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ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
高校生編

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6/8

第6話:ショッピング時の優待券の使いみち(後編)

※本話は【ショッピング・デート】の回です

俺と美玲は、アウトレットのフードコートで少し遅めの昼食を取っていた。

 店はカゼッタ・ディ・カプリ。パスタとピザをシェアして食べている。


 ちなみに俺は痩せているが大食いだ。

 美玲は……正直、よく分からない。


「ふぅ、ちょっと休憩。アウトレットのフードコートっておしゃれなんだね」


「え、こんなもんじゃないの?」


「あ~、楔は家族でよく出かけてるから慣れてるのかな?」


 美玲の椅子の横には、いくつか紙袋が並んでいた。


「けっこうたくさん買ったな~」


「でも楔のくれた優待券で、けっこう安く買えてよかったよ。

 楔はその黒の秋物のコートとデニムだけでいいの?」


「あぁ、これでも買った方だぞ。デニムのズボン、初めて買ったし」


「そっか」


 美玲は満足そうにうなずいた。


「さぁ、次どこ行こうかな?」


「店は決めずに、小物とか雑貨を見て回るか?」


「賛成~!」


 アウトレットモールには、雑貨や小物類もたくさんある。

 通路の中央にはワゴンが並び、アクセサリーや日用品が所狭しと置かれていた。

 もちろん、各店舗の中にも山ほど商品がある。


「わ~、楔。サングラス似合うね~」


「美玲も、そのピアスいい感じするぞ」


 何気ないやり取りの中で、美玲がふと足を止めた。


「ねぇ、楔」


「ん?」


「……私のことって、好き?」


 ――あ、変な弾が飛んできた。


 どう答えるか一瞬迷ったが、誤魔化すのは違う気がした。


「好きだよ。

 その明るさに救われたこと、何度かある」


「うんうん♪」


「でも、それが恋としての好きなのか、幼馴染としての好きなのか……

 正直、まだ分からない」


「そっか。でも今は、それ聞けただけで嬉しい」


「……そっか」


 美玲はそれ以上何も言わず、また歩き出した。


 その後、妹や父さん、母さんと合流し、なぜかがっつりしたステーキ屋に連れて行かれた。

 父さん、昔から肉好きだって言ってたけど、本当だったんだな。


 妹からは当然のように色々突っ込まれ、

 そのせいで肉の味が一瞬分からなくなった。


 それでも、父さんの言葉はステーキハウスでもきっちり締まっていた。


 帰りの車内。

 起きているのは、俺と父さんだけだった。

 母さんと葵、美玲は後部座席で気持ちよさそうに眠っている。


 高速道路を走り、FMラジオが小さく流れている。

 俺もだいぶ眠くなってきた。


「ふあああ……」


「眠そうだな。ミンティアならここにあるぞ」


「あ、もらうよ。なんだか濃い一日だったから」


「アウトレットに行けば、そうなるさ。

 どこの家族も、楽しくて濃い一日を過ごして帰っていく」


「ほんと、みんな笑顔だった」


「余裕のない人は、ここには来ないだろうな」


 日が落ち、周囲はゆっくり暗くなっていく。


「どうだ、優待券は使ったか? 便利だったろ。

 でも、それだけじゃないって気づいたか?」


「え、それってどういう……」


「考えてみるんだ。そのうち分かる」


「……分かったよ、父さん」


「その答えは、もっと広い世界に出て探すんだ。

 お前が今日見たのは、裕福で幸せな家族の姿だけだ。

 それ自体は、悪いことじゃない」


「……まだ、世界のいい部分しか見えてないんだな、俺は」


 ラジオから、ゆずの曲が流れていた。


「株をやっていると、大勝ちして、

 もっと利益の高い投資に手を出す人もいる。

 その時点で、もうリスクが見えていない」


「……」


「失敗して、破滅していく人もいる。

 そういう現実を、お前も大人になって知っていく」


「分かった」


「株投資ってのはな、数万円儲かることもある。

 でも油断するな。それは落とし穴でもある。

 儲けてガッツポーズしたら、その儲けはいったん忘れろ」


 父さんの話は、高校生の俺にはまだ分からない部分も多かった。

 それでも――忘れちゃいけない気がした。


「ところで、美玲ちゃん可愛くなったな。

 明るいし、あの子モテモテじゃないのか?

 いいのか~、ここで好きって言わなくて」


「父さん、このタイミングでその話!?

 美玲、起きちゃうだろ……。

 ……好きは好きだよ」


「なら、なんだ?」


「俺にも、まだよく分かんないんだ」


 父さんとの会話を続けながら、

 車は静かに家へ向かっていった。


 時折、サービスエリアの明かりが、窓の外を流れていった。

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