やっぱお約束はお約束なんだな
「おいおい、お約束すぎんだろ.....」
「せっかくの異世界転移なのにハブられたぁ~~!!!!」
今の状況を説明すると、かなり遡る。
俺、男子高校生こと逢坂吾季はいつも通り、教室で友達と雑談していた。
「なあ、吾季」
「ん?」
「俺らの日常、あまりにも普通すぎないか?」
「というと?」
「俺が考えてる高校生活ってのはもっとこう、女子達とキャッキャウフフしてさ?こんな隅っこで話してるだけの陰キャ生活じゃなくて、陽キャとパーリーピーポーしてスリルのある生活を想像してるのよ!」
「スリルねぇ....」
「例えば異世界転移とかさ!」
「どこの世界線だよ」
俺たちがそんな感じでいつも通りくだらない会話をしている時だった。突如として教室が騒がしくなった。
「お、おい。俺たち光ってね?」「キャア!なにこれ?!」
「周りの奴らもみんな光ってる?」「これ、やばくね?」
「みんな落ち着いて!まずは冷静になるんだ!」「お前ら!光一の言う通りだ!落ち着け!」
周りを見てみるとなんとみんなの体から光が出ているではないか。そうして唖然としていると俺の体からも光が出始めた。
「おい、吾季。まさかこれって....」
「あぁ」
「「マジの異世界転移だ!!!!!」」
シュゥゥゥーッン
そうして目が覚めると俺たちは知らない場所に立っていた。
「ここは?」「ここはどこなの!私たち、教室に居たよね!?」「分からねぇよ!一体どうなってんだ!」
そこは知らない場所で明らかに俺たちがいた場所とは違っていた。
(ここまではテンプレ通りだ。このまま行くとおそらく次は....)
「異世界の戦士たちよ。よく来てくださった。」
そう言われ視線を向けるとそこには長い髭を生やし、赤と白のローブが特徴的な男が座っていた。
するとクラスの委員長である青山光一が前に出た。
「あ、あなたは一体?まずここはどこなんですか!?なぜ僕たちはこんなところに!」
「ふむ、ひとまず落ち着いてくれ。そんなに興奮されていては話すにも話せん。」
その男がそう言うと光一は少し落ち着いた。
「は、はい。すみません。」
「とりあえず自己紹介をしよう。ワシはリデカミア王国の国王、バンリッヒ・リデカミアじゃ。」
「お、王様!?」
(やっばり国王様のお出ましか。)
「我が国は貴殿らを魔王軍に立ち向かう勇敢な戦士として、歓迎しようじゃないか」
「ま、魔王軍?恐れながら国王様。私たちは普通の高校生です。急にそんなことを言われても何も分からないし、まず戦える力などありません!」
「そうか、確かに説明が必要であったな。よし、ワシから説明しよう。今、この世界は魔王の復活によって、危機に陥っておる。国の騎士たちや冒険者たちが戦っておるが、魔物だけで手一杯で魔王を倒すどころか、魔王の姿さえ見たこともないのだ。まあ、邪悪な見た目をしているに違いないだろうがな。だから、ワシらは異世界から貴殿らを召喚し、力を貸してもらおうと考えたのだ。」
「なるほど、状況は分かりましたが突然のことで簡単に飲み込むには....」
そのような会話をしていると陽キャグループの1人、松平茂が割り込んだ。
「なあ、国王さんよぉ。さっき光一が言ってたように俺らには戦う力なんて無いぜ?」
そういうと周りの兵士たちが一斉に槍を構えた。
「うわっ!」
「貴様!口の聞き方がなっていないぞ!国王様に向かって無礼だぞ!」
「よいよい、槍を下ろせ。そこの元気な少年よ、貴殿らがどのような世界に住んでいたかは分からんが、まずはステータスを開いて自分の強さを確認してみてはどうじゃ?「ステータス」と言えば自分のステータスを見ることが出来るぞ。」
「ちっ、わぁーったよ。ステータス。」
ボワァン
「うお、なんだこれ?職業「格闘家」?」
「おぉ!格闘家か。なかなか良い職業じゃないか。さあ、他の者たちも確認してみてくれ。」
「「ステータス」」
全員がそう言うと一人一人の前にステータスが表示された。
「僕のは剣士?」「私のは治癒士って書いてるわ。」
「まあ、このように異世界から来た貴殿らには素晴らしい才能が与えられている。訓練をすればこの国でも優れた実力を得ることが出来るだろう。」
すると光一が
「僕の職業は、、、、、「勇者」?」
光一がそう言うと周囲がざわついた。特に異世界側の人間達が。
「ゆ、勇者!?それってあの伝説の?」「まさか一回目の召喚で勇者様が来てくれるとは!」「今夜は宴だ!勇者様の召喚を祝おう!」
「皆の者、落ち着け!!」
国王のその一喝で兵士たちは静まり返った。いやはや国王というのは凄いものだ。
「確か、コウイチと申したか?勇者というのは真か?」
「は、はい。ここが職業が書いている場所で間違いないならそうだと思います、、、」
そう言って光一はみんなに見えるようにステータスを大きく表示した。
「これは、、、まさか本当に勇者様が存在するとは、、、さらにこの基礎ステータスの高さ、レベルを上げたら一体どれほどの力になるのか、、、」
「え、えっとぉ」
「コウイチ殿。改めてお願いしたい。どうかこの国を救うために共に戦ってくれぬだろうか。」
「いや、えっと。流石に僕の一存で決めるわけには。みんなの意見も聞いて貰えないでしょうか?」
「ああ、失礼した。もう一度、異世界の方々にお願いしよう。我々を救って欲しい。協力してくれるだろうか?」
国王がそう言うと茂が
「国王さんよ。まず俺たちが魔王を倒したとして、元の世界に帰れるのかよ?」
(そう、そこだ。そこが俺も気になっていた。これもセオリー通り行けば、、、)
「申し訳ないが、現状、元の世界に送り返す方法は我々にはない。」
「はぁ!?だったらどうすんだよ!俺らはずっとこの世界で生きろってことか!?何も分からないこの状況で!」
「気持ちは分かるが落ち着いてくれ。」
「茂君。落ち着いて!」
「ああ、香織の言う通りだ。茂、落ち着け。」
山野香織。確か光一の幼馴染だったか?
「あ、ああ。すまねぇ。国王様、話を続けてくれ。」
「うむ。さっきも言った通り帰る方法は我々にはない。だが現状は、だ。言い伝えによると過去、勇者がこの世界に来た時に魔王を倒したあと、姿を消したと書かれておる。これはおそらく役目を果たし終えて元の世界に帰ったのではないかとワシは考えておる。」
「つまり、魔王を倒さないと帰れないってことですか?」
「ちっ、結局俺らに拒否権なんてねぇじゃねぇか。」
「茂君!」
「ああ、だがワシらは君たちなら十分に魔王を倒すことが出来ると考えておる。もちろんそれなりの特訓は必要だが。」
すると光一がみんなに問いかけた。
「みんな。今のところ、僕たちが帰れる方法は魔王を倒すしかないみたいだ。でも僕たちが協力すれば魔王は倒せる!じゃあみんなで一緒に戦わないか!?きっとそうしたほうがみんなのためにもなる!」
(何、熱くなってんだこいつ?勇者ってことに浮かれてハイになっちまってるのか?)
「そ、そうだよな。結局それしか道はないんだし。」「そうだよ!みんなで力を合わせよう?」「俺たちが協力すれば魔王なんて怖くない!」「俺たちは協力するぞー!!」
「みんな、、、、ありがとう、、、、」
(おいおい、まじですか。こりゃ俺一人が意見できる状況じゃないな。ま、そんな俺も少しワクワクしてるんだけど)
「決意は決まったようだな。全員協力してくれる事に深く感謝しよう。とりあえず今夜は城で宴を開かせてもらおう。それぞれに部屋も用意してある。疲れたであろう。各自で夜まで自由に過ごしてくれ。」
そう言われてみんなは兵士の案内で広間を出ていく。これからのことで不安そうな顔をするやつや、職業はなんだ、ステータスはなんだと盛り上がっているやつなど色んなやつが居る。
そういえばあまりにも展開が早すぎて俺の職業について話してなかったな。俺の職業はというと、、、、「暴君」……なんだこの職業は。よくあるゲームや小説でもこんな職業聞いたことがないぞ。別に勇者とか大賢者とか高望みしていた訳では無い。ただ剣士とか槍使いとかそういう感じの普通の職業が貰えればそれで良かった。だがなんだ暴君って名前からして明らかにマイナスイメージなんだが。こんな職業がバレたらどうなるか分かったもんじゃない。どうにかして隠さないと。すると話しかけてくるやつがいた。
「よっ!吾季。」
前の世界の教室で話していた鈴鹿勝だった。
「おまえ、職業なんだった〜?ちなみに俺は魔法使い!いいだろ〜?」
さっそく聞いてきやがった。非常識なやつめ。いや、この状況でしかもこいつ性格だったらしょうがないか。
「俺の職業は、、、、、「剣士」だ。」
「へ〜、普通だな!」
「普通で悪いかよ。てか、お前も普通寄りじゃねぇか!」
「俺はいいんだよ〜。魔法ってロマンあるじゃん?だからいいの〜。」
「そういうもんかよ。」
そして俺たちはそんな会話をしながら部屋に向かった。俺の仮の職業は剣士で決まった。
そして夜。宴が開かれたが、参加者はほとんど居なかった。みんな急な出来事に混乱して気持ちが混乱しているようだ。おそらく部屋にいるのだろう。そういうわけで俺も部屋に戻った。さて、明日からどうなる事やら。
「全員揃ったか?」
俺たちは訓練所のような場所に集められていた。いや、実際にここは訓練所なんだろう。なんか周りで兵士たちが訓練している。そこで先程まで点呼をとっていた男が言った。
「今日から諸君らには訓練をしてもらう!私はリデカミア騎士団の団長を務めている、ガッシュ・バーンシュタインだ。訓練を施す立場ゆえ、君たちには少々厳しくなるかもしれない。だが君たちに敬意が一切無いという訳ではないということを覚えておいてくれ。我々に協力してくれる君たちを戦場で死なせる訳にはいかない。だからこちらも本気で指導する。」
「し、死ぬ、、、、」
「ああ、そうだ。戦場では多くの魔物と戦う。半端な覚悟と実力ではいつ死んでもおかしくはない。だからこそ君たちには強くなってもらう。君たちにはそれだけの才能があるのだから。とりあえず今日は君たちの職業を聞かせて欲しい。それで個人個人の訓練を考えようと思う。」
(まずいな、、、、)
「では一人一人聞いていくぞ!まずはコウイチよ。君は勇者という素晴らしい才能を持っている。その才能があればいつか私を追い越すことも可能だろう。期待しているぞ。」
「はい!」
そうして次々と順番が進み、ついに俺の番となった。
「君の名前は?」
「逢坂吾季と言います、、、」
「そうかアキ。君の職業は?」
「、、、、、、、」
「どうした?」
「えっと、おれの職業は、、、」
さっさと剣士と嘘を言えばいいと思う人がいるかもしれない。でも俺たちはついさっき団長について少し話を聞かせてもらった。団長の職業は「騎士団長」。戦士から成り上がったそうだ。そして職業にはそれぞれ固有スキルというものがあるらしい。そして団長の固有スキルのひとつに相手の嘘を見抜くというものがあるらしい。だから俺は今、嘘をつくことが出来ないのだ。
「ほら、早く言え。別に普通の職業でも恥じることはない。」
「俺の職業は、、、、剣士です、、、、、」
「………なぜ嘘をついた?」
やっぱバレた。終わった。
「まさか「職業無し(ノンギフト)」なのか?」
「い、いや!そういうわけじゃ!」
「だったら早く言え。周りに聞かれるのが恥ずかしいようなら俺にだけ見えるようにステータスを開くということでもいいぞ。」
「いや、それもちょっと、、、、」
「何故だ?見せられないということはやはり職業無しか。悪いが我々は職業無しまで育てようとは思っていない。なんせ異世界の戦士の中に職業無しが居るとは思っていなかったからな。このことは国王様に判断を任せるとしよう。とりあえずお前は部屋に戻って待機しておけ。」
「はい、、、、」
俺は何も言えず部屋に戻った。
「おい、あいつ職業が無いのか?」「え?まじで?笑 みんな持ってるのにあいつだけないの?」「かわいそー笑」「みんなやめろ!」
光一が止めようとしてくれているが俺を嘲る言葉は訓練所を去るまでやまなかった。
そして俺は国王に呼び出されていた。用件はもちろん
「アキよ。職業がないというのは本当か?」
「はい、、」
「すまないが、職業無しまで面倒を見ることは出来ん。他の者たちが魔王を倒すまで城を出て暮らしてくれないだろうか?もちろん勇者達が魔王を倒した時はそなたも一緒に元の世界に帰すと誓おう。」
「そうですか、、、、、わかりました。」
「本当にすまないな。」
「いえ、、、」
ま、こうなるよな。よくある追放みたいな感じの悪い雰囲気じゃないだけマシか。
そうして次の日、俺は最低限のお金を渡され城を出た。みんなに別れの挨拶をしようと思ったがほとんどの奴は会話すらしようとしてくれなかった。なるほどなるほど、ハブられているわけだ。だが勝だけは話に応じてくれた。勝は話している時に本当に心配そうにしてくれていた。でも別に俺は罪人になったわけでも国の敵になったとかでもない。会おうと思えば会えるのだ。俺はそう言って勝に背を向け、門をくぐった。
外に出た俺は内心「せっかくの異世界転移なのにハブられたぁ〜〜〜〜〜!!!」と叫びたかったが抑えた。別に今の俺の心は悲しさで溢れてる訳では無い。少し悔しさはもちろんあるが、そんなことはどうだっていい。だってまだ死んだわけじゃない。まだ詰んだわけじゃない。生きている限りどうとでもなるさ。しかもこの魔法や異能の力が溢れているこの世界なら尚更。そうここからだ。ここから俺の物語は始まるのだ。
初投稿で初めて書いた作品です!ラノベなどを読むのがかなり好きで暇な時などはよく頭の中で物語を作っていました。だから今回はそれらをまとめて実際に書いてみました。頑張って続けていくつもりです。ぜひ応援よろしくお願いします!