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陸上自衛官の一日

作者: 滝沢 時雨

何者にも縛られず。

それが願いで、それが叶えばどれだけ楽なことか。なのに現実はそうはいかない。そうだろう?何が好きでこんなことをしているのか。考えただけで嫌気がさす。誰か教えてくれるなら教えてほしい。で、だ。いつになったら掘れるんだこの穴は?

「さっさとしろよ陸士。掩体構築すらできねえのか?エンピの使い方から教えてやろうか」

そうやって、わざわざ小言でも言いに来たんだろう。だが結構、こんな岩石だらけのところで何度防御先頭を繰り返したことか。つかの間の睡眠をとっては敵襲を喰らい陣地変換を続けてきた。

「味方のレコンは仕事してるんすか。これじゃいつまでたっても砲弾が落とせない重迫がいる意味もない特科支援の意味もない。津ケ谷三曹こそ現場確認ばっか来る余裕があるなら、手伝ってくれてもいいんすよ」

普通だったらありえないようないいわけだが、俺はざらにいる問題児…もとい意識高い陸士だから言えちゃうのである。

「この雑魚陸士が!」

思いっきり頬をぶん殴られて吹っ飛ばされる。どれだけ疲労困憊でも痛みに関しては未だ神経は敏感でまだ生きてるんだなってことを実感できる。もういい加減一度状況中止して半長靴を脱ぎたい。いつまで隊長は戦わせる気なんだ。

佐藤陸士長。敬愛をもって後輩の陸士からはこう呼ばれていたと思いたい。先輩だけでなく部下からも嫌われていたら、この仕事続けてる理由ってあるのか?って悩んじまう。

専門は軽火器で第○0連隊の第1中隊にいる。隊舎では常日頃営内班長にぶっ飛ばされ後輩に脱柵の支援を真剣に検討してもらったり、訓練中でもこうして厄介な陸曹達に目をつけられ吹き飛ばされる、いわば囮として機能していた。

まもなくして状況は終了されて俺たちの戦闘訓練は終わりを告げた。自衛隊の訓練として準備→侵入→訓練→撤収→整備。つまりこれから撤収して明日以降整備。はぁー災難ですわぁ。

掘った穴を泣く泣く埋めながら訓練の痕跡をなくしていく。せっかく作ったのにそれをわざわざ直すって、本当自衛隊はドМの集まりとしか思えない。演習場管理官の検査を受けよし帰るぞって時に管理官の三等陸佐が俺の真横を通り過ぎ靴に唾を吐いていった。なんてチンカス野郎だ?そう思って顔を見るとびっくり、新教時代の教育隊長だった。度重なる問題を立て続けに起こし教育隊追放一歩手前まで行った俺のことを色濃く覚えていたんだろう、そんなに恨まなくてもいいじゃないですか、ね?

とにもかくにも俺にだって人権はあると思うしなんでもかんでもできないやつを責めるのはよくない!揺れる3トン半大型トラックの中で俺はそう結論付けた。途中駐屯地に付くまでに何度かエンジンと待ってDSだりいい!とかおい止まったら佐藤全部機材運んで歩けよ!とか陸曹からの有り難い小言を貰い帰隊した。本当に、しんじまえ。

あらかた段落がついたところで営内ではいつものように部屋長の俺と同じ部屋の奴と対談が開催されている。頭悪そうな会議してんなあとか評されるが気にはしない、いやするけど。

「そんなこと言ったって佐藤陸士長。寝る子は育つとか言って歩哨中にいきなり寝るのはレベル高すぎですよ」

後輩の一等陸士が俺にありがたくも忠告してくれた。確かに、でも二人で警戒する意味なくね?休んでたほうがよくね?とか言って問答無用で殴られた俺は一体何割くらい悪いんだ?

「10割に決まってんだろうが!おい佐藤そこにいんのか!?」

ドアは閉まった状態のに声だけ漏れていたのか怒涛の罵声を投げつけて営内班長のお出ましとなった。結構向こうから歩いてきてるのに足音がやけにうるさいし特徴的だ。たぶんみんな嫌いなはず。

「おい立木!マジ今からかくれっから時間稼げよ!絶対言うなよ!」

そう言って隅に寄せられているカーテンと窓枠の隙間を使って隠れる。日本人みんな忍者だ、ああ。問題ねえ。

「頭悪…」

そう立木一士は呆れながら入ってきた営内班長の相手をした。


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