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黒の放浪者

俺がそのように素っ頓狂な声を上げるとその男は苦笑しながら話し始めた。

「あぁ、安心してくれ。別に君に対して何か危害を加えようというわけじゃない。実は昨日、君が荒くれ者たちと戦っている姿をたまたま目撃してな。そしてさっき君がここに入っていくのを見たからつい気になって話しかけたというわけだ。」

なるほどあの戦いを見られていたのか。だとするとなんだ?実力を確かめに来たとか?いや、思い上がりすぎか?俺がそのように考えていると目の前の男は

「君の戦いを見ていた感じ、君にはとても才能がある。だがその才能に君の技術が追いついていないようにも感じた。そこでだ。」

男は俺に手を差し出しながら

「俺の教えを受けるというのはどうだ?」

………なんだと?つまり弟子になれということか?確かにこの男が本当に強いのであれば、それは俺にとっていい話なんだろうが、まず俺はこの男について何も知らない。この男が本当にトップ冒険者かすら分からない。そのように俺が悩んでいると

「信用出来ないか?まあ、そうか。突然すぎたよな。そうだな………まずは身分を明かすとしようか。信用をしてもらうにはこれが1番いい。」

そう言って男は羽織っていたマントを脱いだ。そして顔がはっきり見えるようになった。まず髪は短めの黒髪でところどころに白髪が生えている。顔はかなり整っていて若い時は凄くイケメンだったんだろうなという印象をうけた。無精髭が良く似合う、まさにイケオジといった感じだ。

「どうだ?俺の素顔、滅多に明かさないんだぞ?」

その言葉はどうやら本当らしい。周りのざわめきが物語っている。

「自己紹介をしよう。俺の名前はゲン。このような見た目だから黒の放浪者などと言われている。これでもトップ冒険者をやっている。そちらは?」

ゲンと名乗った男はそう尋ねて来たので俺は名乗ることにした。

「逢坂吾季です。」

つい癖で日本名をそのまま言ってしまった。ゲンの顔を見ると驚いたような顔をしていた。やはりこの世界じゃこういう名前は分かりにくいか。そう思い俺は訂正した。

「今のは気にしないでください。子供の頃の癖が出てしまって。吾季と呼んでくれて結構です。」

「そうか、それでは吾季。改めて俺の教えを受けるつもりはないか?」

手を差し出されながらそのようなことを言われたので別に悪い話でもないと思った俺は

「その話、乗りました。」

と、笑みを浮かべながらその手を取るのだった。


そうして俺たちは2人で街を歩きながら話していた。

「吾季は今日、冒険者になったばかりなのか?」

「はい、最近この街に来たばっかりで……だからこの街には驚くことばかりです。」

一応これから教えを乞う立場として敬語は使っておく。

「へぇ〜、前はどんなところに居たんだ?」

やっぱり聞かれるよな………だがこういう時のための誤魔化し方は考えてある。

「いや、実はこの街に来るより前の記憶がなくて…………気づいたらこの街に居たんです。」

「なるほどな。複雑な事情がありそうだな。深入りするのはやめておこう。」

「はい。ありがとうございます。」

よし、何とか誤魔化せた。

「それで吾季の職業はなんなんだ?ちなみに俺は剣士だ。」

職業………どうしようか。ナイフを使うから剣士とは言えないよな。だったら

「俺の職業は格闘家です。戦いを見てたんですよね?だったら分かりますよね?」

都合のいいことに俺はあの戦いでは武器は使っていない。それにこれからナイフを使うとしても格闘家なら不思議はないだろう。

「なるほどな。それだったらあの身体能力の高さも納得だな。だが不思議な魔法を使っていたようだったがあれはなんなんだ?」

魔法?まさかスキルのことか?それも見られていたのか。どうする?本当のことを言うか?

「あれは格闘家のレアなスキルなんですよ。素手でどうにかできるものなら触らずに干渉することが出来るっていうスキルです。」

俺は少し誤魔化すことにした。わざわざ手の内を全部明かす必要はないだろう。そういうのは本当に信用出来るやつに言えるものだ。

「ほー、便利なスキルだな。使い方がもっと上達すればとんでもないスキルになりそうだ。」

「俺もそう思います。」


そのような会話をしながら俺たちが向かった先は廃墟のような場所だった。

「ここで何を?」

そう尋ねるとゲンは少し俺と距離をとって

「よし、戦おう。」

そう言ってきた。俺は思ったことをそのまま口に出した。

「は?」

「まあ、聞け。まずはお前の実力が知りたいんだ。だから本気でいいぞ。もちろん武器も使っていい。殺す気でこい。」

よくあるセリフだ。だがこの男が言うと何の違和感もない。

そう言われた俺は笑みを浮かべながらナイフを構え

「死なないでくださいね?師匠さん?」

そう言葉を合図に戦いは始まった。


まず俺は様子を見ようと思った。その考えは向こうも同じようでしばらく睨み合いが続いた。

こういった膠着状態というのは案外疲れるものだ。相手の一挙一動全てに神経を使わなければならない。とてつもない集中力が必要なのだ。

だがここで集中を切らして下手に行動するのは悪手だというのは経験の浅い俺でも分かる。人間いつまでも集中は続かない。いつか必ずそれが崩れる時が来る。だからそれを待ち続ける。そしてその時ゲンがこちらに近づこうと足に力を入れたのが分かった。俺はその隙を見逃さずゲンがこちらに接近してきたと同時に俺の首を狙っている刀をしゃがんで避け、その足に向けナイフを薙いだ。しかしそこに足はなく、いつの間にか俺の首元には刃が置かれていた。

「俺の勝ちだな。」

そこで俺は理解した。まんまと策に引っかかってしまったのだと。ゲンはあえて隙を見せることによって俺の隙を作り出したのだ。言葉で言うと簡単かもしれない。だがこの実戦の中で実際にやってのけるのはおそらく信じられないほどの場数を踏まないと不可能だろう。

俺は確信した。この男について行けばとてつもない経験を得られるだろうと。教えを乞うということは相手の経験をそのまま吸収することだって可能だろう。そして経験はそのまま力となる。つまり強くなる最大の近道を俺は手に入れたのだ。

俺は本当にラッキーだ。この男は長い時を経てこの経験を身につけたのだろう。だが俺は短い期間でその経験を取り込むことができる。

「あはは!」

「ど、どうした?」

「いや、すみません笑 あまりの差に思わず笑ってしまって。」

「そ、そうか。だがお前もこれからだぞ?」

そのように言ってくれたゲンに対して俺は

「ええ。これからもよろしくお願いしますね。ゲンさん。」

と少しだけ笑顔を浮かべるのだった。


ハブられ無双第5話です!

黒の放浪者ことゲンの弟子もなることになった吾季。

吾季は自分の未熟さを知ります。

ここから吾季はどう成長していくのか!

これからもお楽しみに!

是非とも応援よろしくお願いします!!!

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