第6話狩
まあ、出かけると言っても、家の前は、もう森だ。さすがに玄関の前は切り開いてあるし、ある程度の範囲を、木で作った柵で囲ってある。そうしておかないと、狼型のモンスターや、獣が家の周りをウロウロして煩いからだ。この程度のモンスターや獣なら、クレイの敵ではないが、安眠を邪魔されるのが、嫌だから、そうしてあるのだ。
「今日は何に出くわすかな〜」
そう言いながら、鉈を左右に振りながら、ワザと音を出しながら歩く。
そうして、モンスターが狙って出てきてくれるか、ホーンラビットのように、逃げ出すのを待っているのである。
かなり奥まで入っていくと、グルルッと、わずかな鳴き声が聞こえた。
鉈を左手に持ち替え、右手を剣にかける。
ガサッと音がするやいなや、その方向に影が移動し、一瞬で、音の前にたどり着き、鞘から抜いたと同時に、何かが、斬れる音がした。
「ファイアベアか!」
足元に落ちた、赤い毛色の、ヒグマの2倍はあろうかという、クマの頭部を見ながら言った。
「こいつら森でも、火を吐くから、火事になって、ウザいんだよね」
なんとなくシャルに言い聞かせるように、または独り言のように言った。
血抜きをしながら、毛皮と、食べられる部位だけを、マジックバックに収納する。内臓をその場に置き、少し離れた藪の中に身を隠す。
匂いにつられて来たのは、森林ハイエナであった。森の掃除屋と呼ばれ、多少腐っていても、食べてしまう獣である。
モンスターではない。ただ、家畜を狙う事も多く、森の外の村では嫌がられてる。
来たのは2匹。森林ハイエナは、多数の群れは作らない。森で多数で動くと、すぐに位置がバレて獲物に逃げられるからだ。
2匹の場合は、たいがい兄弟か、ツガイである。体の大きさから見て、親離れしたばかりの兄弟であろう。大人なら、警戒して、こんなすぐには、姿を現さない。
森林ハイエナの爪は、薬の素材になるらしく、村では高値で売れる。
クレイは、素早く藪から飛び出て、あっという間に、森林ハイエナの首を斬り落とした。