表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編

郵便屋のロビンとまいごのこねこ

作者: 結城暁

 ロビンは森に住むりっぱなしましましっぽが自慢の郵便屋さんです。今日も元気に手紙を配達します。


 にゃあにゃあにゃあ。


 森の中から泣き声が聞こえてきます。

 こねこが泣いていました。


「どうして泣いてるの?」

「にゃあにゃあにゃあ」

「どこからきたの?」

「にゃあにゃあにゃあ」

「ぼくはロビンだよ。きみの名前は?」

「にゃあにゃあにゃあ」


 こねこは泣いているばかり。しかたがないのでロビンは郵便鞄にこねこを入れてつれていくことにしました。


「こんにちは、ワニさん。今日のお手紙です」

「ありがとう」

「この子のおうちを知りませんか?」

「さあ、知らないなあ。きみのうちの子じゃないんだね」


 鞄をゆりかごにねてしまったこねこを見たワニさんがいいました。たしかにこねこのりっぱなしましましっぽはロビンのしっぽとよく似ていました。

 ワニさんにお礼を言ってロビンは次の家へむかいます。


「こんにちは、ヒョウさん。今日のお手紙です」

「ありがとう」

「この子のおうちを知りませんか?」

「ううん、わからないなあ。きみのうちの子かと思ったよ」


 鞄の中でぷうぷう寝ながらロビンのしっぽを抱きしめるこねこの模様は、たしかにロビンの模様とそっくりでした。

 ロビンはヒョウさんにお礼を言って次の家にむかいました。


「こんにちは、オオカミさん。今日のお手紙です」

「ありがとう」

「このこのおうちを知りませんか?」

「うーん、知らないよ。あんまりそっくりだからきみのうちの子かと思ったよ」


 たしかにロビンのしっぽにじゃれながらきゃらきゃら笑うこねこの瞳の色とロビンの瞳の色はそっくりでした。

 ロビンはオオカミさんにお礼を言って次の家にむかいました。

 次の家へ、また次の家へ。

 お手紙を届けながらこねこの家を探ししたが、こねこの家は見つかりません。

 配達先をすべてまわってもとうとうこねこの家は見つかりませんでした。

 ロビンの家でこねこはおいしそうにミルクを飲みました。


「このままうちの子になるかい?」


 口のまわりをミルクだらけにしたこねこは、のどをならして笑いました。

 窓の外にかがやく満月を見ながらロビンはこねこをなでました。

 みるくを飲んでぱんちくりんになったお腹がふくらんだりしぼんだりをくりかえします。こねこはむにゃむにゃと寝返りをしました。

 明日から郵便鞄でこねこをつれながら手紙を配達する自分を思い描いて、ロビンはくふくふと笑いをこぼしました。

 ロビンも眠ろうとベッドにもぐりこむと、誰かが家の戸をたたきました。


「すみません、こちら郵便屋さんのお宅ですか」

「はい、そうです。どちらさまですか?」

「夜分遅くに申し訳ありません。こちらにうちの子がいると聞いてきました」


 ロビンが戸を開けるとトラさんがいました。

 トラさんはしっぽのしましまも、毛皮の模様も、瞳の色も、こねこそのものでした。

 こねこはトラさんの子だったのです。

 何度も何度もロビンにお礼をいって、眠るこねこをつれたトラさんは帰っていきました。

 トラさんは今日この森に引っ越してきたそうです。明日から配達する家が一軒増えました。

 ロビンはこねこが入っていた鞄をのぞきました。手紙も、もちろんこねこも入っていません。

 ロビンは鞄の口をしっかり閉じてからベッドに入りました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ