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愛 らぶ らぼ!

 何度か会っているうちに、セルマはあることに気付きました。

 男は容姿が整っているのです。姉達が熱を上げている若い俳優や騎士たちの姿絵を観察・比較したことがありましたが、あの男の容姿は彼らの良点をバランスよく持っているようなのです。


 けれどセルマにとって重要なのは、姿の美醜より、フィールドワークの必須条件:親しみやすさ、であるため、そういうことに大した関心を寄せていませんでした。


 ある日、植物専用温室で土の片付けをしているとき、あの男がやってきました。爆発小屋以外で会うのは初めてだし、夜以外に会うのも初めてでした。男はセルマの両親を後ろに連れて歩いていました。


「やあ、セルマ」


「こんにちは、エミディオ」


 セルマが挨拶すると、両親が狼狽えているのが見えました。


「昼間会うのは初めてだね」

「ええ」

「実は今回、セルマに提案があってきたんだ。僕のラボで研究をしないかい?」


 セルマはきょとんとしました。ラボ、つまり研究所?


「セルマ、こちらのエミディオ様は、大きな研究所のパトロンなんだ。お前がいつからエミディオ様と知り合いなのかは知らないが、これはとても良い話だ」


 父が力強く拳を握りしめて言い、母はゆっくりとそれに頷いていました。


「わたしの可愛いセルマ、あなたの頭脳はその体から溢れ出ているわ。ぜひエミディオ様のラブで、大好きな研究を続けてちょうだい」


「おい、研究所はラブではない、ラボだ」


 父と母の冗談好きは周囲に知れていましたし、セルマはちょっと変わり者だと言われる母の言葉の意味を理解していました。上の姉達は全員嫁いでいるし、残る一つ上の姉も結婚式を待つだけです。3年後には長兄が父の仕事を引き継ぐ予定なので、きっと、数年後に隠居生活に入るつもりなのでしょう。そのとき、末娘が自立していなくては、セルマにとても夫婦にとっても、少々面倒です。


「どうだろう、セルマ」


「私は私の好きなことさえできれば、それで十分です。お父様、お母様、今までありがとうございました。それと昨日の夜中に小屋を爆発させてごめんなさい」


 セルマは両親に深々と頭を下げました。そしてこの1週間後から、セルマはエミディオの研究所で働くことになりました。


昨日の爆発の原因は、試薬間違い&急激な加熱による突然の沸騰。突沸対策に沸騰石は重要です。

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