沙織の唄
「ホントにありがとう」
それより他に言葉はなかった
あなたはぺこりとアタマを下げて
自転車で去っていった
ただの一度も振り返らずに
ホントは「愛してる」
それは音にしてはいけなかった
あなたもきっとそうだから
僕はただただ見送った
小さく小さく見えなくなるまで
なんでお別れの日は
いつも雨なんだろ・・・
キライだキライだ雨なんてキライだ
二度と会えないあなたのことが
じわりと浮き上がってきちゃうから
掻き毟って転げ回って叫んでみても
離れはしない思い出は
まるでケチャップのシミみたい
追いかければよかった言ってしまえばよか
った抱きしめてしまえばよかった
互いに視線を合わせない精一杯の笑顔
涙をガマンしたあなたの答え
だから僕もただ見送った言葉にしなかった
雨で全てが溶ければよかった
あの日で世界が終わればよかった
取り残された僕はまるで錆びた自転車
サドルが無くてもペダルが折れてもチェー
ンが切れてもあなたの為なら走ってみせれ
た
けれど、今は
「こちらこそ」
それは僕の嘘つきの声
あなたの背中が小さくなってく
小さくなって小さくなって・・・