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次の日。
シャレルの部屋から出てきたエルフィードは、セイムやコートネイに昼過ぎになるまで叱責を受けた。
「未婚女性の部屋で一晩過ごすなんて…!!いくらお嬢様が許したからと言っても非常識でございます!」
朝一に言われた言葉を、昼までに何度セイムに言われたことか。
シャレルが何度も庇ってくれたが…それでも、セイムの叱責は終わらない。
今日一日、この叱責を受けるのだろう。いや、一日で済めば良いのだが…とエルフィードは朝から繰り返している反省の弁を述べた。
「セイムが怒るのも分かります。エルフィード様にはもう少し、常識ある行動を取って頂きたいものです」
感情的になるセイムと違って、コートネイからは、朝から笑顔で嫌味を言われ続けている。
セイムよりも、こちらの方が手ごわい気がする。
エルフィードは溜息をつきながら、昼食のスープを口に運んだ。
そんなエルフィードの隣の席で、シャレルが小さく丸まって俯いている。
「…ごめんなさい」
昼食に手をつけず、シャレルはぎゅっと唇を噛み締めた。
大切だから手を出さないと言ってくれたエルフィード。
そんなエルフィードだけが怒られる。
自分にも非がある、といくら訴えても、セイムもコートネイも…シャレルには何も言わなかった。
それが余計に心苦しかった。
「シャレル、いいんだよ。悪いのは俺だから」
「私も悪いわ…なのに、エルばっかり怒られるなんて」
「結婚する時はね、夫は妻の両親に結婚の許しを請うんだよ。俺の父も、母の両親からは色々と言われたそうだよ。俺にはそれが無いから…これも通過儀礼みたいなものだ。むしろ、楽しいぐらいだよ」
俯くシャレルの髪をそっと撫で、エルフィードが笑顔を見せた。
ようやくシャレルの表情が明るくなる。
「そうですよ、お嬢様!ご結婚する時は…あ、あら?」
「…エルフィード様、ご結婚されるのですか?お嬢様と?」
セイムとコートネイが目を丸くして、エルフィードを見つめてくる。
どういうことだ、と説明を求める二人に、エルフィードは少し照れたように笑った。
「だから言っただろ、責任は取るって。手は出して無いけど」
朝一の叱責からずっと言い続けていた「責任は取る」という言葉。
どういう意味かあまり深く考えずに、セイムもコートネイも叱責を続けていた。
その意味がようやく分かり、二人は顔を見合わせた。
「ちゃんとラベルト貴族の作法に則って申し込むから、まだ正式な婚約では無いけど」
ラベルトでは、白い一本の花に、白いリボンを巻き、女性に手渡す。
それには、後日、結婚を申し込むという意思が込められているのだ。
その花を贈った数日の後、正式に指輪を用意し、改めて結婚を申し込み、女性がそれを受ければ婚約となる。
女性は花を贈られて、指輪を貰うまでの数日間、結婚の申し入れを受けるかどうかを考える時間があるというのだ。
「まあ!早くお花をご用意しなくては!」
「待った甲斐があります。早くご準備を進めましょう」
セイムとコートネイの態度は一変し、上機嫌でああだこうだと楽しげに話を進めてくる。
それに頷くエルフィードの横で、シャレルは満面の笑みを見せた。
セイムやコートネイも賛成してくれている。
シャレルはそのことが何より嬉しかった。
昼食が終わり、午後の時間をエルフィードはシャレルと二人で二階のバルコニーでお茶を楽しみながら過ごしていた。
「…相変わらず…薄い茶だ」
「蒸らす間、隣にいてくれたら…ちゃんと淹れられるわ」
口を尖らせながらシャレルは、エルフィードのカップに再びお茶を注いだ。
「…私、本当に…エルの奥さんになれるの?」
「それはシャレルが選ぶことだよ。花を贈った後、よく考えてくれればいいよ」
「…もう決まってるのに」
もどかしくてたまらない。
選ぶなんて言われても、シャレルの選択肢は一つしかない。
ずっと、焦がれてきた相手の妻になれるなんて、幸せすぎて胸が苦しい程だ。
そんな話をしていた時…俄かに外が騒がしくなってきた。




