下
結末が「は?」ってなるかも知れません。。。
「あなたね!」
シャルロットが指を突きつけた先には、1人の小さな………ドワーフが座っていた。
「気づきました?えへへ。僕、1人で戻って来ちゃいました」
にこやかに笑うドワーフは、大きな鼻をほんのり赤く染めながら話す。
ぽりぽりと耳の横を掻きながら、シャルロットの顔色を伺う。
一方のシャルロットは、拍子抜けしてしまっていた。
確かにドワーフのひとりだと思ってはいたが、こんなあっけらかんとした様子で迎えられるとは、思っていなかったのだ。
なぜシャルロットがドワーフのひとりだと目星が付いていたのか。それにはちゃんとした理由がある。
「ドワーフは、7人居たわね?あなたは黄色帽子のハッピー。間違いない?」
「大当たりです!さすが、シャルロットさんですねっ」
「…褒められても嬉しくないわ。どうして戻ってきたのよ」
「それは、その………あなたのところに、いたかったからです」
「は?」
「シャルロットさん、あなたは寂しかったんでしょう?
以前ここに姫の薬を頼みに来た時、シャルロットさんは酷く苦しそうに笑っていました。
僕はその時、その理由がわからなかった。でも姫が目覚めてからわかったんです。」
シャルロットは、ハッピーをまじまじと見る。
胸の前で作った2つの拳が、心做しか震えているように見えた。
「姫は元々お城を追われた身で、森の中の僕達の家に住むようになったんです。それからはずっと一緒。
姫は来てすぐの頃、シャルロットさんと同じ顔をしていました。酷く苦しそうな顔で、笑っていたんです。
でも今は、そんな顔を長いこと見ていません。理由は気づきませんでした。
姫はシャルロットさんの薬を飲んで目覚めた後、僕達7人が並んでいるのを見て、花のような笑顔を見せました。
その時に、僕は気づいた。
シャルロットさん、あなたは」
「うるさいわよ」
冷酷な声が、小さな部屋にこだまする。
「…え?」
「いい?私の仕事は、誰かに干渉することではないの。寂しいだとか、苦しいだとか、そんな感情はいらないの」
「シャルロットさん!」
ビクッ。シャルロットは肩を震わせる。
誰かに怒ることはあったが、誰かに声をあげられることは無かった。それゆえに、シャルロットは、驚き、恐れる。
「な、何かしら」
「聞いてください」
「僕は、あなたに寄り添いたいと思った。
目的が終わったら去ってしまう客人ではなく、ずっと、死ぬまで!あなたのそばにいたい!」
「なによ、生意気ね」
シャルロットが瞬きをした瞬間、その大きな目から、一筋の涙が流れた。
「………?!なに、これ…」
「姫はもう元気になって、隣国の王子と結婚しました。僕達はまた森で働くだけ。元の生活に戻るだけ。…だけだったのですが。
僕はあなたのことが忘れられませんでした。あなたの苦しそうな笑顔を、心からの笑顔に変えたいと思いました。
ねぇ、ここに、僕を置いておいてはくれませんか?」
「……………あなたがいたいなら、勝手にそうすればいいわ」
顔を輝かせるハッピーを見て、シャルロットはどうしたらいいかわからなくなった。
シャルロットは、自分の言葉に後悔していた。
シャルロットは幼い頃、毎日のように遊ぶ友人がいた。名をララといった。
ララは人間だった。
ララが人間であったために、2人は歳をとるスピードも能力も違った。
シャルロットがまだ10のとき、ララはもう50を超えていた。
シャルロットは、幼き友が老い衰えて死にゆく姿を見ることがとても辛かった。これ以上ないくらいに。
自分はまだ物心ついて少し。ララとの差が幼いながらに痛くわかっていた。
ララが亡くなってから、シャルロットは一層魔法に励んだ。辛さを紛らわすために。
けれど一向に頭からララの存在が消えることはなく、むしろ大きくなるばかり。
シャルロットは困った。
幼い頃母が言ったことを思い出す。
「私たち魔法使いは、誰かのために働けば、その分寿命が短くなるの。…自分のために長く生きたいか、誰かのために命を削るか。それはあなた次第よ。ゆっくり考えなさい」
シャルロットは考えた。
元々長い寿命。短くなると言っても、普通の生き物よりは数倍長いはず。
長く生きる理由なんて私には無い。だったら終わらせてしまえば、ララにまた会えるかもしれない。
今になって考えてみると、そんなこと、ありえるはずがないと思う。けれどシャルロットは、そんな小さい頃の考えを疑うことなく信じてきた。
…疑おうにも、疑えないのである。自分の幼い頃の考えを疑ってしまったら、ほかに信じるものがなくなってしまうから。
そう、赤髪の魔女シャルロットは、死ぬために生きている。
あれから、シャルロットは館に住みつくハッピーをどうにもできないまま過ごしていた。シャルロットも暇ではない。いつでもトコトコと後ろをついてくる小さなドワーフひとりに構っていられないのだ。
突然後ろを向いたりしてみると、ハッピーはびっくりした顔を見せた後に、またすぐにニコニコニコニコと笑顔を振りまく。
うーん、やりづらい。
あるときの晩餐の時のこと。その日はお客さんがいた。
普通は1度しかシャルロットにお世話にならないはずなのに、なぜかもう4度目の客、リンダが来ていた。つまり常連である。
「ねぇ、シャルロット。あなた明るくなったわよね?それってこの子のおかげ?」
リンダはデザートのラズベリーソースがかかったアイスを食べながら、唐突に聞いた。
「知らないわよ」
つい目をそらす。
会話を聞いていたハッピーが嬉しそうにアイスをリンダにあげる。…調子が狂うわ。
ハッピーは、いつでも一緒だった。
どんな時も。私が1人でいたい時も。
いつの間にか、シャルロットは彼に支えられていたのかもしれない。
愛想のなかった館の主人シャルロットには、笑顔が増えた。
シャルロットが笑う時、だいたいハッピーがこう言うのである。
「ほら、やっぱり寂しかったんでしょう」
と。
シャルロットは次第にララのことを考えなくなった。忘れた訳では無い。「生きたい」と願うようになったのだ。
真実を移すことの出来る鏡、トリシアは言った。
「主人のあるべき姿を見ることが出来て、よかった」
と。
流れるはずのない涙が流れた。
「私、寂しかったのか」
シャルロットは今日も生きる。誰かを助けるために。
もしかしたらもう寿命はすぐそこまで迫っているのかもしれないが、それでもギリギリまで生きようと思う。
これが、シャルロットのお話。
は?ですよね、ほんと。久しぶりの執筆で、どう書きたかったのか少し忘れてしまって。なんて無責任なんだとお思いになるかも知れませんが、堪忍してください( ..)"
さて、妖精の羽シリーズ、ここで一区切りをさせていただきます。というのも、今新しいお話を書いていて、それを満を持して投稿するというのが現在の目標でして。
ですのでこの場を借りてお礼を言わせていただきます。ありがとうございます。
それではまた、ご縁のある時に。




