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ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
大学生編

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23/30

第21話:どうする楔!? 引き続き険悪なムードの美玲と舞華さん

【今回の話はゆるゆるサークル/楔視点の回です】

午前中、俺をめぐって険悪なムードは続いていた。

どちらかに決められない俺にも問題があることは分かっている。


俺は二人を大学の正門前に呼び出し、こう切り出した。


「連れていきたい所があるんだ。二人も一緒に来ないか?」


そこは、新たな七不思議の一つと噂されている場所でもあった。

正直、それも少し興味があって誘ってみた。


──────────


大学の外れ、商店街の角にその八百屋はあった。

店先のPOPには、こう書かれている。


『株の半義務化記念! カブが毎日半額セール!』


開店直後だというのに、

大勢のおばちゃんたちがカブの取り合いをしていて、

思わず戦慄を覚えた。


この激しさで、

果たしてカブは無事に残るのだろうか。

そんな心配までしてしまう。


美玲と舞華さんも、呆然とその光景を見ていた。


「……そ、それで楔君。これを見せてどうしたいの?」

「そうだよ楔。正直、よく分かんないんだけど」


「カブの奪い合い、激しかっただろ。

 これを客観的に見たら、二人はどう思う?」


「巻き込まれたくないし、参加したくないって思うよね」

「私もちょっと……いや、結構嫌よ」


「だろ? だからさ、俺たちも少し落ち着かないか?」

「傍から見たら、俺たちも似たようなもんだったと思う」


「どっちかに決められないのは、すまないと思ってる。

 でも、どっちも大切なんだ。大切すぎて、

 簡単に決められるような話じゃない」


「もうしばらく、時間をくれないか?」


「……理屈は分かるよ」


美玲はそう言って、少しだけ視線を逸らした。


「時間をくれ、か……」


舞華は笑った。

けれど、その声はわずかに硬かった。


「ふふっ。まさか七不思議でカブの取り合いを見せるなんてね」

「確かに、あの激しさを見たら、ちょっと落ち着いて考えたくなるわよね」


この八百屋を知ったのは、ほんの最近のことだった。

大学近くの商店街で、

カブを毎日半額で売っているらしいと聞き、

どこかで使えないかと思っていた。


まさか、

二人の仲を取り持つために使うことになるとは、

その時は考えてもいなかったけど。


二人の仲を取り持てた——

そう思いたかった。


でも本当は、

問題を先送りしただけなのかもしれない。


──────────


数日後。

ゆるゆるサークルでは、各種指標についての勉強会が行われていた。


「今日は、株価が割安か割高かを判断する指標について見ていこう」


神林先輩がそう切り出す。


「大河内さん。

 一株当たりの資産の何倍まで買われているかを示す指標は?」


「PBRですか?

 会社が解散したとき、株主にどれだけ取り分があるかを示す数値です」


「そう。資産と株価が同じくらいだとPBRは1倍前後になる。

 一般的に1倍以下なら、株価は底値に近いと覚えておくといい」


「次に楔君。

 株主資本に対して、どれだけ利益が出ているかを示す指標は?」


「ROEですね。どれだけ効率よく儲けているかを示すものです」


「そう。例えば株主資本が2000万円で純利益が400万円なら20%。

 10%以上で効率の良い経営と言えるね」


「瀬尾さん。PERは何の指標だと思う?」


「そうですね……ゴルフの……あ、違います。

 株価が一株当たり利益の何倍まで買われているかを示すものです」


「ご名答。

 利益が多くて株価が安いとPERは低くなり、割安と判断される。

 投資した金額を何年で回収できるかを見る指標だね」


──────────


勉強会の終了後。

泣いてたカラスは、もう笑っていた。


「舞華さん、その化粧品どこのメーカー使ってるの?」

「あぁ、これはKOTEのを使ってて……」

「私も使ってみようかな」

「化粧品メーカーも株主優待やってたりするのよ。ポイント交換とか」

「そうなんですか?」

「お気に入りがあるなら、逆に使いづらいかもしれないけどね」


その様子を眺めていると、

iからLINEが届いた。


『あれだけお前の取り合いしてたのに……仲良いよな

 女ってよく分かんないよな』


……なんでこいつ、こんなに詳しいんだ。


経験した話、か。

いや……“今も経験してる”可能性は?


……Iって、まさか。


いやいや、ないない。

偶然、この男の彼女たちが

同じような状況だっただけだろう。


───────────────


二人のいがみ合いをどうしようかと思っていたけど、

うまくいってよかった。


いろんなことはあるけど、

何だかんだで一歩ずつ前進している。


——そう、この時までは、そう思っていた。


あの本を見るまでは──


俺は、本当に前に進めているつもりでいた。

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