表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖怪町騒動  作者: 鈴鳴月
鴉橋
21/24

19

本当に長らくお待たせした上に短いと言う踏んだり蹴ったりな状況ですが、それでも読んでくれる方はどうぞ

「鴉、橋」

 灸はそう独りごちた。

「はい、鴉橋です。ほら、橋の色が鴉の濡れ羽色でしょう?」

 便はそんな灸の手を引き手を引き、橋の前まで連れて来る。

「この先はどこに繋がっているんだ?」

 ぴこぴこと興味深そうに尻尾を動かしながら、灸。

「やぁ、それは行ってからのお楽しみってことで」

 にんまりと悪い笑いをしながら、便。


 結果。

「いふぁいいふぁいいふぁいいふぁい」

 手の早い灸に両(ほほ)を引っ張られながら半泣きの便の出来上がり。

「もう、痛いなぁ……もっと優しくして下さいよ、ねぇ」

 くねくねくね。

「正直お前にそのポーズをとられると私の鉄拳が唸るのだが」

「止めて下さいお願いします」

「なら早く教えろ」

 キラリンと灸の目が輝く。何だかんだ言っても、灸はこの手の話題がたまらなく好きなのだ。そこがまたこの手の話題に付け入られる隙を生むのだが。

「分かりましたよぅ。えっとですねぇ、ご主人様によりますと此処鴉橋を渡った者は二度と帰ってこないとか」

「駄目じゃないか」

「でもご主人様のご命令ですもの。ご主人様は、灸様に多大なる期待を寄せておいでですの。鴉橋を無事渡る事、そして戻ってくる事が出来ると固く信じているのです」

 思いがけず真剣な顔でそう言われた灸は、目をぱちくり。


 そして、

「や、そんな事を言われずとも最初から渡るつもりでいたのだが。ふむ、面白い。そう言う事ならあの変態の期待に応えてやらんでもないな。ふむふむ」

 などと表面上は冷静に返しておきながら、耳がぴこぴこ、尻尾がぱたぱた。嬉しいのである。

 まあ、それはそうだろう。たとえ変態であろうと自分のことを手放しで褒めてくれているのだ。嬉しくないはずが無い。

「では行って来ようぞ。便、お前はここで見ているが良いぞ。私の勇姿、とくと見せてやろう」

 ぱたぱたぱた。激しく尻尾を振りながら意気揚々と鴉橋を渡っていく灸の背を見ながら、便は呟いた。


「分っかりやすっ」



 そうやって鴉橋の半分程まで来た灸だが、そこでふと立ち止まった。

「そうだ。一度下の大河を見てみよう」

 何てこと無い思いつき。しかしそれは妙案であった。

「何だ、これは」

 橋の下を覗き込んだ灸の目に、橋げたから明らかに飛び出している棒のようなものが見えた。

 とりあえず手を伸ばしずるりと抜き取ってみると、それはただの手首ほどの太さの黒い棒。

「うー……む」

 抜き出した四十センチほどの真っ黒い棒を眺めてみた灸だが、別段それには変わった様子は無い。

「まあ、何かの役に立つこともあるだろう」

 こういったことにそこまで悩まない、それが灸の良いところ。なのかどうかはさておき、灸はまた橋を影しか見えない目的地に向かって歩いていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ