サバイバル
その夜、俺はその世界に居た。
見覚えのある·····暗い世界。状況を理解すると後ろから声をかけられた。
「やあ、久しぶりだね。吾季君?」
「何の用だ……?」
そう言いながら俺が振り向くとそこに影は居た。
「何の用……か。いや何、スキルの使い心地はどうかなと思ってね。」
「·····今のとこあんまり分かってないな。俺はこのスキルをフルで使えるわけじゃない。まあ、頑張って扱えるようにするさ。」
そこで影は少し軽快な口調で
「そうかそうか。それは良かったよ。良い師匠にも出会ったみたいで、今のとこ君の人生は上手くいっているみたいで安心だ。」
そこで俺は気になることを尋ねた。
「ところで俺はお前について何も知らない訳だが·····お前について教えてくれないか?」
するとそいつは話し出した
「僕はね〜君が持ってるそのスキルそのものだよ。」
「俺の·····スキルそのもの?」
「うん、そう。スキルの具現化した存在。それが僕さ。ちなみに僕のことは『影』とでも呼んでくれていいよ。」
「お前が俺のスキルだとしたら·····俺がフルで使えるようにすることは出来ないのか……?」
「残念ながらそれは出来ないんだよね〜。僕は君の所有物。そこまでの権限はないみたいなんだ。だから、これについては君自身にかかってるってことだよ。」
影と名乗ったそいつはそう言った。
「そうなのか……分かった。それで、今日ここに呼んだのはそれが伝えたかったのか?」
「うん。それだけ。そもそも僕はこんなに簡単に出てきていいものじゃないからね。どうしても話したくなったんだ。寂しがり屋でね。ごめんね?それじゃあまたね。」
影がそう言うと俺の意識は堕ちた。
目を覚ますと俺は天井を見つめながら考えた。
最初はあの世界でのことを夢かと思ったが夢というものはこんなにはっきりと覚えているものでは無い。だからあれが本当にあった出来事だとすぐに分かった。
「とりあえず今日も頑張るか。」
そう言って俺は部屋を出るのだった。
そして俺はそこから数日間、ずっとゲンの特訓を受けていた。ゲンと実戦形式で試合をしたり、魔法を教えてもらったり、戦いでの駆け引きを教えて貰ったりと様々なことをした。
そうして10日が過ぎて、俺のレベルは40にまで上がっていた。予想はしていたがレベルが高くなるにつれレベルは上がりにくくなっていった。ちなみにこのレベルがどのくらいかと言うとゲンのレベルが60だそうだ。つまり俺はこの10日間でかなり成長したことになる。
普通ではここまでの成長はありえない。だが俺には経験値増加スキルがある。だからこそここまでの急成長が出来た。だがこの世界ではレベルというのはそこまで強さに直結しないことが分かった。レベルが上がっても実力の変化は微々たるものだ。だからこそ、この世界は結局、スキルや経験がものを言う。
だが俺にはレベルを上げる明確な意味があった。スキルの強化だ。俺のスキルはレベル依存で効果が上昇する。そして今のレベルではかなり効果が増幅した。前とは比べ物にならない程に……だ。この調子ならスキルをフルで使える日も遠くはないと俺は思った。
いつもように朝食を食べていると
「吾季、お前今日から5日サバイバルしろ。」
ゲンがとつぜんそんなことを言い出した。
「………え?」
「俺が教えれることは大体教えたつもりだ。あとはお前自身がそれを活かせるか。そこで、だ。サバイバルをしてもらうことにした。」
「えーと……何故?」
「サバイバルというのはまず食料調達が必要だ。そのためには知識が試される。そしてさらに外では魔物が蔓延っているわけだ。つまり戦闘技術も試され、常に警戒しなくてはならない故に経験も磨かれる。」
なるほど、完全に理解ができた訳じゃないが、これまでこの男の指導を受けて分かったことがある。この男の特訓は無駄なことがない。きっとこれも本気で言っているのだろう。それが強くなるための方法と言うのなら俺はなんだってしよう。そう思った俺は
「分かりました。そのサバイバル、全力で挑みます。」
そう、答えるのだった。
そうして俺は街の外の森に放り出された。
「さて、まずは寝床の確保だな。」
5日もサバイバルをするんだ。流石に寝ずにというのは難しい。そう思った俺は寝床になりそうな場所を探していた。
「なるべく雨なども防げる場所がいいよなぁ。」
俺がそんなことを言いながら探していると1匹の鳥をみつけた。しかもそれは魔物ではなく正真正銘、食べれる鳥だ。
「まっ、先に見つけたんじゃ狩るしかねぇよな。」
そう言いながら俺は気配を消して鳥の背後に立ち、
ザシュ
鳥の頭を一撃で切り飛ばした。
結局、生き物を絶命させるならこれが一番だ。どうせ頭の部分は食べないんだし。
「生き物の命に感謝だな。」
そう言いながら俺は鳥の死骸を持って再び歩き出すのだった。
そうして寝床を探し回っているとひとつの洞窟を見つけた。
「入ってみるか。」
中に入ってみるとそこはどこまでも続いている洞窟という訳ではなく、ひとつの大きな穴という言う感じの洞窟だった。
「なるほど、なかなかいい場所だな。」
こういった洞窟はかなり好条件だ。まず雨を凌げる。そしてすぐに行き止まりがあるということは洞窟の入口だけを警戒すればいいということだ。それだけでかなり体力が温存できる。流石にずっと全方向を警戒するというのはしんどいからな。
欲を言えば近くに川などがあれば食料問題も解決出来て素晴らしかったのだが
「ま、流石に贅沢か。」
とりあえずもう夜も遅いので俺は飯を食って寝るのだった。
次の日、俺は早速動いていた。
寝床は確保出来た。あとは食料だ。今回、俺に与えられた日数は5日。安定した食料を確保する必要がない分楽だ。
水は魔法で出すことが出来るので心配ない。今回、ゲンに言われたのはサバイバルをしろということだけ。つまり逆に言えば生きてさえいればいいのだ。何か余計なことをする必要は無い。だったらあとは食料を確保してゆっくりしておくだけなのだ。そう考えながら俺は食料になりそうなものを探す。
別に鳥などの生き物じゃなくてもいい。キノコや木の実などでもいい。その辺の知識はある程度は教えられている。だから食べれるかの見分けはつく。
そうして探しているとキノコがたくさん生えている場所を見つけた。ラッキーだ。サバイバルは残り4日もある。なるべく多く持ち帰っておこう。そうして俺はキノコ選別に取り組む。
「えーと、これは食える。これも食える。これはー、どうだっけな?まあ、食えるか。おっと、お前はダメだ、毒キノコ。お前は仲間には入れられない。すまんな。」
そんなことを言いながら俺は持っていた袋にキノコを詰めていく。
そうして袋がパンパンになったとこで俺は洞窟に帰った。こんだけあれば3日は持つな。とそんなことを思いながら俺はそのキノコを食べて寝るのだった。
ハブられ無双第7話です!
スキルの初使用時に出てきた、あの影の正体が判明しましたね!次もお楽しみにしていてください!
ぜひ応援よろしくお願いします!