『エミディオの日記』より抜粋 ○□○年
・○□○年□月12日
新年行事も一通り終わって、一息ついたので、夜の散歩をしていたら偶然セルマと会った。これは運命だと思って、あの星空の見える場所に連れて行ってあげた。そこでセルマから告白された。愛ならよかったのに、そうじゃなくて、セルマが暗殺者のような人物と遭遇していたこと、そして、僕には立派な16歳の女性に見えるのに、本人は自分の姿が8歳の少女だと言っていること! もしかしたら、セルマはあのときの女の子かもしれない。そう思って僕は、僕の年齢を送り込んでみた。そのときの方法がキスだったってのは、僕の役得だ。けど、セルマが僕の役に立ちたいなんて、健気なことを言うから、僕はもう理性が吹っ飛んでしまいそうで、実際キかけていたし、彼女を部屋へ戻すのが精一杯で、結局、彼女と一緒に夜を明かすことはできなかった。
・○□○年□月13日
彼女はやはり、あの時の女の子だったようだ。侍女からの報告では、体の成長が再開しているようで、今朝、明らかに女性ならではの現象が起こっていたという。なんだろう、思いつかない。そんなことを思っていたら、なんだかイヤな予感がしたので、彼女の部屋へ行ってみると、今にも攫われそうなセルマと明らかに女装した男を発見。剣を騎士から借りたにもかかわらず、感情に任せて捕縛に使える魔法を乱射してしまった。彼女は薬で眠らされていて、目が覚めるまでの間、僕は手を握って考えていた。僕の気持ちを打ち明けたい、彼女はどう思うか、責任は……そんなうちに、彼女が目覚めて、僕は勢いで言っていた。結果的に、正解だった。今日から彼女は僕の彼女だ。侵入者はあっさりと口を割ったらしく、そちらの方の対処は僕が後日やることになったらしい。
・○□○年□月14日
僕の父に報告したら、喜んでくれた。結婚式は、セルマの家族のことを考えて再来月行うことになった。僕ははやる気持ちを抑えるのに努力しなければいけないのに、セルマは動物実験の過去の研究論文を読み漁っている。やっぱり、彼女は僕より研究が好きなのかもしれない。
・○□○年□月15日
どうやら、僕より研究が好きとか、そういうことではないらしい。僕の研究をするための下調べのようだ。嬉しいけど、ちょっと複雑な気分。僕も、そろそろ色んな準備を始めよう。
・○□○年□月28日
久々にセルマを抱きしめたら、前と抱きしめた心地がちがっていた。前よりはりがあって、ふっくらしている。体にメリハリが出てきたようで、ドレスの採寸の時ちらっとみえた姿で、僕は鼻血が出そうだった。
・○□○年X月4日
あと2週間で、僕はセルマと夫婦になる。セルマはチョコレートという菓子を芸術的に組み立てて結婚式の目玉にしたいと言っていた。僕に任せろ、といいたいところだけれど、セルマは自分でやりたいらしい。上目遣いにそう言われたら、口を塞ぐしか無い。
・○□○年X月18日
結婚式当日。純白のドレスのセルマは美しいけれど、チョコレートまみれでも美しい。僕は彼女と夫婦になれて、とても幸せだ。王子にうまれたことを後悔した時もあったけれど、彼女と結婚できるなら、大した事は無い、と思ってしまう。初めて味わったチョコレートはとても美味しかったし、初めて味わった彼女もとても素敵だった。いつもの彼女は僕に対して決して甘い声は出さないから、そのときの彼女の様子が忘れられない。離れようとする僕を引き止める彼女が、愛しくてどうしようもなくて、結局、ずっと彼女といた。彼女の興味は、つきることが無い。そして、この日記は20日の昼に書いている。
読了、ありがとうございます。
ちびなセルマの結婚、これにて完結です。
最後のおまけ、王子の日記という蛇足のわりに補足が不足してる気がそこはかとなくしますが……
また次回、お目にかかれることを楽しみにしています。ありがとうございました。