プロローグ
ふと、何もかもどうでもよくなった。
次の駅で降りなければ、会社には遅刻してしまう。
それさえもどうでもよかった。
山田はひどく疲れていた。
もう何年も、ぐっすりと眠ることはなかった。
単身赴任は、8年を超えていた。
一人の生活が結婚して家族と暮らした日々より長くなってた。
何のために働くのか、最近自問自答しても答えが見つからなかった。
"家族のため"とか最初はそう思ってていたが、繰り上げで家のローンを払ってしまうとなぜかほっとして
しまった。
300キロ以上離れた家に4時間も車を運転して帰るのも最近ではひどく億劫になっていた。
"もう いいかな" と山田は呟いた。
電車のドアが閉まった。
携帯を開くと上司のアドレスに本日は体調の不良で休むとメールを打った。
次の駅のアナウンスが、日本語の後に英語になり、中国語になったあとで山田は降り口のドアに向かった。
ドアが開いた。どっと通勤客がおり、それにつられるように山田も降りた。
桜の花が舞っていた。
4月の花冷えの朝だった。
前作より3か月。
また、書いてみます。
今度は現代のお話です。
万人受けするものではないかもしれないけれども。
大人の小説を書いてみようと思います。
どうか最後までお付き合いください。