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――会いませんか?
あのメールにはそうあった。
『ねぇねぇねぇねぇ何て書いてあるの?』
メールを読んで動きを止めた俺に、アヤカはしつこく聞いてくる。言うべきかどうか悩んだ。言えば絶対「あたしも行くー!」と言うはずだ。
『もう! 貸して!』
「あっ!」
悩んでいる間にメールを奪われてしまった。
アヤカは黙って何度かメールを読み返す。俺は何も言うことができずにアヤカが何かを言うのを待っていた。
『いいじゃん。行っておいでよ』
「は?」
返事は予想していないものだった。
『結構長い付き合いになるんだしいいんじゃない? 実際会ったら次の曲もやりやすくなるかもしれないし』
予想と違う反応に俺は戸惑う。
『なに?』
「いや……。絶対付いてくって言うかと思った……」
アヤカ困ったように笑った。
『こんなんで会えるわけないじゃん。よろしく言っといてよ』
あっさりと引き下がるアヤカに釈然としなかったが、何も言うことができないまま当日を迎えてしまった。
「君たちの曲いいよね。人気が出てきて私も嬉しい」
その言葉にはっと我に返った。俺たちは通り沿いにあるカフェに入っていた。ロノさんの行き着けの店らしく、こんなおしゃれな店に入ったことがない俺は落ち着かなかった。
「ロノさんのおかげですよ」
ミルクたっぷりのアイスコーヒーの氷をストローで突きながら、俺は答えた。ロノさんは、ははっと笑う。
「それもあるかもしれないけど。特にアヤの歌はすごくいい」
俺は照れくさくて俺は入り口に置かれた古時計に目をやった。
「ずっと聞いてみたかったことがあるんだ」
ロノさんはコーヒーカップに視線を落としていた。黒が好きだと言った彼女らしく、コーヒーもブラックだ。店内は冷房が効いているとはいえ、夏場にホットなんて暑くないのかな、なんてぼんやり考えていた。
ロノさんはやがて視線を上げた。俺をまっすぐ見つめてくる。
「アヤは生きているのか?」
その質問を聞いて、俺は固まってしまった。




