表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある一族の物語  作者: 岸野果絵
レイラ
20/64

雷雨

 夕方から降りはじめた雨は、夜になるにつれ、雷を伴った、激しいものとなっていった。


 レクラスは布団を頭からかぶって震えていた。

カーテンを閉めているにも関わらず、時折、外の稲光が室内を照らし、ドドンという爆音が腹の底にまで鳴り響く。

 レクラスは雷鳴が轟く度に、身体をかたくした。


 怖かった。

 稲光や雷鳴も怖くないと言ったらウソになる。

しかし、レクラスが恐怖を感じていたのは外の物音ではない。

 雷鳴とともに微かに聞こえる、隣の部屋からの物音と気配が、レクラスの恐怖心をかき立てるのだ。

 轟く雷鳴に紛れ、何かが叩きつけられるような音がする。

ガラスの割れるような音も聞こえてくる。

 唸る雨風の音に隠れて、悲鳴のような、何かを引き裂く音が聞こえてきた。


 隣の部屋の住人ーー姉のレイラの身に、一体何が起こったのだろうか。


 夕食の時のレイラは、一見、いつもと変わらない雰囲気だった。

 しかし、レクラスは姉の微笑みの奥に、底知れない何かを敏感に感じ取っていた。

寝ている猛獣の檻の前にいるような、息が詰まり、心臓がぎゅっと掴まれるような感じ。

それは本能的な恐怖だ。

 レクラス以外は誰も気がついていないようだった。

そのことが、さらにレクラスの恐怖心を煽った。


 ふと、風音が止んだ。

隣からの物音も聞こえなくなった。

 レクラスは恐る恐る布団から出た。


 カーテンがふわりと揺れ、何かの陰が見えた気がした。

レクラスは好奇心に負け、ゆっくりと窓際に向かった。

 震える指先で、カーテンを軽くつまみ、できた隙間から、外を覗いた。

視界の端に、魔力の輝きが揺らめいた。

息をひそめながら、ゆっくりと視線を、そちらの方向に動かした。


 隣の部屋のバルコニーに、誰かが立っている。

解放された魔力が燐光のように、淡く青白く燃えている。

滝のようにふり続ける雨の中で、ずぶ濡れにもかかわらず、振り乱した髪がゆらゆらと宙に浮かんでいる。


ピカッ


 閃光が走り、一瞬だけ昼間のように明るくなった。

血走った眼を大きく見開き、口元はまるで笑っているかのように歪んでいるレイラの横顔が、レクラスの視界に飛び込んできた。

レクラスの息がとまる。


ズドーン


 地面が割れるような爆音が響いた。

 レクラスは我に返り、飛び上がるように窓から離れると、這いつくばるようにして、布団を掴み、ベッドの下に潜りこんだ。

歯がガチガチなってしまうのを必死で押さえ込む。


 その晩、レクラスは一睡もできず、ベッドの下で息を殺していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ