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ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
高校生編

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5/8

第5話 ショッピング時の優待券の使いみち(前編)

※本話は【ショッピング・デート】の回です

まだまだ暑さは残っているが、風は少しだけ秋の匂いを含んでいた。

そんな日曜日、石動家は三井アウトレットモールへ買い物に行くことになっていた。


ワンボックスカーに荷物を積み込みながら、父さんが空を見上げる。


「今日は晴れてて良かったな~」


「ほんとだね。アウトレットは晴れてないとね」

と、助手席の葵が言い、後部座席に視線を向けた。

「ね、美玲さん」


「うん! 何買おうか、今から楽しみだよ~。誘ってくれてありがとう、葵ちゃん」


……美玲?


「どうして美玲がここに!?」

思わず声が裏返った。


「ふふふ、びっくりしてる、びっくりしてる」

葵は楽しそうに笑う。

「ラインで誘ったんだよ、私が」


「聞いて……ないけど……」


「どうせお兄ちゃん、自分から美玲さん誘えないでしょ。スマホ片手にずーっと悩んでそうだし。感謝してよね」


「……まあ、誘おうかとは思ってたけど」


「そうなんだ。もう、それくらい気軽に誘ってくれていいのに」

美玲は少し照れたように笑った。


「そうだぞ、楔」

父さんがバックミラー越しに言う。

「母さんも俺も、美玲ちゃんのことはよく知ってるんだから」


「……いろいろあるんだよ」


こうして、石動一家+美玲を乗せた車は、アウトレットモールへ向かって走り出した。


車内では、妹による“取り調べ”が始まっていた。


「では質問です」

葵が急に改まる。

「お兄ちゃんの、どこに惹かれましたか?」


「えっ……?」

美玲は一瞬戸惑いながらも、

「ちょっとぶっきらぼうなところもあるけど、優しいところとか……」


「では次。ここはちょっと……ってところは?」


「嫌じゃないけど……経済の授業の前に、ミンティアをやたら格好つけて食べるところ」


「あるある~! 普通に食べればいいのに、変にキメるよね~」


「おい、なに聞いてるんだよ! って、そんなキメてたか俺?」


車内に笑い声が広がる。


そんな流れで、昔の話にもなった。

美玲は数年前、柔道の大会で優勝している。


「そういえばさ」

俺は思い出したように言った。

「小さい頃、俺が株の漫画読んでたら“暗い奴いるぞ”ってからかわれたことあってさ。

そのとき美玲、同級生を投げ飛ばして『漫画読んでただけでからかわないで!』って言ってくれたんだよな」


「……ちょっと、その話広げすぎ」

葵が呆れたように言う。

「お兄ちゃん、デリカシーなさすぎ」


「もっと言って、葵ちゃん!」


そんなやり取りをしながら、車は目的地へ向かって進む。

窓の外の景色を眺めつつ、ポッキーやカラムーチョをつまむ二人。

俺はお気に入りのトマトプリッツをかじっていた。


今日の美玲は、鮮やかなイエローのトップスに、軽めのアウター。

いつもより少し大人っぽく見える。


ほどなく、三井アウトレットパークに到着した。


「じゃあね~お兄ちゃん」

葵が手を振る。

「感想まとめて、あとで報告してね~」


「するわけないだろ。なんでレポート提出なんだよ」


「ほら、早く行こうよ、楔」


こうして俺と美玲は、二人でモール内を回ることになった。

父さんからは、洋服店の割引券を二店舗分渡されている。


まずは腹ごしらえだ。

俺たちはコールドストーン・クリーマリーに入った。


「私はベリーベリーベリーグッド!」

「じゃあ俺はクッキーオーバーロードで」


「ちょっと食べさせてよ……」


「……おう。じゃあ、そっちのも」


次は洋服探し。

優待券の使える店から見ていくと、自然と選択肢が絞られていく。

メンズもレディースも扱っている店で、使い勝手はいい。


気づけば、美玲のファッションショーが始まっていた。

パステルカラーのトップスが、驚くほどよく似合う。


俺はというと、黒系の薄手のコートを試着していた。


(……なんか、すごく似合ってるな)

(みんな、こんなに自然に着こなせるものなのか?)


「いいじゃん、そのコート」

美玲が言う。

「楔、黒好きだよね。痩せてるから、すごく似合ってる」


「おう……サンキュ」


少しだけ、顔が熱くなった。

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