表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある一族の物語  作者: 岸野果絵
シンシア
47/64

(過去話・番外編 )ある日の執務室

 執務室の扉がいきなり開き、レイラが入ってきた。

 書類に目を通していたレクラスは静かに顔を上げる。

 

「レクラス。シンシアの進捗状況はどうじゃ?」

 レイラは机の前にやってくるとそう尋ねた。

「順調です。あと2回ほどお教えすれば完了するかと」

 レクラスは書類を手にしたままこたえる。

「そうか」

 そう短く返答したレイラは、何か言いたげにレクラスをジッと見おろし、そのままその場に立っていた。

 

「彼女は素晴らしい素質をお持ちですね」

 レクラスは書類を置くと、そう言って微笑んだ。

「そうであろう。そうであろう」

 レイラは満足そうに目を細め、大きく頷く。


「姉上。私はシンシアを妻に迎えたいと考えております」

 レクラスの言葉に、レイラは満面の笑みを浮かべた。

「おお、そうか。シンシアは良いむすめじゃ。うむうむ。あの娘ならば、我がザルリィディア本家の嫁として申し分ない。妾にも異存はないぞ。それどころか、大賛成じゃ」

 レイラはニコニコしながら机の上に身をのりだし、手を伸ばしてレクラスの頭をワシャワシャと力強くなでまわした。

 レクラスはじっと動かずに、されるがままになっていたが、レイラが頭から手を離すと、

「後は、彼女が私を受け入れてくれるかどうかです」

 と、ぐちゃぐちゃにされた髪を整えながら、静かにそう言い、視線を落とした。


「ん? そちにしては弱気じゃのぅ。命ずることもできるのじゃぞ?」

 レイラは上半身を机の上にのせたまま、至近距離でレクラスの顔をまじまじと覗き込んだ。

 レクラスは視線を上げると、レイラの顔を真っ直ぐに見た。

「いいえ、姉上。私は彼女に強要するつもりはありません。彼女の意思を尊重します」

「そうか。本気なのじゃのぅ」

 レイラは目を細め、ニヤリとしながら言った。

「はい」

 レクラスは静かに頷いた。

 

「まあよい。好きにいたせ。妾には男女だんじょのことはよう分からぬし、興味もない」

 レイラはそう言うと、机から降り、プイッと向きを変え、出口の方へと歩き出す。

「どの口が……」

 レクラスがレイラの後ろ姿を眺めながら呟いた。

「ん?」

 レイラは首をかしげながら振り向いた。

 

貴女方あなたがたにはかないません」

 レイラは、静かにそう言ったレクラスの方につかつかと戻ってくると、眉を上げ、

「当然じゃ。妾はともかくも、母上様は策士じゃからのぅ」

 と言ってレクラスを見おろした。

「全くもって」

 レクラスはため息交じりに同意する。

 レイラはニヤリと満足そうな笑みを浮かべると、目をカッと見開き、

「レクラス。シンシアは特別な娘じゃ。大切にするのじゃぞ」

 と、真剣なまなざしで命じた。

 レクラスは「はい」とレイラをジッと見返しながら返事をする。

 レイラは表情を緩めた。レクラスもほぼ同時に緩める。二人は同時に視線を落とすと「ふふっ」と笑みを浮かべた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ