廃墟の塔の上、星空の下
星空の下、澄んだ空気の塔の上で、セルマはエミディオに抱っこされていました。
「奇麗でしょ?」
「うん、とっても奇麗。星の色の違いがよく分かるわ」
「僕の秘密の場所なんだ」
「連れてきてくれてありがとう」
「どういたしまして」
「じゃあ、私の秘密も教えてあげる」
「どんな秘密? 気になるな」
嬉しくなって、セルマは囁きました。
「私、本当は8歳じゃなくて16歳なの」
エミディオは驚いた顔をしていました。口が半分開いています。勿論タテに半分開いているのです。
「セルマが……?」
「私、8歳の時から体の成長が止まってしまったの。でも頭も心も今は16歳なのよ。だから、私を子ども扱いしないで、仕事をさせて」
「仕事?」
「さっき、暗殺者みたいな人とあったんだけど」
「暗殺者!?」
「よくわからないけど、私が思ったのは、その人は誰かに命じられて仕事をしているはずなのに、私は働くと言っているわりには、好きなことしかしていなくて、エミディオに雇われているのに、エミディオはちっともエミディオが必要なことについての仕事をくれないなぁって」
エミディオがぽかんとしているので、セルマは、しまった、と思った。また文が長くなりすぎてしまった!
「つまりね、エミディオ。私はもう16歳だし、あなたの役に立つことをしたいから、私に仕事をちょうだい」
エミディオはぎゅっとセルマを抱きしめました。
「セルマ、目を閉じて」
「閉じたわ」
「セルマ、どうして、君は、そうなったんだい」
「分からないわ」
「なにかきっかけがあったのかい」
「分からないの」
空気が温かくなって冷たくなって、丁度良くなりました。
「エミディオ、目を開けて良い?」
「だめ」
セルマの唇に、ちょっとかさかさした柔らかいものが押しあてられました。長い長いキスの後、エミディオはもう一度、今度は軽く触れるだけのキスをして、セルマを解放しました。
「エミディオ、目を開けて良い?」
「10、数えたら、開けて良いよ」
セルマが10数えて目を開けたとき、セルマは自分の部屋に居ました。部屋の中には、セルマ一人きりでした。
はじめてのちゅう、ふふふふふ。もしかしたら暗殺者さんが偶然どこかから見ているかも。