96話 検査終了
本拠点に戻ると早々に知佳は、ログアウトすると言って3階に戻って行った。検査が終わるまで残り2時間あるのでタンクの新しい形状の設計をすることにした。
「俺も上に上がるんだが、あと戻って来てくれるか」
プロペラは検査中で、検査が終わった物を一人で運びたくはなかった。そんなことを言いながら3階の自分の部屋に入ると、知佳がいた。
「どうしたんだ」
「これ、ほぼ完ぺきなんだけど」
知佳は、咲夜が書いていた途中のタンクの断面図を見ていた。
「まあ、見たことがないわけでは無いからな」
「これならすぐに、販売できるんじゃないの」
「これ、売るのか」
「セミトレーラー用のトレーラーとかフルトレーラー用で」
「大型すぎないか」
「それに、タンクローリーじゃないだろ」
「上を開けて穀物用で売れると思う」
「まあ、そうなると数値入れ直さないといけないから寸法教えてくれ」
「分かった」
「そうだ、ログアウトしても良いけど、ケースに入れると時には来てくれ」
「分かった」
そう言って、ベットでログアウトしていった。
ーーー
直ぐに設計の続きをすることなくキッチンでコーヒーを落とす準備をしていた。すると、瑠璃は部屋から出て来た。
「咲夜さん、コーヒーですか?」
「うん、飲みたくなってね」
「準備しましょうか?」
「お願いできる」
「はい」
咲夜は、さっさとキッチンから離れてリビングにある段の部分に腰かけた。ここは、全体が階段の様になっていたのだが瑠璃がいつの間にか、一部を残してソファーにクッションが引かれてソファーになっていた。咲夜は、キッチンから離れたのはそこが瑠璃の城であるためだった。ソファーに座った咲夜は、テレビが掛かっている両サイドの窓から外をぼんやりめていた。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
「いえ」
入れて貰ったコーヒーを飲み再び、ぼーと外を眺めていた。
「リリアンさんの家具はどうしましょう」
「製作機か」
「はい」
「後、2時間したら開くけど、そこまでは待てないよね」
「流石に、学校もあるので」
「明日は、ログインする」
「はい、明日もログインしますよ」
「明日から二日間は俺と知佳は、本拠点に居ないから使えるよ」
「分かりました。どこに行くんですか?」
「格納庫に、納品の準備にね」
「なるほどわかりました」
瑠璃は、納得したようで何を準備するかを考えている様だった。咲夜は、そんな瑠璃を見ながらコーヒーを飲んでいた。
コーヒーも無くなり、その後も休憩した咲夜は作業をすることにした。
「作業に戻るわ」
「はい、わたしも今日は遅いので寝ます」
「うん」
瑠璃は、咲夜のコーヒーカップを受け取るとキッチに向かった。咲夜は、そんな瑠璃を見て部屋に入ろうとしたときにあることを思い出した。
「瑠璃さん」
「はい」
「もしかしたら、いやほぼ確実に知佳がキャンピングトレーラーの内装をお願いしてくると思うからその時は頼む」
「分かりました」
「それと、問題なく利益も考えてお金取って」
「はい」
最後の返事は、少し困ったような返答だったのだがお金に関しては、はっきりとさせておきたかった。咲夜は、瑠璃の返答を聞くと部屋の中に入っていった。
ーーー
休憩をしたこともあり、一時間半ほどしか作業を行う時間しかなかったのだが構造が単純だったのと細かく引く必要がある部分に関しては、既に完成しているタンクで引いている物を使用するので水槽となる部分だけだったので時間が来た時には、完成してると言っても差し支えなかった。しかし、そこにはすべての数値は書かれてはいなかったのだが大半の数値は書かれていた。そして、その数値は新規に作成したトレーラーにギリギリ乗るサイズだった。
「できてるじゃん」
「相変わらず」
「気が付かないのが悪い」
「そこに関しては、直しようがない」
「出来たの?」
「どっちのだ」
現状、出来たに関してはプロペラの検査とタンクの二つがあるのだが明らかに知佳が聞いて来ているのは、タンクのことだった。そして、その質問に関しては咲夜もどちらかは分かっていた。
「タンク」
「見てるからわかると思うけどほぼ完成だな」
「どこができてないの」
「トレーラーとの固定器具だな」
「分かった」
ここまで、咲夜が書いているのでどこにどのように固定したらいいかに関しては、すでに完成しているタンクの固定器具の形状を変更するだけなのでそれほど時間は掛からないと考えていた。
「プロペラの方は、後何分だ」
「終わってる」
「そうなのか」
「うん」
「なら、降りるか」
咲夜は、コップの中に入っていたコーヒーを飲み切った。
「冷めたか」
咲夜は、若干残念そうな顔をして先に出て行った知佳の後に続いた。
ーーー
下に降りると、知佳が開けたのだろう既に作製機の扉が開いていたのだが今までの完成後とは異なり水蒸気が出ることも無くそしてガラスも曇っておらず作製機内部が見えていた。
「どうだ」
扉の前に立っていた知佳に話しかけると、知佳は数枚の紙を渡してきた。そこには、ヴィジオンでは珍しく全てが英語で書かれていたのだが、辞書自体を覚えている咲夜とパソコンのために英語を覚えた知佳なので問題なく読むことができた。
「一枚ごとの証明書か」
「うん」
全てに目を通すとすべてが問題なく検査をクリアしており平均して1万5000時間は、飛行できる数値だった。
「これ、どれがどれか分かるのか?」
「それは、QRコードで判断するのでは」
「そうなるよな」
「うん」
「ケースに入れてから確認するか」
「分かった」
ケースは、下ろした時に近くに持って来ており、作製機の中にはスペースが余っていたのでケースを持ち込んで収めていた。
ーーー
ケースに収める時間は想定していた時間よりも掛かっていた。それは、作業しにくかったというよりも各プロペラの証明書と本体を合わせるのに時間が掛かっている要因だった。
「持っていたよりも時間が掛かったな」
「うん」
結局、作業を始めてから1時間近くたっていた。
「1枚ずつ検査したほうが早そうだな」
「そうなると残りの空間がもったいない」
今回は、5枚だったのだがそれでもスペースに余裕はあった。それなのに1枚ごとやってしまうとあまりにも空間が余り過ぎていた。咲夜としても機械は効率的に動かしたかったのだがあまりにも検査結果の紙と本体を合わせるのがめんどくさく感じていた。
「製作機買うのが目標にするべきなのか」
「もったいない」
「そうだが、空間が余るよりもマシだろ」
「投資するのは、黒字になってから」
「そうだが」
「それに、これのためだけに買うのはもったいない」
個人で製作機を持っていること自体がレアなことなのだが咲夜は、既に2台も所有していることもありそこの感覚が若干麻痺していた。それでも知佳としても咲夜が言いたいことは理解できないことも無かった。
「利益が、出て生産が間に合わなくなった時に考えればいい」
「投資も、必要だろ」
「投資する金がない」
2人は持っている方ではあるのだが、それでも1台の製作機の値段はべらぼうに高く二人の現状の所持金では、目の前にある製作機の百分の一でも足りない金額だった。
「そうなんだよな」
「改良しかない」
「改良するしかないかー」
「プロペラの根元に数字でも彫刻して入れる?」
「そこまで影響は出ないとは思うがバランスがな」
「塗装にする?」
「塗装かー、複数を同時には指定できないだろ」
「たぶん」
「なら検査する前に自分たちで刻印でも入れるか」
「それなら、製作機が入れてそうだけど」
「それが、QRだろ」
「それ以外も入ってるとは思う、銃には入ってるから」
「ならどこに入ってるんだ」
知佳は、何か考え始めた。咲夜も、同じように考え始めた。頭の良い二人なのでそこまで時間が掛かることなくほぼ同じタイミングで二人の答えが出た。
「「プロペラの固定部」」




