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ある地域に伝わる伝承
夜の女神は眠っていた。
何度呼びかけても、女神の瞼はついに開くことはなかった。
名も無きいにしえの神は、崩れるように膝をついた。
「この粗忽者め。なぜ、我の戻りを待つことができなかったのだ」
女神の長い睫毛が、微かに揺れた。
「愛しい妻よ。もう二度とそなたの慎ましくたおやかな声をきくことは叶わぬのか。その可憐な美しい瞳を見ることは叶わぬのか」
名も無きいにしえの神は、女神の美しい寝顔を見つめながら嘆いた。
閉じられた女神の目尻に涙が浮かぶ。
悲しみの涙は『夢幻の湖』に流れ落ちた。




