第8話:高校卒業と、ついに始まる株ライフ!
※本話は【卒業式と図書館七不思議】の回です
春一番が吹く神流学園。
俺と槙原は、ついに高校卒業の日を迎えた。
「お~、ついに卒業だな。俺たちも。な、楔」
「ああ。まあ受験もないし、あんまり実感ないけどな」
「俺も大学部への内部進学だしな」
「大学でもよろしくな、槙原」
「こちらこそ。ところで楔、進学したら株投資するのか?」
「ああ。証券会社に登録する準備も整ったし、始める予定だよ」
天気はいいが、校内には強い風が吹いている。
卒業式の日なのに、泣いている生徒は思ったより少なかった。
ほとんどが内部進学だから、別れの実感が薄いのだろう。
「楔~、槙原さん! 卒業おめでとうございまーす!」
美玲が、いつもの明るい声で駆け寄ってくる。
「おう、ありがとうな」
「第2ボタン、ゲットするよ~!」
「やめろやめろ。そもそもうちは学生服じゃないだろ」
「なんか二人、漫才コンビみたいになってきてない?」
「気のせいだよ。それよりさ……未来の株価を記した本が、図書室に一時置いてあったって本当か?」
「うん。でも気づいたら、なくなってたらしいよ」
「そっか。じゃあ卒業したら、一度図書館寄って調べてみるかな」
「私も行くー!」
「遊びに行くんじゃないぞ」
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高校の図書館からの帰り道。
俺と美玲は、神流学園の“七不思議”について話していた。
「高校にも、意外と七不思議あるよな。まあ、俺が勝手に認定してるのも含めてだけど」
「噂ばっかりだから、どれが本当かわからないよね」
「とりあえず、今わかってるのはこれくらいか」
図書館の蔵書量が異常に多い(経済・株投資本)
未来人が持ち込んだ、株価の急変が記された本
高校のPCルームに貼られた株・優待のおすすめサイト
大学教授(または高校教師)の予言がなぜか当たる
正門の隅に置かれた謎の銅像(後に二宮金次郎像と判明)
「未来人の本なんて、使えたら人生変わりそうだよね」
「教授の予言は、ふわっとしてるから当たりやすいだけだけどな」
「PCルームの張り紙は楔が認定してるだけだし……今のところ五つ?」
「あと二つか。人によっては別の7不思議持ってくる人もいるだろうし。美玲は何か思いつく?」
「大学内で、一定額以上投資したら禁止されるルールとか?」
「大学の規則に載りそうだな」
「楔は?」
「学園近くの八百屋が、“株投資協賛セール”で平日はカブが半額になる、とか」
「主婦が殺到しそうだね。物価高だし」
「まあ、大学に行って新しいの見つけたらLINEするよ」
「それ以外でもしてほしいな~。楔、マメじゃないもん」
「それ言うなって……できるだけするよ」
「楔、先に大学行くけど、待ってるからな」
「うん。先に行って待ってて。その頃までには、株も少しはわかるようにしておくから」
そう約束して、俺たちは別れた。
……まあ、ちょくちょく会う予感はしているけど。
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家に帰ると、すぐに葵が突っ込んできた。
「お兄ちゃんおかえり~。ちゃんと美玲さんと“別れて”きた?」
「待て待て。別れじゃないだろ。たぶんまた会うぞ」
「ごめんごめん。でも次はお兄ちゃんから連絡してあげてよ?」
「美玲にも言われたよ」
「ほらほら、そこまでにして。赤飯置くわよ~」
「赤飯!?」
「受験の実感ないでしょ? せめて食事で感じなさい」
「お~、うまそうじゃないか」
食後、父さんと一緒に日本人メジャーリーガーのドキュメントを見ていた。
「もう卒業か……楔が下宿に行ったら、話を聞いてくれる人がいなくなるのは寂しいな」
「父さん、私がいるよ」
「葵!? 本当か?」
「うん」
「そうか……じゃあ楔、最後に一言だけ言わせてくれ」
父さんは少し照れながら言った。
「――お前の行く予定の“広い世界”の扉は、もう開いている。
飛び込んで、結果を出してこい」
「分かった。頑張ってくる」
「成長して帰ってくるのを待ってるぞ」
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そして今、俺は下宿先の前に立っている。
古いが、住むには十分なアパートだ。
カップラーメンをすすりながら近づいてくる人がいた。
「君、見たことない顔だけど、ここに住む予定の人?」
「はい。今日からお世話になります。石動楔です」
「そうか、俺は中池睦夫。これ、やるよ」
「金ちゃんラーメン!? 初めて見ました」
後にこの人とは、“WIN-WINの関係”になる予定だ。
部屋に入り、もらったラーメンをすすりながら、俺は思った。
――ここから、始まるんだな。




