8話 早くも
そこにあったのは大型の製作機で購入しようとすると100億Gほどかかる機械が置いてあった。咲夜は、その大型作製機があることに驚きが隠せなかった。大型作製機が設置されている場所は偏りがある上に本島に置いてある場所は、造船地区と北の工場区域に密集しており製作機自体が設置されていない区域もあり咲夜たちが本拠地としている2000番台の地区は、マップ上ではあの工場に置いてあった。製作機は最大のサイズであった。
「なぜ、ここにあるんですか」
「わたしもわかりませんが隠し要素の一つだと思います」
「たしかにそう考えた方が良いかもしれませんね」
「ええ、でもこの大型の作製機が毎月500,000Gで使いたい放題だと思えば安いと思いませんか?」
「確かにそれは、安いですね」
「でしょ、それで三階の各部屋には鍵がかかるのでプライベートが守られるのでどうですか」
「少し考えても大丈夫ですか」
「はい、ただ他の人も目を付けていると思います」
「大丈夫です。5分ほどください」
「わかりました。私は3階にいます」
それだけ言うと瑠璃は、エレベーターに乗って上の階に上がって行った。
咲夜は、妹のひかりに連絡してみることにした。呼び出し音のあと、すぐに声が返ってきた。
「どうした、お兄ちゃん」
「カーボン関連取れたよ」
「嘘だ」
後ろで電子端末を触る音がして「おーホントだ」そんな声が聞こえて来た。
「ホントだろ」
「マジだ、本当に取れたんだ」
「まあ、そんなことはいいやちょっと相談に乗って欲しいんだが」
「なに、もう恋人でもできたの?」
「違うわ、新しい工場と住居が一体化した建物があるんだけど」
「それを借りるか迷っているということね」
「そう、それともう一人の人と一緒に借りるだけど」
「幾らぐらいかかるのるの?」
「毎月500,000Gだね」
「結構広いの?」
「3階建てで一階に大型の製作機が置いてある」
「借りたらー、どっちみち無一文になてもどうにかお兄ちゃんなら稼げるでしょ」
「稼ごうと思えば稼げると思うけど」
「なら、結構いい話だと思うよ」
ひかりの何時もの何かあったときは何とかなる精神が出ていたが現状では助かる言葉だった。
「一旦借りてみることにするわ」
「そうしてみたら、まあ私からしてみれば全く損害はないしね」
「ひでー」
「ひどくないよ、自己責任でしょ」
「まあ、予備策として自分で借りて半分を受け取るとかになるのか」
「でも、相手が100万G以上ないと送金できないんじゃなかったっけ」
「あ、そんな制限あったね」
「どうしたの疲れてるの?」
「どうなんだろう、慣れないことやってるからかな」
「そうかもね。どうするの」
「借りてみるよ。飛行機とか作ってみたいし」
「そんな理由で続けるの」
「楽しそうだし」
「まあ、そんなことだと思ったよ」
「でしょう」
「お兄ちゃんの好きなように行動したら良いんじゃないの」
「いきなり、投げやりだな」
「仕方ないこれがひかりだよ」
「そうか、じゃあまたな」
「うん、ひかりは、もう寝るから」
「了解、おやすみ」
「おやすみー」
自由気ままなひかりは、自身の用事が終わったのかさっさとログアウトしてしまった。
ーーー
咲夜は、ひかりの後押しにより今後の方針を決定する一歩を踏み出すことにした。
3階に行くと例の段差の場所で軽食を食べている瑠璃がいた。
「瑠璃さん決めましたよ」
咲夜が上がってきていることに気が付かなったのであろう瑠璃は、驚いてしまった。
「うーーー」
「どうかしましたか?」
「咲夜さんが驚かすのがいけないんですよ」
「気が付かないのも悪いのでは」
「えー、驚かす方が悪いと思います」
「そうですか?」
「そうです」
「それは、すいません」
「いえ、それで決めましたか?」
「ええ、決めましたよ」
「では、聞いても大丈夫ですか?」
「構いませんよ」
「では、どうされますか?」
「一緒に借りることにします」
「ありがとうございます」
瑠璃は、咲夜がこの条件を飲んでくれるとは正直考えていなかった。確かに咲夜にとって好条件であることには変わりないのだが、会って数時間の上咲夜は、何かを隠しているように感じていた。そして、同様に瑠璃にも隠し事があった。
「良かったです。ってっきり断られると思っていたので」
「ええ、ただ条件を足してもいいですか?」
「なんでしょうか?」
「家賃ですが、自分が300,000Gを始めの半年間は支払います」
「でも、それでは咲夜さんにとっては損害大きいのでは」
「はい、その代わりと言っては何ですが、3階の設備内装の費用を出してもらえませんか?」
「そう言うことですか、そうなると私の方が損失が大きいように感じますが」
「そうですね、ただ追加で私にも条件を付けようと思います」
「はい」
「この物件を購入することが出来るだけの資金が集まった時、瑠璃さんがこの物件を使い続けたいとき家賃を100,000Gにするというのはどうでしょうか?」
「その、家賃は永久ですか?」
「そうですね、3階の設備に掛かった金額分と同額になるまで、ではどうでしょうか?」
「少し考えても」
「はい」
瑠璃が考えている間に確認していなかった屋上に行ってみることにした。屋上には、先ほどまで使用していたエレベーターだけでなく一階から続く階段でも行くことが可能であるため、階段で上がってみることにした。
「階段は、意外と広いな学校の階段ぐらいある」
階段は、途中で降り曲がっており合計で30段ぐらいで1階上がるにしては段数が多いが3階の天井が高いためにこの段数になっていた。
「おー」
屋上は、非常に広く建物自体の広さが丸々屋上になっていた。そして、屋上からは海が見ることが出来た。両サイドの建物は高さが同じで都市側には大きなビルが多数立っていたが海側には、低い建物ものしか建っておらず先ほどは水路の先に少し見えていたが今回は海がしっかりと見えていた。
「この街は、常に景色が変化していくな。1日が5時間で日中の平均が2,5時間だから変化が早いのも徒然と言えば当然か」
独り言をこぼしたあと、咲夜はコンクリートの上に寝転んだ。空は澄んでいたが、都市の霞がかかっていて、きれいとも汚いとも言えない景色だった。
しかし、気温は心地よく30分ほど眠気と戦かっていたら瑠璃が上がってきた。
「咲夜さんこんなところにいたんですか」
「瑠璃さん、ここは良い場所ですね」
「そうですね。もう少しで日が沈みそうですよ」
そう言われて空を見てみると先ほどよりの空がオレンジになっていた。
「結局どうしますか?」
咲夜は、手すりに体を預けている瑠璃に聞くことにした。
「一部条件を飲もうと思います」
「どの条件ですか?」
「内装の部分です」
「3階だけのということですか」
「いえ、内装を任せてくるという部分です」
「えっと、詳しく教えてくれませんか?」
「はい、内装は2階から屋上まで任せてくれませんか?」
「2階から屋上までですか?」
「はい、ここまでです」
「そうなると結構な金額になりますよ」
「はい、なので家賃のところになります。半年の所は変化せず350,000Gを払ってもらえませんか?」
「そうなると、途中で私が支払が不可能になった場合はどうしますか?」
「仕方ないのでその時は私が差額分を支払います」
「わかりました。その二点に関しては了承します」
「次に、購入した際ですが、この物件を購入可能になったときは最優先で購入してもらえませんか?」
「最優先でということですか?」
「はい、それでその時の家賃の減額ですが、半分になりませんか?」
「100,000Gを半額にしろということですか?」
「そうではなく、内装に掛かった費用の半額分度の金額を消化するまで100,000Gということです」
「それは、かまいませんが大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。あっ、でも咲夜さんの部屋も私がいじりますから」
「それは、困った」
咲夜のふざけたような「困ったですね」に、二人は思わず笑い合った。その笑いは、それほど長くはなくすぐに笑いは止まった。
「瑠璃さん、それではよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
咲夜にとっては意外なほど簡単に条件がまとまってしまった。それは、瑠璃も感じていた出会って数時間という二人が家を一緒に借りるということは現実世界では非現実的なことであった。
「契約はどうしますか?」
「咲夜さんと私の二名で契約すれば大丈夫だと思います」
「それと先ほどの内容は別で契約しときますか」
「そうですね。咲夜さんが問題なければします」
「では、しておきましょう。今後揉めることが合ったらめんどくさいので」
「はい、揉めるのは私も嫌なので」
「先に、この物件を借りますか」
「そうしましょう」
二人は、咲夜の電子端末からこの物件を契約することにした。二名で契約することには問題なく契約することが出来たのには、驚きではあったものの冷静に咲夜がカップルや夫婦で借りようとするプレイヤーがいるのではないかと言うと謎に瑠璃は顔を赤らめた。契約が完了した際に両者の電子端末に既存の家を契約し続けるかの有無が確認された。咲夜は、荷物が少なかったため、すぐに解約の手続きを始めたのだが瑠璃がそうとも行かなかった。
「どうしよう」
「瑠璃さんどうかしましたか?」
「咲夜さんは、家の契約はどうしましたか?」
「解約しましたけど」
「荷物はどうしますか?」
「荷物ですか?荷物自体はさほど多くないので後で取りに行きますよ」
「私は、荷物がお多くてそのー」
瑠璃は段々尻すぼみに声が小さくなっていったが想像するに難しくなく荷物が多いがために引っ越しに時間が掛かると言いたいということは理解できた。
「荷物が多いですね」
「はい」
「質問なんですが、なぜ2日目にしてそんなに荷物が多いのですか?」
「え、もしかして咲夜さん家にお邪魔していた時から気が付いていたのですが初期に回せるルーレット回していますか?」
「ルーレットですか?そんなものがあるんですか?」
「はい、ルーレットが初期のスタート地点の建物の中に置いてありますが」
咲夜は、建物に入ることなくそのまま町探検を始めたがためにスタート地点に表示されていた。ルーレット案内に気が付くことなく今まで来ていた。
「えっと、知りませんでした」
「後で回しに行ってみてください。その時に私は、料理器具が一通り手に入ったのですがその時に手に入った器具の量が多くて」
「そんなに多いですか?」
「はい、あの家のキッチンが、埋まるぐらいでというよりもはみ出しているぐらいなんですが」
「そんなにですか」
「はい」
「どうやって運んで来たんですか?」
「家を借りたと同時に郵送されてきました」
「それは、便利か微妙ですね」
「そのおかげで、料理器具に困ることは無いんですが」
「こんなに早く引っ越しをするとは考えていなかった。ですね」
「お恥ずかしいことに」
実際に瑠璃が手に入れた調理器具の量は、一般家庭の4人家族で料理が好きな人物でなければ持っていることがないような量であった。その量があの一人暮らしが前提の様に考えられた建物であれば入らないことも当然ではあった。
「どうしましょうか」
「箱に入っていたりするものもあるんですよね」
「はい、入っている物もあるというよりそっちの方が多いです」
「小物は何とかなると思いますが冷蔵庫もあるんですよね」
「はい、冷蔵庫もあります。しかも業務用サイズのが」
「二人では運べないですね」
「はい、小さな車輪が付いてはいるんですがここまでは転がして持って来れないと思います」
「そうなると、NPCの輸送に頼むしかないですね」
「そうなりますよね」
「因みに、いくらぐらいかかりますね」
「えっと、冷蔵庫とか大きくて私たちだけだと長距離運べないのが4つあります」
「何と何ですか?」
「冷蔵庫、オーブン、食洗器、テーブルです」
「冷蔵庫はわかるんですが残りの3つが理解できないのですが料金はいくらになりそうですか?」
「100,000Gぐらいですね」
「頼みましょう。買うとなると結構な金額になりますね」
「はい、小物は後で私が運んでおきます」
「わかりました。私も手伝いますよ」
「ありがとうございます」
こうして、二人の少し不思議な同居生活が、静かに始まろうとしていた。




