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見た目は子ども 頭脳はおばば

お読みいただきありがとうございます。今年はグリム童話誕生200年だそうですね。そう言うわけで、おとぎ話っぽい雰囲気です。

  昔々あるところに、一人の女の子がおりました。名前はセルマ・アルメンタ。父は敏腕実業家、母は子爵家の出身で、聡明な兄と美しい姉達がおりました。

 セルマもきっと、母や姉達と同じように美人になるだろう、と期待されていましたが、8歳を過ぎた頃から一向に背が伸びません。胸も生えません。くりくりの緑の眼、焦げ茶色の猫っ毛、若干ぷくぷくした顔、子どもらしい細い手脚、凹凸の無い寸胴体型。

 セルマは16歳になっても、姿が8歳のままでした。



「セルマ、あんたはどうして、そんなチンチクリンなのかしら」


 セルマの向かいに座って酒入りの紅茶を飲み、美白効果のあるハーブ入りのクッキーを食べる一つ年上の姉が言いました。姉は来月にどっかの男爵家の嫡男と結婚することが決まっています。そんな姉に目を向けるために、セルマは多い被さって読んでいた大判本から体をあげました。


「さぁ? 私の周りの方が成長速度が速いんだけじゃない?」


 セルマはしれっとして言い返し、読書を再開しました。セルマの読書はさながら腕立て伏せです。ページをめくる度、体を起こしてページをめくります。本が大きいのもさることながら、文字が小さくびっしり書かれているのです。


「もう、8歳の外見でその言い方は可愛くないわ」

「いいの、私は結婚はしないつもりだから。姉さんは幸せになってね」

「そんなこと言って。もうちょっと夢を見なさい」

「女の結婚は16歳からという法律があるの、知ってるでしょ」

「その体、あんたの得意な科学ってやつで、どうにかならないの?」

「科学は万能な魔法じゃなの」


 セルマは姉の顔を見ずに続けました。


「女の結婚は16歳からっていう法律がある世の中で、8歳の姿の私と結婚するヤツなんて、どうかしてる。こっちから願い下げよ」


 可愛い姿の妹の、可愛くない言動に、姉はため息をついて紅茶を飲み干しました。

 セルマは8歳の姿の少女でしたが、頭の中は80歳の老婆並みの知識と知恵が詰まっていました。見た目が成長しなくても、頭脳くらいは成長させてやろうというセルマの気概の結晶です。

 勿論読書は基本中の基本、親の商談先に随行して勉強し、地域の文化や動植物についてのフィールドワーク、しまいには実家に『爆発小屋』なる小屋を建ててもらって日々実験に勤しんでいました。最近の成果は、ハーブの美白成分の抽出・効能の実証。姉がクッキーに練り込んで食べていたハーブです。

 両親は裕福で、上の兄弟はみな優秀で、彼女が結婚しなくても別に困りません。彼女にとって申し分のない環境でしたが、ひとつあるとすれば、世界規模の経済についてより詳しく実践的に知りたい、具体的に言えば王城で働きたい、というものでした。

 けれど、到底無理でした。

 彼女の外見は8歳の少女ですから。


チビだのチンチクリンだの書き連ねてすみません。外国の童話の翻訳本の、あの失礼極まりない感じ(笑)が大好きなんです。

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