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異世界転生

ガキの頃から、一丁前な夢を見るばかりだった。

戯言を抜かし、ひたすらにあるかも分からぬ自分の潜在能力にあぐらをかくばかりだった。

“やればできる”そう言い聞かし、自分で自分を甘やかし、結局やることもしないまま、所謂ブラック企業に就職。

そのくせ無駄にプライドが高いものだから、上司の忠告やら助言やらを、ことごとく右から左へと聞き流す日々だった。

かと言って、そのプライドを裏付けるほどの何かを持つ訳でもなく、そういった特筆すべき趣味も特技もない。

ただ何の生産性もなくアニメを見る。

菓子を貪り、時に酒を飲みながらアニメを見る。

それが俺の趣味であり、生きがいだった。

そんな俺だから、次第にこう思うようになった。

“異世界転生したい”と。



「この資料お願い。今日中にね。」

そう言って渡されたのは、ペラペラのA4用紙1枚に簡単な説明が書いているものだ。

「あ、はい。」

俺の仕事はこの紙1枚の校閲。

いわゆる窓際族だ。

仕事自体は5分もあれば終わる。

にもかかわらず、それすらもギリギリまでやらない。

それが言うまでもなく窓際の答えだ。

しかし、人の目はある。

対して面白くもないフリーセル、知恵袋なんかをコソコソと開くのもめんどくさい。

では、私は何をしているのか。

ただ、ぼーっと考えているのだ。

“なぜ生まれているのか”だとか、

“なぜはたらくのか”だとか、

そういった哲学が好きなのだ。

こういうのには答えがない。

こんな落ちぶれた私でも、名のある者たちと同じ土俵に立てている気がするのだ。

そうこうしているうちに、定時の時間が近づいてきた。

俺は仕事に取りかかった。



「お先失礼します。」

俺はそう言うと軽く一礼した。

会社にはタイピングの音だけが響く。

俺はそそくさと会社を退勤した。

今日は華の金曜日である。

街は、これから来る賑わいに備え、既に忙しそうである。

ワクワクを孕む街は、俺のようなものを歓迎していない気がしてやまない。

いたたまれなくなった。

私はおもむろに、スマホを取り出した。

イヤフォンも取り出し、耳につけ、ノイズキャンセリングをONにした。

俺はこの現実から逃げようとした。

代わりにスマホに映し出されるこの非現実に夢中になった。

夢中になりすぎていた。

気づいた頃には遅かった。

「ブォォォォン!」

イヤフォン越しに伝わるその音に顔を向けると、そこには大型トラックの顔があった。

走馬灯、スローモーションに見える。

死ぬ前にはそんなことが起きると言われている。

起きなかった。

一瞬だった。

起きると言われていることすら起きなかった。

実に俺らしい最期だった。







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