魔法少女ちゃん、転生?する
ここは、どこなのだろう。何もかもが分からなかった。私が存在した意味も、私というモノさえも。でもそんな時声がした。
「っ????!!!!!なんてことするんだこの人は!瑠璃・・・ごめんね。守ってあげることができなくて・・・でも約束は守るよ。瑠璃がきっと幸せな生活を送れるように。僕から送れるものはこれくらいだけれど。少しでも幸せになってくれるといいな・・・さあ、おいき。君はもうこの人生からは解き放たれた・・・」
ああ。これはきっとヴァンの声だ。彼は約束を守ってくれたのだろう。だから今私はこうして何もないところを漂っているのだ。とても楽しくない人生だった。人に殴られて、罵倒されて。私にはそんな記憶しかない。あの人生で私を「瑠璃」と呼んでくれたのはヴァンと母さんだけだったなぁ。
「瑠璃。あなたは強く生きなさい。」
ふとそんな声が聞こえた。これはきっと・・・母さんの声だ。私が4歳の時に私を守って死んだ母さんの声だ。思えばきっとこの時からだったのだろう。私の人生が壊れ始めたのは。ああ、母さん。私があの時一緒に死んでいればこんなことにはならなかったのかもね。身を挺して守ってくれた母さんには申し訳ないけど私の人生はとても楽しくなかった。つまらなかった。そして、辛かった。たとえどんなに強い魔法少女の力で守られていたとしても、心には深い傷が刻まれ続けた。でもヴァンが約束してくれた次の人生は今世より少しでも楽しければいいな。普通の家庭で普通に育って、愛してもらえて。そんな環境は、そんな人生はどれだけ幸せなことだろう。さようなら「瑠璃」。私の大切な名前。
「瑠璃。あなたは強く生きなさい。そうすればいずれ何にも代え難い幸福に手が届くから・・・私はあなたの幸せを強く願っているよ・・・」
眠い・・・なぜだかわからないがとても眠い・・・でもなんだろう。なんだか温かい・・・この暖かさは久しく感じていなかったものだ。そう。母がまだ生きていた頃に感じた暖かさに似ている。目を開けたくない。この暖かさを手放したくない――――
「・・・ピス!ラピス!あなたは生きなければなりません!『ヒール』!ここで終わってしまうなんてそんなの、例え神が許してもこの私が許しません!」
そんな悲痛な声が聞こえた。全く聞いたことのない声。でもなんだろう、この声の主がこの暖かさを作っていることがわかる、そんな優しさに満ちそれでいて悲壮感に溢れた声だ。そしてさっきまで重かった体が明らかに軽くなっていることに気づき、驚く。そんな魔法みたいなこと魔法少女としての力でもない限りあるわけないのに。いや、もしかしたらこれは転生なのではないか?それなら魔法のある世界だとしてもおかしくない。ならば起きてみよう。ヴァンがせっかく私のために用意してくれた新しい人生だ。さあ目を開けよう。2回目の人生が幸せになってくれることを願いながら。
「んぅ・・・」
そんな声が漏れるが気にしない。私は寝起きなのだ。でも、そう。ここはどこなのだろう。そしてなんで周りにこんなに人がいるんだろう?しかもすごいイケメンと美人が豪華なドレス何かを着てどこの金持ちのパーティーに出るんだというくらい着飾っている。前世でアニメとかで見た貴族ってやつに似てる。
「起きたか!」
「うるさいですわ、旦那様。少し黙っていてくださる?」
「うっ・・すまん・・・」
というかこの顔で喋る言葉は日本語なのか・・・
「ここは・・・どこ?わたしは・・・?」
「っ!そうか。記憶を無くしてしまっているのか・・・」
「そのようですわね。それでは教えましょう。ここはファーレンハイツ伯爵家。貴女の名前はラピス・ファーレンハイツ。そして、私はローゼン・ファーレンハイツ。貴女の母親です。よろしくね、ラピス。」
このすんごい美人さんが私の母親・・・?ということはあれか。やっぱりヴァンは私を転生させてくれたのか。でも・・・
「らぴす・・・?」
「ええ。ラピス。それがあなたの名前です。まだまだわからないことはあるとは思いますが、取り敢えず寝なさい。貴女まだ眠いのでしょう?目がトロンとしているわ」
そんな、前世の名前ほぼそのまんまじゃん・・・
「ちょ、私も話したいんだが!」
「うるさいですわね。」
あ、イケメンさんが沈んだ。でも、まあたしかに
「とっても、ねむい・・・」
「なら、寝なさい。貴女が今まっさきにやるべきことはそれですわ。おやすみなさい、ラピス・・・」
そういって母(暫定)のローゼンさんは私に毛布をかけてくれた。あったかい。
「うん。おやすみ・・・」
そして私は一瞬で眠りに落ちた。