第21話:どうする楔!? 引き続き険悪なムードの美玲と舞華さん
【今回の話はゆるゆるサークル/楔視点の回です】
午前中、俺をめぐって険悪なムードは続いていた。
どちらかに決められない俺にも問題があることは分かっている。
俺は二人を大学の正門前に呼び出し、こう切り出した。
「連れていきたい所があるんだ。二人も一緒に来ないか?」
そこは、新たな七不思議の一つと噂されている場所でもあった。
正直、それも少し興味があって誘ってみた。
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大学の外れ、商店街の角にその八百屋はあった。
店先のPOPには、こう書かれている。
『株の半義務化記念! カブが毎日半額セール!』
開店直後だというのに、
大勢のおばちゃんたちがカブの取り合いをしていて、
思わず戦慄を覚えた。
この激しさで、
果たしてカブは無事に残るのだろうか。
そんな心配までしてしまう。
美玲と舞華さんも、呆然とその光景を見ていた。
「……そ、それで楔君。これを見せてどうしたいの?」
「そうだよ楔。正直、よく分かんないんだけど」
「カブの奪い合い、激しかっただろ。
これを客観的に見たら、二人はどう思う?」
「巻き込まれたくないし、参加したくないって思うよね」
「私もちょっと……いや、結構嫌よ」
「だろ? だからさ、俺たちも少し落ち着かないか?」
「傍から見たら、俺たちも似たようなもんだったと思う」
「どっちかに決められないのは、すまないと思ってる。
でも、どっちも大切なんだ。大切すぎて、
簡単に決められるような話じゃない」
「もうしばらく、時間をくれないか?」
「……理屈は分かるよ」
美玲はそう言って、少しだけ視線を逸らした。
「時間をくれ、か……」
舞華は笑った。
けれど、その声はわずかに硬かった。
「ふふっ。まさか七不思議でカブの取り合いを見せるなんてね」
「確かに、あの激しさを見たら、ちょっと落ち着いて考えたくなるわよね」
この八百屋を知ったのは、ほんの最近のことだった。
大学近くの商店街で、
カブを毎日半額で売っているらしいと聞き、
どこかで使えないかと思っていた。
まさか、
二人の仲を取り持つために使うことになるとは、
その時は考えてもいなかったけど。
二人の仲を取り持てた——
そう思いたかった。
でも本当は、
問題を先送りしただけなのかもしれない。
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数日後。
ゆるゆるサークルでは、各種指標についての勉強会が行われていた。
「今日は、株価が割安か割高かを判断する指標について見ていこう」
神林先輩がそう切り出す。
「大河内さん。
一株当たりの資産の何倍まで買われているかを示す指標は?」
「PBRですか?
会社が解散したとき、株主にどれだけ取り分があるかを示す数値です」
「そう。資産と株価が同じくらいだとPBRは1倍前後になる。
一般的に1倍以下なら、株価は底値に近いと覚えておくといい」
「次に楔君。
株主資本に対して、どれだけ利益が出ているかを示す指標は?」
「ROEですね。どれだけ効率よく儲けているかを示すものです」
「そう。例えば株主資本が2000万円で純利益が400万円なら20%。
10%以上で効率の良い経営と言えるね」
「瀬尾さん。PERは何の指標だと思う?」
「そうですね……ゴルフの……あ、違います。
株価が一株当たり利益の何倍まで買われているかを示すものです」
「ご名答。
利益が多くて株価が安いとPERは低くなり、割安と判断される。
投資した金額を何年で回収できるかを見る指標だね」
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勉強会の終了後。
泣いてたカラスは、もう笑っていた。
「舞華さん、その化粧品どこのメーカー使ってるの?」
「あぁ、これはKOTEのを使ってて……」
「私も使ってみようかな」
「化粧品メーカーも株主優待やってたりするのよ。ポイント交換とか」
「そうなんですか?」
「お気に入りがあるなら、逆に使いづらいかもしれないけどね」
その様子を眺めていると、
iからLINEが届いた。
『あれだけお前の取り合いしてたのに……仲良いよな
女ってよく分かんないよな』
……なんでこいつ、こんなに詳しいんだ。
経験した話、か。
いや……“今も経験してる”可能性は?
……Iって、まさか。
いやいや、ないない。
偶然、この男の彼女たちが
同じような状況だっただけだろう。
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二人のいがみ合いをどうしようかと思っていたけど、
うまくいってよかった。
いろんなことはあるけど、
何だかんだで一歩ずつ前進している。
——そう、この時までは、そう思っていた。
あの本を見るまでは──
俺は、本当に前に進めているつもりでいた。




