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状況を整理しよう。
『だからー、トラックが突っ込んできたとこまでは覚えてんのよ。そっから記憶が飛んじゃってさー、気付いたらここにいたワケ。お兄ちゃんがパソコン点けるまで真っ暗だったんだよー?』
つらつらとアヤカはいつもの調子で述べる。ただしその声はパソコンの画面の中から聞こえていて、その姿は肩までの茶髪の女の子のイラストだ。しかしまぁアヤカの特徴をよく捉えている。
「……ほんとにアヤカなのか?」
『だからー、さっきからそう言ってんじゃん。お兄ちゃんやっぱりバカなの?』
この兄をバカにした感じは間違いなくアヤカそのものだ。
「だってイキナリ信じられるわけないだろーが。どう見ても二次元だぞおまえ」
自称アヤカはまじまじと自分の体を見回す。
『そうなの? 鏡ないから分かんなーい』
とぼけた感じで話す仕草も見覚えがある。
にわかには信じ難い話だが、どうやら俺の妹は電子上の存在になってしまったらしい。いや、もしかしたらどっかの頭のいいやつがこういう変なシステムを作って送り付けたのかもしれない。
『お兄ちゃんなにやってんの』
「いや、ウイルスかもしれないと思って」
俺はウイルス検索を掛けてみた。
『もー! 違うって言ってんじゃん! そんなに疑うなら好きにすれば!?』
結果はシロだった。なんのウイルスにも感染していない。
『ほら。お兄ちゃんのこのフォルダのがよっぽど有害じゃん』
アヤカが手にしたそのフォルダは。
「見たのか!?」
『すぐ閉じたよ! 女の子にこんなモン見せないでよね!』
「おまえが勝手に見たんだろうが!!」
一生の不覚だ……。消しとこう……。あ、その前にフラッシュメモリーに移しといた方がいいな……。
『で? 信じてくれたの』