おかん系彼氏のすすめ
「人参〜!きらい!!」
私は口元にある人参に睨んでわめいた。
「はいはい。食べないと今夜の花火大会はないよ」
「…食べる!」
和斗は私の食べないぞと閉じている口に人参をおしつけながら軽くおどしてきた。花火大会には行きたい!!と、おそるおそる口を開く。
「食べた!食べたよ〜!」
人参を飲み込んでから和斗に向かって自慢した。すごいでしょ、と腰に手をあてて胸をそらす。
「よかったね。…はい、ポニーテールしてあげるからこっちにおいで」
和斗は、私の自慢をさらりと流し、床に座って足を広げた間をぽんぽんとたたいた。
「はーい」
流されたことにすこしだけむくれながらも、おとなしく和斗のところに座る。そうすると、もう何も思わなくなるから不思議だ。私は機嫌が良くなってきて歌を歌いだした。
「恋しくてー切なくてー♪」
「…はい。できた」
私が一曲か二曲を歌い終わる間に手早くポニーテールを作った和斗が満足げに言った。
「ありがとう〜和斗。さぁ、行こう!」
私は和斗にお礼を言うと玄関までかけて行った。
「虫除けスプレー、ちゃんとしろよ〜」
「月が綺麗だね。今日は花火も綺麗だろうなぁ」
私は和斗と手をつなぎながら花火会場まで歩いて向かって歩いていた。
「ほんとに綺麗だな。…あ、みき。上ばっか見てると転ぶぞ」
「うん!大丈夫だよぉ〜。きれいな月だね。かぐや姫も今日の花火見て…きゃっ!」
和斗の注意をながして、そのまま空を見ながら歩いていたら案の定足元の石につまづいた。
「…っと。みき、大丈夫か?」
「うん!ありがと、和斗」
「気をつけろって言ったろ」
「ごめんなさーい」
転ぶ、と思ったところを和斗が上に引き上げてくれた。呆れたようにいう和斗にやっちゃったと思うものの、花火大会の会場が見えたので気にせず走り出した。
「ほら、みき!足元!」
和斗が言ってても気にしない。
少し離れたところで、くるっと和斗の方を向いて叫んだ。
「和斗!…大好き!!」
和斗と一緒にこれて、一緒にいれてすごく幸せだという事を和斗に伝えたかった。
いつまでも、いつまでも和斗と一緒にいれますように、夜空に咲く大輪の花達に祈った。
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