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普通の女子が好きなもの


「女子ってなにが好きなんだよ。ゲームだってやっていないだろうし、だったらいつも家でなにをやってるんだ?」

 一人っ子の僕には普段の女子のイメージが湧かない。ゆえに女子の好きなものや楽しいことが想像すらできない。これは彼女を作るにあたって障害以外のなにものでもない――。

「テレビ見たり漫画読んだり勉強したり」

「……まったりしているのか?」

 だが、普通過ぎないか? それとも、本当のところは隠しているのか?

「わたしはそうだったわ」

「……。コマチのことを聞いているんじゃないとハッキリ言っておきたいぞ」

「でもこの時代の女子は……何が好きで何にときめくかなんて分からないわ。……よし、明日、隠密行動で探ってみるわ」

「隠密行動?」

 胸の前で忍者のような手つきをしているのだが、カンチョーされそうで怖い。ちょっと違うっぽい。

「まかせといて。いつまでも待っているような受け身じゃ駄目なのよ。行動にでなくては」

「ん? ああ。くれぐれも見つかるなよ」

 警察に。

 あてになんかはしていない。しかし……コマチの好きなことがテレビや漫画ってところに呆れてしまう。……江戸時代にはない……。漫画はともかく、テレビだけは絶対にない――。



 特になんの進展もなく一日を無駄にした。

 昨日はあんなに張り切っていたコマチも、今日は漫画をよんでマッタリしている。


 分かったことといえば、キャプテンと檜菜穂は付き合っていない。キャプテンが告白したが、丁重に断られたという事実だ。コマチが調べた訳ではなく、僕がしつこく佐原に問いただしたら、勿体ぶって教えてくれたのだ。

「お前、絶対……ぜええええたいに俺から聞いたって言うんじゃねえぞ」

 とまで念を押され、教えてくれたのだ。

 これは絶対にバレてはいけない男と男の約束だ。破れば佐原は前と同じように僕に意地悪をしてくるだろう。または、無視し続けるかもしれない。

 キャプテンがフラれた理由までは聞いていないが、檜のタイプがキャプテンじゃなかったのだろう……だったら、女子が好きになるタイプって、いったいなんだ?


 僕だってバレー部だ。レギュラーでもない。ならば勝算はあるのだろうか。

 絶体絶命ってやつなのではないだろうか――。



「……コマチはどういうタイプの男子が好きなんだよ」

「え? わたしのタイプ?」

 いやいや、急に頬を赤くして真剣に黙らないでくれるかなあ……。聞いてる僕の方まで赤くなってしまうじゃないか――。檜が好きなタイプの参考になればいいと思って聞いただけだから勘違いしないでほしいぞ。

「やっぱり……しっかり話を聞いて共感してくれる人……かな」

 共感?

 女子は共感を求める……。以前、母から聞いたことがある。あの時は意味が分からなかった。意見せずに母親の言うことをしっかり聞きなさいと言っているだけだと思っていた……。

「え、それって普通じゃん」

「……そりゃ普通よ。わたしだって、普通の女の子だもん……」


 銀色の全身タイツを着ているから、普通じゃないと思っていた。

 言い出すことがぶっ飛んでいるから、普通じゃないと思っていた。

 MP0団体ですでに働いているのだから、普通じゃないと思っていた。

 ……女の子を好きになるきっかけって……こんな些細なことからかもしれないと感じた。


 ベッドに寝転ぶと、天井を見上げて考えた。古めかしい蛍光灯器具の豆電球が温かみのあるオレンジ色を発している。

 同年代で一歩も二歩も先を進んでいる賢い女子が、馬鹿な男子なんかを好きになる方法なんて……この世にあるのだろうか……。


 逆の発想で考えてみればいいのか……? 好きでもない女子に僕が惚れてしまうような理由……。僕だったら、なにをされたら惚れてしまうのだろう……。


 男でも女でも老若男女問わず、絶対に惚れる方法……?


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