(過去話・番外編)ティータイム
レクラスは紅茶を飲みおえると、早々に帰っていった。
「まったく、減らず口を叩きおってからに……」
レイラはスコーンをかじりながら憎々しげに呟やいた。
シンシアはそんなレイラの様子を窺いながら、極力気配を消して、静かに紅茶を飲んでいた。
と、レイラがシンシアの方を向いた。シンシアはなかば反射的にニッコリと微笑んだ。
レイラは満足そうに微笑むと、シンシアに向かって語り出した。
「今でこそあのようにとり澄ましてはおるが、昔のあやつは泣き虫でのぉ。『姉上、おやめください~』と情けない声を出して、ようべそをかいておったのじゃ。そこがまた可愛うてのぉ……」
レイラは懐かしむように目を細めながら口元に手をやると、鈴が転がるような声で、さも楽しそうにコロコロと笑った。
レクラスが「おやめください」と言っていたということは、レイラが何か仕掛けたということではないのだろうか。しかも、レイラの今の様子からすると、泣いて嫌がっているにもかかわらず、面白がってやめなかったのではないのか。
そう気がついたシンシアだったが、それを指摘する勇気はなく、ただただレイラに迎合するように愛想笑いを浮かべていた。
「シンシア、心配するでないぞ。レクラスは妾より、まだまだまだまだ未熟じゃが、結界術やシールドに限っては、妾の一枚、いや、二枚も三枚も上手じゃ」
レイラは安心させるかのように、シンシアに優しい笑みを投げかけた。
どうやらレイラはシンシアがレクラスの指導を不安がっていると勘違いしたようだった。
シンシアはとりあえず愛想笑いを続行させる。
「まぁ、それもこれも、妾のお蔭じゃがのぉ」
レイラは眉を上げてそう言うと、瞳の奥を怪しく光らせながら「ふふふふふふふ」と低い声で笑った。その表情は、レイラが魔物や魔獣相手に容赦なく攻撃魔法を繰り出すときのそれだった。
レイラが過去に何をしたのかなんとなく察しがついたシンシアは、レクラスを気の毒に思いながらも、ニコニコと微笑むしかなった。




