第2話:気が重いカフェテリア
※本話は【昼休み/投資詐欺】の回です
俺は今日も休み時間に、ヤフーファイナンスでヤンリオの株価を眺めていた。
キャラクターグッズとテーマパークを運営している会社だ。
そこへ、槇原がやってきた。
「おっすー石動。今日も株見てるの?」
「株価が高いからな。チャート見て、上がるか下がるか予想して、これからの実践に備えようと思って」
「ふーん。俺、株に興味ないからよく分からんけど……でも気をつけろよ」
「何が?」
「二組の谷口、聞いてないのか? あいつ最近学校来てない理由」
「?」
「両親が投資詐欺に引っかかったらしくてさ。学校どころじゃないんだと」
「投資詐欺?」
「“絶対上がる”って証券会社の人に言われた株を買ったら、数日後に上場廃止になるらしい。
ほとんど価値がなくなったって話だ」
「……」
「まぁ、投資詐欺以外は噂も混じってるだろうから、どこまで本当か分からんけどな」
身近で、こんなことが起きるんだな――と、俺は思った。
神流学園のカフェテリアは豪華だ。
定食、パスタ、ラーメン、カレー、うどん。どれもおいしい。
ただし、大盛りはない。
食べ過ぎると頭が回らなくなるから、程々に――という考え方らしい。
味は申し分なく、文句を言う生徒はいない。
俺はペペロンチーノを注文した。
結構好きなメニューだが、今日はあまり食欲が湧かなかった。
「楔~、一緒に食べよ~」
幼馴染の瀬尾美玲だ。
トレーにはミートソースパスタが載っている。
「ペペロンチーノ好きだね~」
「オイル系は、あっさりしてて好きなんだよ」
美玲の口の周りには、ミートソースがつきまくっていた。
食事が終わったあと、俺はスマホでヤンリオの株価をぼーっと眺めていた。
「その株、いつも見てるよね~。美玲と遊園地行きたいの?」
「まぁ……いつか一緒に行きたい気はするけどな」
「顔、真っ赤だよ楔」
「大人になったら、こんな株価の高いものも、当たり前に扱う世界になるんだなって思って」
「その年でそんなこと考えてるの、楔だけだよ」
「……そうだな」
「どうかしたの? 楔」
俺は、二組の谷口の両親が投資詐欺に遭った話を、美玲に話した。
「あ~、噂になってるね。それ気にしてるの?」
「ちょっと、ドキッとしただけだよ」
「あっはっは。そんなこと?」
「そんなことって……」
美玲は俺をじっと見つめたまま、言った。
「大丈夫だよ。私は、楔が引っかからないって信じてるから」
その言葉が、胸の奥にすっと落ちた。
休み時間ギリギリになり、俺たちは慌てて教室に戻った。
それはそうと、大学部の教授が経済の授業で言っていた。
「大半の日本の株は、明るい」
……当たっていてほしい、と思った。
放課後。
今日の終値のヤンリオ株は、雪崩が起きたかのように急落していた。
夜。
家族で夕食を食べながら、俺と父さんは
『プロ野球戦力外通告』を見ていた。
父さんは、この番組が好きだ。
「なぁ楔。人はどん底に落ちる時もあるけどさ、
光に救われていく時もあるんだよな」
「……」
「その全部をひっくるめて、人生って形作られていくんじゃないか。
父さん、これ見てるとそう思うんだ」
俺は、学校で起きたことは何も話していない。
それでも、その言葉が、妙に腑に落ちた気がした。




