第6話:ショッピング時の優待券の使いみち(後編)
※本話は【ショッピング・デート】の回です
俺と美玲は、アウトレットのフードコートで少し遅めの昼食を取っていた。
店はカゼッタ・ディ・カプリ。パスタとピザをシェアして食べている。
ちなみに俺は痩せているが大食いだ。
美玲は……正直、よく分からない。
「ふぅ、ちょっと休憩。アウトレットのフードコートっておしゃれなんだね」
「え、こんなもんじゃないの?」
「あ~、楔は家族でよく出かけてるから慣れてるのかな?」
美玲の椅子の横には、いくつか紙袋が並んでいた。
「けっこうたくさん買ったな~」
「でも楔のくれた優待券で、けっこう安く買えてよかったよ。
楔はその黒の秋物のコートとデニムだけでいいの?」
「あぁ、これでも買った方だぞ。デニムのズボン、初めて買ったし」
「そっか」
美玲は満足そうにうなずいた。
「さぁ、次どこ行こうかな?」
「店は決めずに、小物とか雑貨を見て回るか?」
「賛成~!」
アウトレットモールには、雑貨や小物類もたくさんある。
通路の中央にはワゴンが並び、アクセサリーや日用品が所狭しと置かれていた。
もちろん、各店舗の中にも山ほど商品がある。
「わ~、楔。サングラス似合うね~」
「美玲も、そのピアスいい感じするぞ」
何気ないやり取りの中で、美玲がふと足を止めた。
「ねぇ、楔」
「ん?」
「……私のことって、好き?」
――あ、変な弾が飛んできた。
どう答えるか一瞬迷ったが、誤魔化すのは違う気がした。
「好きだよ。
その明るさに救われたこと、何度かある」
「うんうん♪」
「でも、それが恋としての好きなのか、幼馴染としての好きなのか……
正直、まだ分からない」
「そっか。でも今は、それ聞けただけで嬉しい」
「……そっか」
美玲はそれ以上何も言わず、また歩き出した。
その後、妹や父さん、母さんと合流し、なぜかがっつりしたステーキ屋に連れて行かれた。
父さん、昔から肉好きだって言ってたけど、本当だったんだな。
妹からは当然のように色々突っ込まれ、
そのせいで肉の味が一瞬分からなくなった。
それでも、父さんの言葉はステーキハウスでもきっちり締まっていた。
帰りの車内。
起きているのは、俺と父さんだけだった。
母さんと葵、美玲は後部座席で気持ちよさそうに眠っている。
高速道路を走り、FMラジオが小さく流れている。
俺もだいぶ眠くなってきた。
「ふあああ……」
「眠そうだな。ミンティアならここにあるぞ」
「あ、もらうよ。なんだか濃い一日だったから」
「アウトレットに行けば、そうなるさ。
どこの家族も、楽しくて濃い一日を過ごして帰っていく」
「ほんと、みんな笑顔だった」
「余裕のない人は、ここには来ないだろうな」
日が落ち、周囲はゆっくり暗くなっていく。
「どうだ、優待券は使ったか? 便利だったろ。
でも、それだけじゃないって気づいたか?」
「え、それってどういう……」
「考えてみるんだ。そのうち分かる」
「……分かったよ、父さん」
「その答えは、もっと広い世界に出て探すんだ。
お前が今日見たのは、裕福で幸せな家族の姿だけだ。
それ自体は、悪いことじゃない」
「……まだ、世界のいい部分しか見えてないんだな、俺は」
ラジオから、ゆずの曲が流れていた。
「株をやっていると、大勝ちして、
もっと利益の高い投資に手を出す人もいる。
その時点で、もうリスクが見えていない」
「……」
「失敗して、破滅していく人もいる。
そういう現実を、お前も大人になって知っていく」
「分かった」
「株投資ってのはな、数万円儲かることもある。
でも油断するな。それは落とし穴でもある。
儲けてガッツポーズしたら、その儲けはいったん忘れろ」
父さんの話は、高校生の俺にはまだ分からない部分も多かった。
それでも――忘れちゃいけない気がした。
「ところで、美玲ちゃん可愛くなったな。
明るいし、あの子モテモテじゃないのか?
いいのか~、ここで好きって言わなくて」
「父さん、このタイミングでその話!?
美玲、起きちゃうだろ……。
……好きは好きだよ」
「なら、なんだ?」
「俺にも、まだよく分かんないんだ」
父さんとの会話を続けながら、
車は静かに家へ向かっていった。
時折、サービスエリアの明かりが、窓の外を流れていった。




