一.
散歩に行こう
一.
『最近、タロの朝が遅い。
図体は大きくなったけど、もう十五歳だから、仕方ないのかな。
ほーら、朝ごはんだぞー。食べちゃうぞー。
まだ起きてこない。耳も悪くなったのか。母さんに心配そうな顔をさせて、困ったやつだ。
仕方ない。様子を見に行ってやるか。
タロの大事なおもちゃが、床に落ちている。
触るといつも怒りだすからな。ちょっといたずらしてやろう。
えい、えい。……これでも起きないかー。
タロ、おまえ本当にどうしたんだよ。布団の中で丸くなったままなんて、おまえらしくないじゃないか。
タロ、おまえと話ができればいいのにな。
そしたらオレ、おまえがなんで元気ないのか、聞くよ。
それで、どうやったら元気になるか、一緒に考えるよ。
オレ、おまえの兄貴だからな。
生まれた時から、一緒だもんな。
だけどな、タロ。
オレ、おまえと、ずっと一緒にはいられないんだよ……たぶんな。
なんかオレ、最近〝トシ〟ってやつを感じるんだ。
だから、一緒に居られる間は、傍にいるよ。
オレ、おまえの兄貴だからな。
ほら、起きろよ。
おまえが夜中に起きてるの、オレ知ってるんだからな。
〝チュウヤギャクテン〟っていうの、体に良くないって、父さん言ってたぞ。
朝起きて、ご飯食べて、外に出て、昔みたいに虫追いかけたりしてさ。
遊んでると元気になるよ。
だから、もうちょっとだけ、一緒に』
「――散歩、行くか?」
「ワン!」