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ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
大学生編

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17/30

第16話:いろいろ巻き起こる文化祭。変わりゆく楔の世界!

【この話は文化祭/美玲視点/浅見視点の回です】

株主優待展示のブースには、

クロカードや図書カード、おこめ券などの金券類が並び、

フジオフード、ヤマハ発動機といった

カタログや好きな商品を選べる優待も紹介されていた。


ドーミーインやロイヤルホテルなどの宿泊割引券、

カゴメや味の素といった食料品の優待は、

写真付きの説明文とともに掲示されている。


思った以上に人が足を止めている。

――前から好評だった、というのも納得だ。


さらに、

北国まいたけファクトリーの「マイタケご飯の素」「エリンギご飯の素」を使った

炊き込みご飯企画も大盛況だった。


安く提供していることもあり、次々と売れていく。

物価高とインフレで米の値段も上がっている中、

正直なところ、負担は小さくない。


だが、

お米の優待やおこめ券、

そして舞華さんの家から少し分けてもらった分で、

どうにか回っているようだった。


────────────────────


この賑わいの中で、

うまく話ができるだろうか――

そう考えていた、その時だった。


こちらに向かってくる一団がある。

……嫌な予感がする。


「優待品の冷やかし」だ。


長篠

「(優待品を手に取りながら)ふーん。

 実際、これでどれだけ人の心が動くのかしらね。

 まあ、吉報を待ってるわ」


「ちょ、ちょっと。優待品、触らないでよ」


モブ

「別にいいじゃん。減るもんじゃなし」


長篠

「雪菜、ちょっと軽く披露してあげなさいよ」


浅見

「うふふ~。

 株主優待をやめて爆下がりしてたお寿司屋さんの株、

 数百株まとめて買ったら――

 優待復活で、爆上がりしちゃった~」


長篠

「ふふ。そういうことよ。

 株式投資の醍醐味は、

 いかにうまく儲けるか。

 利益を出して、資産を大きく増やす。

 それが一番楽しいんじゃない!」


「松神さん……この人たち、

 毎回こんな感じなんですか?」


松神

「ああ。向こうの副部長、声がデカくてな。

 客が寄り付かなくなるから、正直困ってるんだよ」


……来てくれないのは困る。

あまり目立ちたくはないけど――やるしかない。


僕はいつものようにミンティアを口に放り込み、

小さく息を吐いて、気合を入れ直した。


「すみません。

 一旦、話を区切ってもらってもいいですか?」


長篠

「……誰よ、あなた」


「神流大学1年の、石動です。

 他のお客さんもいらっしゃるので」


長篠は、鼻でふんっと息を鳴らした。


長篠

「言っておくけど、

 私は事実を話してるだけよ。

 株が持ち上げられてる、この世の中ではね」


「言っていることは、よく分かります。

 それも一つの考え方だと思います。


 でも、利益を追求できるのは、

 株を扱い慣れている人たちが中心ですよね。


 まだ慣れていない人、

 これから始める人にとっては、

 NISAや株主優待、

 投資信託――

 少額でも着実に資産を増やす方法も、

 立派な選択肢だと思います」


長篠

「……っ」


「大きな利益が出るのは、確かに楽しい。

 でも今は、多様化の時代です。

 いろんな考え方があっていいと思います」


浅見

(……あっ。

 副部長が暴走したら、

 いちご大福で止めろって、部長に言われてたんだっけ)


浅見

「あ~、部長。

 そろそろ行きましょうよ。

 部室の戸棚にある三郷屋のいちご大福、

 全部食べちゃいますよ~」


長篠

「……っ!

 待ちなさいよ、それ楽しみにしてたんだから!

 ほら、行くわよ、あんたたち!」


一団が去っていく。


――と、その途中。


浅見が、足元に落ちているものに気づいて立ち止まった。


一見すると、

「週刊少年セレクト」と書かれた、

マンガ雑誌のように見える。


子供が拾おうとしたが、


「僕たち、何してるの~?」


と声をかけられ、驚いて走り去っていった。


表紙は貼り付けただけのもの。

中身は、赤い色の本だった。


浅見は、そっとページをめくる。


(……なに、これ)


株価?

しかも、これから上がる銘柄……?


冗談にしては、出来すぎている。

文化祭に、わざわざ落ちているのも不自然だ。


(……もし、これが本当なら)


私だけが知っている。

あの人たちが必死に勉強している“答え”を、

私は、もう持ってしまっている。


(……でも)


これって――

“面白い”のかな。


当たると分かっているゲームを、

続けることって。


浅見は、赤い本を閉じ、鞄にしまった。


(……使うかどうかは、後で決めればいい)


ただ一つだけ、

胸の奥に残った感覚があった。


“知ってしまった”という感覚。


それは、

少しだけ――冷たかった。


────────────────────


「美玲、次どこ行く?」


真岡

「ん~どうしようかな。

(思い切って会いに来たんだけど……楔、どこにいるの?)」


「なんか、人が集まってる場所があるね」


美玲

「(……楔がいる!)

 ね、あそこ行ってみない?」


────────────────────


一応、前日に話す内容は考えてきた。

……それでも、やっぱり緊張する。


舞華

「楔君、準備OKだって。いける?」


――いつも通りだ。

説明するだけ。


僕は深呼吸して、説明コーナーへ向かった。


「何が始まるんだろうな」


「株を、簡単に解説するらしいよ」


「お父さん、何が始まるの?」


「皆さん、お待たせしました。

 これより

 【誰にでも分かる。株とは何か?】

 を始めます。よろしくお願いします」


株って聞くと、

難しい、怖い、

裕福な人たちの世界――

そんなイメージを持つ人も多いと思います。


でも、

ものすごく簡単に言うと――


「この企業、

 サポーターになってみようかな」


そんな気持ちを、

形にしたものです。


企業は、新しいことを始める時、

お金が必要になります。


その時に、

「手伝ってくれませんか?」

と声をかける。


それに

「いいですよ」

と応えるのが、

投資する、ということです。


────────────────────

美玲Side


(……あ)


声を張り上げてるわけでもない。

偉そうなわけでもない。


ただ、

ちゃんと「分かる言葉」で話してる。


(楔は……

 私が知らなかった世界に、

 ちゃんと連れてきてくれる人なんだ)



────────────────────


だから、必ずしも

「収入を増やさなきゃいけない」ものでもないし、

「毎日チェックしなきゃいけない」ものでもありません。


優待が好きな人もいる。

配当を楽しみにする人もいる。

応援したい企業を、長く持つ人もいる。


株って、

一つの正解じゃなくて、

選び方が無数にあるものなんです。


――言い切った、その瞬間。


パチパチパチパチ。


拍手が、僕の周囲から起こった。


途中で立ち去った人もいた。

首をかしげている人もいた。


それでも――


「なんか全部は分かんなかったけどさ。

 気持ちは伝わった気がするよ、おじさん」


……よかった。

少しでも、届いたみたいだ。


……って、おじさん。

僕、まだ大学一年生ですから!


────────────────────


俺は知らなかった。


「あれが彼氏の楔君?」


美玲

「……まだ」


「“まだ”って言い方、

 完全に好きな人いる時のやつじゃん」


美玲

「……っ!」


「終わったみたいだし、行こ。

 私、イカ焼き食べたいし」


美玲

「(……楔)」


――この時、

俺の解説を、美玲が聞いていたことを。

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