009 実技試験 1
対戦相手のCランクパーティは、前衛が剣士3人、後衛が弓士ふたりと魔術師ひとり。
弓士は、軽戦士を兼ねているみたいだ。いつもは弓士の片方は前衛を務めるのかもしれない。
そして私と共に戦うのは、前衛が剣士ふたりと槍士ひとり、後衛が弓士兼短剣使いと、魔術師。
弓士の短剣は護身用なので、メイン武器である弓から、後衛とみなされる。
……そして心強いのは、私以外にも魔術師がいることだ。
事前に、仲間同士での作戦立案のための時間を与えられていたので、互いの能力は把握している。
しかし、初対面の者が短時間で、言葉による打ち合わせだけで細かい連携を取れるはずがないため、あくまでも大まかな方針と役割分担の確認程度にとどめ、それぞれが自分の持ち味を活かせるようにと、自由度を大きく取ってある。
「用意……、始め!!」
試験官の掛け声で、実技試験が始まった。
試験官側のパーティは先攻を受験者側に譲ってくれるようで、まずは防御態勢に入っているようだ。
……当たり前か。これは勝ち負けではなく受験者の能力を見るためのものだから、試験官側が一方的に攻撃しては、意味がない。
まずは、後衛による遠距離攻撃。これによって、敵の防御態勢を崩すと共に、こちらの前衛による攻撃を受けた後に反撃しようとしているであろう手順を乱す。
……そしてあわよくば、ひとりかふたりに負傷か戦線離脱の判定を与えられれば……。
そんな楽観的な目論見をしつつ、後衛同士で目配せを交わし、タイミングを合わせて同時攻撃!
敵の前衛へと向かう、1本の矢と、2個の魔力弾。
どうせ、待ち構えている相手に対して放たれた遠距離攻撃は、防御されるのだ。
ならば、後衛ではなく前衛に向けて放ち、反撃の態勢を崩した方がお得だ。
本格的な命中狙いは、乱戦になって、相手の攻撃を万全の態勢で待ち構える、なんて余裕がなくなってからの話だ。
……そして予想通り、矢は敵の剣士によって叩き落とされ、魔力弾はひとりしかいない向こうの魔術師によって阻止された。
さすがに、矢は鏃を外して尖端部を安全なものに付け替えているが、魔力弾は威力をやや抑えているとはいえ、当たればかなりのダメージになるだろう。
『受験者側は本気で撃っていい』とは言われているが、さすがに、ガチの本気で撃つ勇気のある者はいないだろう。
いや、相手はベテランハンターなのだから、ひよっこの自分達の攻撃がまともに当たるとは思っていない。
それでも、世の中、そう簡単に割り切れる者ばかりじゃないだろう……。
後衛の攻撃が着弾するのに合わせて、飛び出していた3人の前衛が敵に襲い掛かった。
後衛の私達は、すぐに次弾の準備。
弓士は、ただ連続射に専念すればいいけれど、魔術師組は攻撃に加わるのか相手の後衛からの攻撃を阻止する方に廻るのか、そして攻撃目標は敵の前衛なのか後衛なのか等、色々な判断をしなければならない。
かといって、相手の攻撃に備えて何もせず待っているだけでは、合否判定的に問題がある。
ここは、積極的に行かねば……。
しかし、魔力量が少ない私は、あまり攻撃を行うと、最後まで魔力が保たなくなる。
戦闘の途中で魔力切れになるような、自己の魔力量の把握や管制ができない魔術師など、試験に合格できるわけがない。
難しいところだ……。
相手は先手を譲ってくれたけれど、こちらの攻撃力を確認した後は、前衛同士の戦いが始まると共に、後衛に向けての攻撃をしてくるはず。
受験者の前衛の能力を確認する前に、試験官側の前衛と後衛からの同時攻撃でフルボッコ、ということはないだろう。
これは、弱い者苛めではなく、受験者の実力を測るためのものなのだから。
……来た! 魔力弾1、矢が2本!!
魔力弾はもうひとりの魔術師が迎撃してくれたので、私は2本の矢を小さな魔力弾2発で撃墜!
これは、事前の打ち合わせの時に、わたしは魔力量が少ないけれど速さと精度には自信が、と言っておいたから、迎撃に多めの魔力が必要な魔力弾を相方が引き受けてくれて、的が小さい上に速度が速く、おまけに2本である矢の方を私に任せてくれたわけだ。
なので、面倒な方を押し付けられた、というわけではなく、この大事な試験において私に難しい方を廻してくれたという、信頼の証なのだ。
その信頼を裏切れるはずがないだろう!
* *
そして、実技試験が続く。
規定時間があるわけではなく、受験者が圧倒的な実力を示すか、どうにもならない程の実力不足を露呈させれば早々に終了するけれど、判断が難しい微妙な感じだと、少し長引くこともある。
うちの臨時パーティは、どうやらその、長引くタイプのようだ。
決して遊ばれたり舐められたりというわけではなく、受験者の実力を正しく判断するために、かなり手加減した色々な攻撃を行ってくる、試験官側のパーティ。
……でも、何だか、少し違和感を覚える。
何か、私の方に負担が掛かっていないか?
弓士は、攻撃に専念している。
それは分かる。当たり前だ。
でも、魔術師がふたりいるのに、なぜか、私の方が負担が大きい。
相棒の魔術師は、問題なく、ちゃんと自分の仕事をこなしてくれている。
問題は……。
あ、また! 迎撃!!
このように、相棒が攻撃魔法を撃った瞬間に、向こうからの攻撃魔法が飛んでくる。
相棒が撃った魔法を迎撃することなく、こっちの後衛を狙って……。
確かに、敵側は皆、それくらい自分で捌ける者達だろう。
……でも、普通は、そういうのを迎撃するのは魔術師の役目だ。
なのに、私が迎撃するしかないタイミングでばかり、攻撃魔法を撃ってくる。
このままだと、私の魔力残量が……、って、あ!!
試験中に魔力切れで倒れたりすれば、まず、合格できることはないだろう。
……そして、私の負担が大きくなるように、意図的な攻撃を続ける対戦相手。
私を不合格にさせたい、領主の息子。
……ああ。
ああ。
ああ……。
そうか。
そうかぁ。
そおおぅかああァァ……。
……やってくれたな、くそヴァルト……。
私達姉妹の未来、お前なんかに潰させて堪るもんか!




