあの駄作がここまで良くなるなんてなぁ。まぁ多少自画自賛が入ってるとも言えないけど。
「でもさ、曲はできたけど動画はどうする? 俺作れないよ?」
音源だけでも動画サイトに上げられないこともないが、やっぱり動画があった方が映える。
『あぁそれなら大丈夫。あたしの仲良くしてるネット友達が動画作ってるんだけど、たまに動画作りの依頼も受けてんの。今、募集してるから頼んでみようと思うんだけど』
そう言ってアヤカはその友達とやらが作った動画を見せてきた。
「うまいな」
『でしょ? あたしこの人の動画好きなんだー』
動画作りの知識がない俺でもいいものだと分かる。というか俺好みだ。
「でもお前が頼むの?」
『うん。え、ダメ?』
ダメというか……。相手はアヤカがもう死んでることは知ってるんだろうか? ネットは顔が見えないツールだ。もし突然書き込みがなくなっても「忙しいのかな?」で済まされてしまうこともある。相手がもうこの世にはいない可能性もあるのに。
「何ていうか……。お前は生身の人間じゃないだろ? お前が頼むってことはその人を騙すことになるんだぞ。いいのか?」
アヤカは視線を上にやった。真剣に考えるときのアヤカの癖だ。しばらく黙ってそうしていると、唐突に俺と視線を合わせて言った。
『お兄ちゃんから頼むとしても、結局騙すことになる。どっちにしても同じなら私あたしが頼むよ』
こういうところは昔から潔い。わがまま言うけどいつだってどうすれば一番いいか真剣に考えてるんだ。
『あたしが言い出したことだしね』
くしゃっと笑う顔はやっぱりまだ幼さが残っていて。
「協力するって言っただろ? たった一人の兄ちゃんなんだから頼れ頼れ」
当然のことを言ったつもりだったが、アヤカは面食らった顔をした。でもすぐににっと笑う。
「よろしく頼むよ、お兄ちゃん」
当然だ。