銃声のその後に
おれが教室に戻ってくると、机をたたいた音と怒声が聞こえてきた。
「ふざけるな!どうして、こんなバカげたことに付き合わないといけないんだ」
その声は9人しかいない視聴覚室に響き渡って霧散した。
教室には何とも言えない沈黙が流れている。
その沈黙を破ったのは”博士”こと真田博士だった。
「そう叫んだところで何も変わらないだろ。それに、これがデスゲームなら悠長なことは言ってられないかもしれないがそうじゃない。早急に対処しなくていいなら問題じゃない」
「問題じゃないだと!どう考えたらそうなるんだ。負ければ吸収されて違う自分になるかもしれないんだぞ。これのどこが問題じゃないんだ!」
「今のまま大人になるわけじゃないんだ、どうせ変わるなら遅かれ早かれそうなる。それに、負けても残るのは”自分”だ。消滅するわけじゃない。正義感で動くのは自由にすればいいが押し付けられては困る」
「なんだと、もう一回言ってみろ」
「まあまあ、博士も悪気があっていっているわけじゃないんだ。むしろ、落ち着いてこの状況を整理しているからそういう見方もあるわけだし一意見として取り入れてみたらいいんじゃないか」
気がつけば、おれが仲裁に入っていた。
ほっておけば、変なところに火種が落ちそうだ。
このめんどくさい状況で仲裁役を買って出るところは俺も面倒くさいやつかもしれない。
「だとしてもあの言い方はなんなんだ。もう少し配慮とかはないのか」
村瀬の怒りが一切収まる気配がない。むしろ、ヒートアップしている。
それに、博士は配慮という言葉が一番嫌いだ。
「ああ、もう余計な一言を言いう」そう思ってももう遅い。
「配慮だと、そう言いお前が一番配慮に欠けているんじゃないのか。こんな、全員が訳が分からない状況にあるのに怒り狂うことがお前なりの配慮なのか」
そりゃそうだけど、そこで正論で答えなくてもいいじゃないか。
「なんだと、貴様」
「もうやめろって」
間に入って二人の距離を離す。
そう配慮したにもかかわらず、博士が言葉を続ける。
「正論を言われてキレるのか。滑稽なリーダーだな元生徒会長さんは!一生、ブラック生徒会のお山の大将でいろ。この木偶の坊!!」
「いい加減にしろよ。貴さまー!」
そう叫ぶと村瀬は拳を振り上げてもうすぐに殴ろうとしていた。
パーン!
「……」
カランカラン……
薬莢が机にい当たった音が響き渡る。
全員が音のなった方向を見つめている。
もう一人のおれを、水戸ミオを見つめている。