第16.5話:部長×部長の積もる話は山のように
【この話は天竜部長/水窪部長の語り回です】
──居酒屋「田助」。
神流学園の大学生が夜な夜な集まる、
目新しいおつまみはないが、提供が早く、
何より安いありがたい店だ。
そこには、神流トレーディングクラブの水窪部長と、もう一人──
「すまん、待ったか?」
「いや、今来たとこだ天竜」
季節は、文化祭から一か月後。
飲み会シーズンの真っ只中だった。
ゆるゆる株投資サークルの天竜部長と、
神流トレーディングクラブの水窪部長が、
サシで飲んでいた。
「文化祭の時は、すまなかったな、うちの副部長が」
「いや大丈夫だ。浅見君が連れて帰ってたからな」
「俺とお前のサークルは価値観が違うから衝突するのも仕方ないが
もう少しお互いを尊重してもいいと思ってる。立場上そんなこと言うと
揉めるから言ってない」
「なかなかまとまらないみたいだな」
「俺もお前ももうすぐ卒業だからな、あまり揉めたくはないんだが
ただ、長篠君も小さい頃に家庭でいろいろあったらしくてな。
詳しくは知らないが、
生活資金に手を出してまで優待を買いすぎた、
という話も聞いた。」
「…そうか」
「ゆるゆるサークルは利益追求ではなく長期保有で結果を出すタイプだってのは
うちの部員も分かってるはずなんだがな」
「頭ではわかってても、感情が抑えられないことだってあるさ」
話は、新入部員の楔のことへと移っていった
。
「おまえんとこの1年生。株の知識もあるが、
それ以上に、言葉に熱がある。
ああいう説得力は、なかなか出せるもんじゃない。」
「親父さんから、中学からいろいろ教えられていたのがいい効果をもたらしてるのかもな」
「うちの副部長がいちご大福全部食べながら悔しがってたよ(笑)」
「ちなみに水窪、お前卒業したらどうするんだ。」
「丸白の商社に内定している」
「商社かエリートギャンブルサラリーマンの誕生だな、パチンコとか程々にしとけよ」
「う、うるさい。わかってるよ天竜お前は?」
「俺はアメリカでホームステイしながら、
経済と株を直接、勉強しようと思っている。
アメリカの株自体は日本でも買えるが、
実際に生活しないと分からないこともあると思ってな」
「お前らしいな」
「まぁ、また殴りこみに来てくれよ。冷静なディベートなら相手するぜ」
「ふっ、望むところだ。デイトレードの良さを語ってやろう」
2人の話は止まらず、
それぞれの「次の世代」を思いながら、
夜は静かに更けていった。




