涙雨
6月21日の事だ。今日は雨が降っている。ここ最近、雨ばかりだ。6月は梅雨があって、雨の日が多い。つまらない日々が続いている。だけど、それを乗り越えて、梅雨明けを待たなければならない。
一明は緊張していた。今日、告白するからだ。一明は不安だ。結婚を認めてくれるかどうか以上に、その先が不安だからだ。
「愛ちゃん・・・」
一明は約束の場所に向かう間、以前付き合っていた愛の写真を見た。せっかく告白したのに、まさかあんな事になるとは。一明はその時の事を今でも鮮明に覚えている。
それは、3年前の同じ日、6月21日の事だ。この日も雨が降っていた。雨が降らないように、てるてる坊主をぶら下げたのに、雨になってしまった。こんな日に限って、雨になるとは。とても残念だな。だけど、今日は約束の日なんだ。告白をするんだ。
「どうしてこんな雨になったんだろう・・・」
「お待たせ!」
一明は振り向いた。そこには愛がいる。やっぱり来てくれたようだ。雨というあいにくの日になったけれど、来てくれただけで嬉しい。
「愛ちゃん」
一明は笑みを浮かべた。愛に会えて嬉しいようだ。
「今日は誘ってくれて、ありがとう」
「うん」
2人は東京の夜景を見ていた。ここは東京の夜景が見える高台で、2人はその風景がとても気に入っていた。
「今日もきれいだね」
「ありがとう」
2人は手を握っていた。とてもラブラブだ。そろそろ結婚してもいいのではと思っていた。
「やっぱここの夜景は美しいな」
「そうだね」
一明は思った。今日は雨になったけれど、残念に思っているんだろうか? あんまり気にしていないんだろうか?
「あいにくの雨で、どう?」
「残念だよ。でも、君と会えて、嬉しいよ」
どうやら残念だと思っているようだ。だが、一明に会えて嬉しいようだ。愛はとても優しいな。
「そう・・・」
と、一明は何も言おうとしている。何を言いたいんだろうか? 愛は首をかしげた。だが、なかなか言おうとしない。
「どうしたの?」
「何でもないよ」
愛は思っていた。もしかして、告白だろうか? だったら、大歓迎だけど。
「ふーん・・・」
再び、一明は愛の方を向いた。今度こそ、何か言おうとしているようだ。
「なぁ愛ちゃん」
「どうしたの?」
愛は首をかしげた。一体何だろう。
「渡したいものがあって」
「何?」
一樹は指輪の入った箱を出した。そして、中の指輪を見せた。
「指輪!」
「えっ!?」
愛は驚いた。まさか、告白だとは。雨の中の告白だけど、とても嬉しいな。あいにくの雨模様だという事を忘れる程に嬉しい。
「結婚しよう!」
「私でよければ!」
愛は認めてくれた。これで僕は結婚に前進した。結婚が待ち遠しいな。
「ありがとう!」
そして、最高の夜は過ぎていった。
部屋に戻って、一明は愛の写真を見ていた。愛とは小学校の頃からの中で、一緒の会社に就職した事がきっかけで、交際を始めて、ようやく結ばれた。本当に嬉しかったな。今でもその余韻が残っている。
「やっと言えたな・・・」
一明はほっとしていた。やっと言えたからだ。
その時、電話が鳴った。こんな夜遅くに、誰だろう。一明は受話器を取った。
「ん?」
「一明さん?」
電話の声は、愛の母だ。何かあったんだろうか? 愛の母は息が粗いようだ。
「はい」
「愛ちゃん、交通事故で、病院に運ばれたの」
それを聞いて、一明は驚いた。告白して、認めてもらった直後なのに、こんな事になるなんて。結婚を待たずに死ぬなんて、嫌だよ。
「そんな・・・」
電話はすぐに切れた。一明は急いで、愛が担ぎ込まれた病院に向かった。早く向かわないと。どうなるかわからない。だけど、愛を応援しないと。
一明は病院にやって来た。目の前には愛の両親がいる。だが、悲しそうな表情だ。一体何だろう。まさか、死んだんだろうか? とても不安だな。
「あっ、一明さん」
「えっ!?」
元気のなさそうな声に、一明は戸惑った。どうしたんだろうか?
「こちらへ・・・」
一明は病院の地下にやって来た。それだけで、一明は嫌な予感がした。まさか、死んだんだろうか? この階に病室はないからだ。
やって来たのは、霊安室だ。部屋の名前を見て、一明は察した。愛は交通事故で死んだんだ。霊安室に入ると、そこには顔で布をかぶされた遺体がある。
「どうぞ」
看護婦が布を取ると、そこには愛がいる。今さっきまで元気だった愛が、永遠の眠りについている。信じられない光景だ。
「愛ちゃん・・・」
一明は呆然となった。今夜、告白して、認めてくれたのに、どうして。
「愛ちゃーん!」
一明は泣き崩れた。あの時の涙は今でも忘れた事がない。
それから3年後、一明は茜という別の女に告白しようとしていた。今度こそは、結婚に至るんだ。そして、幸せに暮らすんだ。
「もうすぐだな」
「お待たせ!」
振り向くとそこには、茜がいる。茜は愛の同僚で、愛を失った悲しさから一明を慰めてくれた。そして、交際してくれた。愛がいない時間を、しっかりと埋めてくれた。
「今日はありがとうね」
「渡したいものがあるって聞いたけど、何?」
茜は一明から聞いていた。渡したい物があるから、ここに来てくれと言われていた。茜には、何なのかわからない。ひょっとして、結婚指輪ではないかと思っている。それだったらいいな。結婚出来たら、本当に嬉しいな。
一明は箱を取り出し、ふたを開けた。そこには結婚指輪がある。
「指輪!」
「えっ!?」
茜は驚いた。まさか、本当に結婚指輪だとは。とても嬉しいな。本当にもらえるとは。そして、告白してもらえるとは。
「結婚しよう!」
「私でよければ!」
「ありがとう」
そして、2人は結ばれた。きっとその恋を、天国の愛も祝福してくれるだろうな。今度こそは結婚して、幸せな家庭を築きたいな。




