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ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
大学生編

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第23話:赤い本を見た楔の苦悩――結果が先に書かれている世界

【楔視点】

赤い本には、株の情報が大量に詰め込まれていた。

大幅に上がった株、大幅に下がった株の日時。

いつ、どんな出来事があって、

そのときの株価はいくらだったのか。


別のページには、

日経平均株価が大きく上昇、あるいは下落した年月日が並んでいる。


トラップ・ショック。

自然災害。

コロナ・ショック。

リーマン・ショック。

日本の総理大臣の就任。

特定の政党が衆院選に勝利した日。

原油価格の急騰。

戦争の長期化。

為替市場の一斉下落。

円安。

決算。


株価が上昇、あるいは下落した理由が、淡々と記されていた。


断定的だった。

説明も、理由もない。

ただ、結果だけが並んでいる。


ヤンリオの株価が、テーマパークの不振で

三百円以上下落した年月日……合っている。

楽天堂の株価が、好決算で

千二百円以上上昇した年月日……これも合っている。

書いてあった通りだ……それだけだ


いくつかの銘柄名と日付を、俺は知っていた。

合っている。

いや、合いすぎている。


────────────


……なんなんだ、この赤い本は。


この本があれば、

株価が上昇する数日前に数百株を買っておくだけで、

大きな利益を出せる。


それは、

自分で分析する必要がなくなる、ということだった。


ただ機械的に。

淡々と。

この本を見ながら、トレードすればいいだけだ。


「……ははっ」


「あははははっ」


「あははははははは!!!」


今まで自分で考えて、

チャートを見て、

ファンダメンタルズを分析して、

悩みながら株を買ってきた日々。


それがすべて、

無駄だったように思えた。


いったい、今までの日々は——

何だったんだろう。


────────────


俺はうろたえ、

否定し、

理屈ばかりをこねながら、

部屋で一人、叫んでいた。


検証すればいい。

偶然だろ。

未来が見えるわけじゃない。


……嘘だろ。

嘘だ。

嘘だ、嘘だ、嘘だ!


「うわぁぁぁぁぁっ!!!」


俺は、テーブルの上に置いてあった書類を、

まとめて床に叩きつけた。


それでも、

動揺も、焦りも、

頭の中のパニックも、

少しも収まらなかった。


はぁっ……はぁっ……はぁっ……!


もういい。

もう、どうでもいい。

もう、何も考えたくない。


何も考えたくなかった。

なのに、視界の端で、

パソコンのモニターだけが、

静かに光っていた。

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