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3.公共保安局の仕事②

 同時刻。凶悪犯(エネミー)は、相変わらず暴れていた。

 館内放送によりもう一人保安局員がいる事が判明。それにより、凶悪犯(エネミー)も焦燥感に煽られているらしい。

 壁に突進して突き破り、一心不乱に逃げ回る。これまた相変わらず、白金の美丈夫は笑顔で優雅に追いかける。


「──ッ、クソが!!」


 あまりにもしつこい白金の美丈夫にうんざりとして、凶悪犯(エネミー)は意を決して進路を変更した。

 その先には、火災の際に避難経路として使われる逆三角のマークが描かれた大窓があって。


「オォゥーノーッ! キョーヤ! 凶悪犯(エネミー)が外に!!」


 バンッ! と窓を割って、凶悪犯(エネミー)は空へと飛び出した。宵闇の空を舞い、男は地に向かい落ちていく。


(このぐらいの高さなら、オレの体なら余裕だ! 見たところ他に番犬共はいねぇ。まだ全然人間を潰せてねぇが、今日はここらで一旦退いて──……)


 肉体を鬼熊に近いものへと変化させて、男は衝撃に備えようとした。

 しかし、そこで男にとって予想外の事が起きる。


「ありがとう、わざわざ外に出てくれて」


 落下する男の目の前に、突如として人が現れた。


「ッ!?」

「これ以上市民に被害出されても困るし、俺はあんまりあの店入りたくなかったから。そっちから出てきてくれて、助かるよ」

「その目、その髪、その服…………テメェ、まさか……?!」


 目の前に現れた蝙蝠のような羽を持つ陰のある美青年を見て、男は瞠目した。


(──黒の、死神)


 一瞬が永遠のように感じられた。

 凶悪犯(エネミー)にとっての天敵が、よりにもよって目の前に現れた。その瞬間、男の脳内ではこれまで犯して来た殺人の数々が走馬灯のように駆け巡る。

 黒いフードの下から覗く、月のように明るい金髪。血溜まりのように濃く紅い瞳。その青年は、無表情のまま真紅の鎌を振り下ろした。


「墜ちろ」


 どこか気だるげな、冷たい声と共に。



♢♢♢♢



「あ、京夜。お疲れ〜〜」

「……累か。中の被害状況はどうだった?」

「えっと、壊された壁や扉の破片で怪我した人がおよそ七人。凶悪犯(エネミー)の被害を直接受けて重軽傷の人が三人で、死者が二人ってとこやな」

「まあ、それぐらいなら許容範囲だな。熊系統の凶悪犯(エネミー)相手でこの被害なら、まだいい方だし」


 フードを目深に被り、気絶させた凶悪犯(エネミー)の背を踏みつける黒の死神の元に、栗色の髪の青年が軽く手を振りながらやって来た。

 ホテル前にはあの騒ぎで人集りが出来ているので、ホテルの裏の辺りでの集合だった。


「二人共やっと見つけたデス。ちゃんと、凶悪犯(エネミー)は捕まえマシタネ! フフフ、ワタシ達のキズナの力デスネ!」


 そこに遅れて白金の美丈夫が現れると、


「騒ぐな、アリス。人が来たらどうするんだ」

「ただでさえ僕等は目立つんやさかい、警亜(・・)が来るまで大人しくしとかな」

「グヌヌ……これは失礼したデス。ワタシ、静かにしマス」


 その頭に拳骨を落として、フードを被る青年は白金の美丈夫を黙らせた。

 彼等は警亜──警視庁亜人犯罪対策部の到着を待ち、そして警亜が到着すると軽い事情説明だけして、凶悪犯(エネミー)を連れてその場を後にした。

 ホテルへの取り調べや補償などは、全て警亜に丸投げして。

 それが公共保安局のやり方なのである。……故に、度々警視庁とは衝突しているが。


「今日の晩御飯はなんやろな〜〜」

「ワタシ、ギョーザがいいデス!」

「餃子……ニンニク無しなら別にいいけど」


 凶悪犯(エネミー)を袋に入れてそれを担ぎながら、彼等はビル郡の上を風を切るように疾走する。

 今日の夕食が何か。なんて可愛いらしい話をしながら。

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