表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
大学生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/30

第25話 :利食い千人力と、決めない人生 ― ゆるゆる投資物語・外伝

【今回の話は松神視点の回です】


「ふぁ~……なんだよ、振動すげぇな」


俺の名前は松神智也。

四月から、ゆるゆるサークルの副部長をしている。


そんな俺は、今ちょうど起きたばかりだった。

原因はすぐ分かった。母親からの Lino だ。


「酒造会社を継ぐ話、考えてくれた?」


「またその話かよ……スケールでかすぎて、イメージできねぇよ。またメールする」


「ちょっと! まだ話は終わってないわよ。智也~!」


さて、この話はまた今度ということで。

俺はスマホの電源を切った。


最近買ったコーヒーメーカーで淹れたブレンドコーヒーを飲む。

え、酒造会社の息子なのに朝からコーヒー?

いいだろ、別に。


コーヒーをぐいっと飲み干しながら、

PCのモニターを眺めて、俺は前回のサークルのことを思い出していた。


楔と、ちょっと言い合いになったあの場面。


「……あいつ、どうしちまったんだよ」


別人になった、ってほどじゃない。

でも、本人も気づかないうちに、世間とズレ始めてる気がする。


まあ、あいつの問題だ。

俺がどうこう言っても始まらない。


それでも――

普段の楔からは考えられない態度だったから、妙に気になる。


おっと、また Lino か。

今度こそ母親かと思ったら、違った。


「智也君、おはよー。準備できてる?

昼頃集合して水族館行くの、楽しみにしてるから」


朋美からだった。


……あ、そうだ。

今日はデートだった。


昨日までは覚えてたんだけどな。

やっべ、遅れる!!


────────────────────


なんとか間に合った俺は、

朋美と横浜の八海島シーランドに来ていた。

つまり、デートだ。


「きゃー♪ 智也君、サメいるよ! 結構大きいね」


「俺も豆知識披露したいとこだけどさ、

 ジンベエザメとシュモクザメとコバンザメくらいしか知らねぇんだよな」


「それ、結構知ってる方じゃない? しかも、いないサメばっかりだけど」


「そう言うなって。じゃあこれはどうだ?

 人間の肝臓は体重の2~2.5%だけど、

 サメの肝臓は体重の20%くらいあるんだぜ」


「え、知らなーい。

 ふふ、智也君、勉強してきてるね。えらいえらい」


「子ども扱いするなって。

 でも、アーチ型で見やすいし、迫力あるよな」


「うんうん。八海島って、こういうところがいいよね」


サメの見学もそこそこに、

腹が減った俺たちはレストランへ向かった。


八海島はメニューがやたら多い。

ピザ、パスタ、まぐろ丼、しらす丼……。


「わ、メニュー豊富だね。智也君、何にする?」


「うーん……サメバーガー」


「サメに、がっつりハマってるね……」


「サメ肉使用って言われると、どんな味か気になるだろ?

 あとはピザ頼んで、適当につまもうぜ」


「分かった。あ、食後にパンケーキ追加していーい?」


「あぁ。可愛いなぁ、好きにしろよ」


結果、

サメバーガーとマルゲリータ、パンケーキは、

すべて俺と朋美の胃袋に収まった。


……甘いの好きだよな、朋美は。


腹いっぱいになった俺たちは、

コスチュームキャップをかぶってジェットコースターに乗り、

(え、ここ水族館だけじゃないのか?)

フレ〇ドパークみたいなアーケードゲームで盛り上がった。


その途中、ペンギンパレードを眺めながら、朋美が言った。


「そういえばさ、智也君。

 私たち、来年もう四年生だよね。どうしようかな」


「あー……そういや俺も、親から Lino 来てさ。

 実家の酒造会社を継ぐ話、考えたかって」


「それ、なんて答えたの?」


「スケールでかすぎて、まだイメージできないって。

 このままじゃダメだよな、とは思ってるけどさ。朋美は?」


「私も、まだ細かい進路は決めてなくて。

 あはは、ふわふわだね、私たち」


「だな。ふわふわだな」


「私、株の利益がこのまま増えて、

 テレビで取り上げられる展開とか、ちょっと憧れるんだけど」


「朋美が投資で結構利益出してるのは知ってるけど……

 それは、なかなか難しいんじゃないか?」


「だよねー……あ、夜景見に行こうよ」


俺たちはシーランドタワーに移動し、外の景色を眺めていた。

夕焼けが、少しずつ夜景に変わっていく。


「なぁ、朋美」


「ん?」


「未来が不完全でもさ……

 まだ、大丈夫だと思うんだよな」


「どういうこと?」


「もうこの時期から将来をがっちり決めてるやつもいるけどさ。

 俺たちはデート重ねたり、

 漠然とした夢から、少しずつ現実的な仕事に近づいていけばいいと思うんだ」


「のんびりしろ、とは言わないけど……

 焦って先走って、変なところに就職するくらいなら、

 じっくり決めていこうぜ」


「そうだね、私もそう思うよ。

就職の事はもう少し横においても神様も許してくれるよね?」


「あぁ、ここから始まるんだよな」


────────────────────


夜。

名残惜しさを感じながら家に戻った俺は、PCを立ち上げて株価をチェックした。


……おっ。


お菓子スピリッツの株が、プラスになっている。


この株は、下落から上昇に転じたとして、

ニュースでも話題になっていた銘柄だ。

勢いもある。このまま様子を――


『五万も上がってる! まだいける!』


……いや、待て。


止めよう。売却しよう。


決算でもないのに上がっている株は、

ニュースの好材料で一時的に上がっているだけのはずだ。


棚ぼたのラッキーパンチ。

チャートを見ると、陽線が連続していて、上ヒゲも出ている。


分かりやすい。


「利食い千人力、ってやつだな……」


こうして俺は、

過熱しすぎる前に数万円の利益を確定させた。


……株は、熱くなったら損する。


こういう時、楔だったらどうするんだろうな。


あいつ、儲けを追いかけるタイプじゃないから、

数万出たら、さっさと利確するだろう。


もしかしたら、

こういう小さな利益を何度も積み重ねて、

気づいたら大きくしてるタイプなのかもしれない。


塵も積もれば山となる。

略して、ちりつも。


未来を全部考える必要なんて、ないよな。

先走って決めて、失敗することだってある。


……それよりも。


「楔、早く元に戻ってくれよ」


あいつがいないと、

分かりやすく解説する役がいなくなるだろ。


俺は、あいつみたいに説明うまくないんだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ