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はじめての外出(但し廊下繋がりの室内)

 そう言えば、研究所へ住み込んでから、セルマは一度も研究所以外の場所へ足を踏み入れたことがありませんでした。研究所は母屋から独立していて、セルマの寝る部屋は母屋にあります。その部屋は渡り廊下を渡ってすぐの階段を、3階まで上がって左へまがった2つ目の部屋でした。

 セルマは自分の部屋の外へ出て、ランプを片手に探検を始めました。赤っぽい絨毯は長い廊下いっぱいに敷かれているようで、セルマは縦置き型機織り機の構造を思い出そうとしていました。

 廊下は別な廊下に突き当たりました。黄色い絨毯の廊下です。この廊下は中庭をぐるっと巡れるようでしたから、セルマはそこをぐるぐると歩きました。中庭の石像が、月の光を浴びてとても奇麗です。ぐるぐるあるくと、その姿を色々な方向から見ることができるのです。この廊下を造った人は素敵なセンスを持っていると思いながら、セルマは機織り機の構造を思い描いていました。


「セルマ?」


「こんばんは、エミディオ」


 偶然、ばったり、ランプを持ったエミディオと会いました。


「どうしたの? 眠れない?」

「今、絨毯を織る機械を考えていたの」

「絨毯を?」

「絨毯をハンカチくらいの小さなパーツにして、組み合わせたらタイルみたいにできるでしょう」

「素敵なアイディアだね」

 セルマは嬉しくなりました。

「エミディオ、ここへ連れてきてくれてありがとう」

「どうしたの? 急に」

「嬉しくなったから、そう言ったの」

「そっか」

 エミディオはちょっと考えたように空を見上げて、セルマに微笑みました。

「僕もいま上機嫌なんだよ。セルマを僕のとっておきの場所へ連れて行ってあげる」

 エミディオはセルマを抱っこすると、目をつぶっててね、と言いました。すこし空気がひんやりした気がして、セルマは声をかけました。

「エミディオ、目を開けても良い?」

「まだだめ」

 すぐに、今度は空気が温かくなりました。

「エミディオ、目を開けても良い?」

「まだだめ、もう少ししたらね」

 また、空気が変わりました。ちょうどいいくらいです。

「エミディオ、目を開けても良い?」

「どうぞ、開けてみて」

 そこは、満天の星に手が届きそうな程、高い高い塔の頂上でした。

セルマは不器用なので、見た目のワリには大人びた言動と言うか、実際の年齢の割には子どもじみた言い方というか、喋り方はありのままです。

「もういいかい」「まだだよ」的な掛け合いも、童話にはよくあるパターンのような気がしています。

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