魔女の心
ごぽぉ・・・・
何かの気配がした
でも、危険な気配ではなく、振り返れば
可愛らしい人間の女の子
「あらぁ?めずらしいことぉ・・・・こぉんな所に人間が来るなんてぇ・・・」
極稀にあるのだ
死んだ人間が に来ることが
「だれ?」
あらぁ、声も可愛らしい
「魔女?」
うわ、ナイスバディで顔美人、言うとこ無しだ・・・
そんな考えが響いてきた
「そぉよぉ、よくわかったわねぇ」
しばらくその子は考え込んでいて、見守っていたのだが
失礼なことを考え出したので中断した
「本物よぉ・・・失礼ねっ」
また思考を読み取れば、今度はまた物分りの良い言を考え出した
頭良いのね、この子
「まぁ、物分りの良いお嬢さんだこと」
「お嬢さん?」
あらぁ、やっぱり記憶がないのかしら?
また思考を読み取れば・・・・
ふふっ、この子・・・オモシロォイ・・・・
「えぇ、お嬢さん」
まさか全部筒抜けだと思っていないのだろうその思考
魔女と言われるこの私が
笑いを堪えるので必死になっているだなんて
「私死んだわ!!!!」
まぁ、自力で記憶を戻したのぉ・・・・
「あらぁ?自覚はあったのねぇ?また珍しい・・・・」
あらあら、今いる場所が分からないのねぇ・・・・
なら、・・・教えてあげましょう・・・
「いいえぇ・・・ここは、 よぉ」
「・・・・・・・・・今なんて仰いました?」
少し、自分でも意地悪だと思った
「あぁ~・・・たぶん、あなたには分からないと思うわぁ・・・・」
・・・・・・・・思考、読み取るのやめようかしら
笑いを堪えるので必死になっちゃう
「くすっ、本当に物分りの良いお嬢さんねぇ」
・・・・・いいわぁ、この子
「はぁ、どうも」
ふふ・・・・
「それに、私に媚びない」
「?媚びて得することでもあるんですか?」
「そうねぇ・・・媚びて得することはないけれど、私に気に入られると、いいことがあるわぁ・・・」
「へぇ~、・・・すごいんですねぇ・・・」
まぁ、信じてないみたいだけど・・・
願いはあるみたいねぇ・・・・・
「あらぁ・・・、フフ・・・気に入ったわ・・・」
この子の願いを聞いてみたい
「だ・か・ら、そういうところぉ~」
「はぁ、ありがとうございます・・・?」
だから
「そんなあなたに、願いを一つだけ叶えてあげましょう」
「うそ!?!?」
「本当」
さぁ、あなたはどんな言葉を返してくれる?
今まであったのは、怒号、嫉妬、命乞い、強欲、どれも全部、くだらなかった
「・・・・・だ、代償は?」
代償に気付いたのはこの子が初めてだった
「・・・・まぁああ・・・・本当に、物分りのいい、素敵なお嬢さん・・・・」
しかも
「代償が大きいのならいいです・・・」
返ってきたのは断りの言葉
素敵!ぜひ願いを叶えたくなったわぁ・・・
だから
「フフッ、安心してぇ、一番代償を小さくしてあげるわぁ」
思考を読み取れば寿命10年、やっぱり願いは読み取れなかった
「それが良いのぉ?」
「いやです」
「フフッ、でも、代償の前に、願いを聞かないとぉ」
思考が読めないと言うことは、それだけ重要と言うこと
さぁ、言って御覧なさい・・・・
「来世でも、あの人の傍にいたい」
・・・・・・やっぱり、いいわぁ・・・・この子
・・・・それだけ?・・・・本当に叶えたいこと・・・・
って、私が思ってしまうほどだものぉ・・・・
「・・・・フフッ、いいわぁ」
「本当!?!?」
パッと花が咲いたような笑み
やぁだ・・・・この子・・・・可愛いわぁ・・・
「えぇ、・・・それじゃあ、代償を言うわね・・・・」
やっぱり、本気の願いはどうしても代償が大きくなってしまう
でも、これが一番小さい
だから、選ばせてあげる
「選びなさい、どちらかを」
最初にあなたが言った
10年の寿命か、あの人に、10年会えないか
「・・・・・・・・」
正直、泣くか喚くかのどちらかと思っていた
「あら、怒らないの?」
けれど、返ってきたのは意外な答え
「いいえ、・・・怒りません」
ポタッっと、涙が落ちた
「・・・・・なんで、泣いてるのかしらぁ・・・?」
綺麗だ、と思えたのは・・・はじめてだった
「確かに、・・・・・代償は、私にとって、・・・やっぱり苦にしかならないけれど」
「・・・・・・」
「でも、あなたが、優しいから・・・・」
「・・・・・・・・」
「本当は、もっと、辛いことを想像してたの」
あの人のいない時で、一生を過ごせ、とかよりも、全然ましでしょう・・・?
そう呟いたこの子は、女の顔
「ありがとう、魔女さん」
泣きそうになっちゃたわぁ・・・・・
「・・・・どういたしまして・・・、で?あなたはどちらを選ぶの?」
「・・・・私は、10年会えない方を選ぶわ」
やっぱり
「そう・・・では、そちらにしましょう」
「えぇ、お願いします」
「・・・・・・・理由を、聞いても良いかしら?」
想像はつく、けれど、あなたの口から聞いてみたくなった
「・・・・あの人に、確かに、会えなくて、絶対、辛い・・・けど、もう片方を選べば
きっと、怒られてしまうだろうから・・・・」
うらやましい・・・・
こんな子に思われている、「あの人」が
「・・・・・ずいぶん、素敵な方なのねぇ・・・」
「はい!自慢の夫です・・・!!」
素敵な笑顔
「・・・・うらやましいわぁ・・・・」
「え・・・・?」
ユラッ
「フフッ、でわ、そろそろ、眠る時間よ・・・・」
もう少し、お話していたかったけれど
この子にはもう時間が無い
「ふ・・・ぇ・・・・」
・・・・わが子を持った母親ってこういう気分なのかしら・・・
「おやすみなさい・・・・」
その姿が完全に消えるまで見送る
・・・・・・・・・・
「・・・さて、・・・・私も行こうかしら・・・・」
あの子が行く、「来世」に
「う~ん・・・性別変えてぇ・・・性格も少しいじろうかしらぁ・・・・」
・・・・・・
「フフッ」
たぁのしみぃ~・・・・