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ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
大学生編

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16/30

第15話:美玲が悩むのをよそに始まる文化祭の決起集会

【この話は楔視点の回です】

私はスマホを片手に、ベッドに腰掛けたまま、楔のことを考えていた。

画面は静かなまま。楔から、特にLINEは来ていない。


……「変わるから」で、終わってるよね。


そう思うと、こちらから送るのが、急に怖くなった。

「今いい?」なんて、今さら聞けるわけもない。


……やっぱり、今はダメだ。


会って、話したい。

ちゃんと、顔を見て。


……葵ちゃんに、相談してみようかな。


──────────────────────


前回のサークル活動が終わってから、二週間。

文化祭の決起集会を控えた昼時、俺は槙原と大学近くのラーメン屋に来ていた。


隣のアパートに住む小池さんから教えてもらった、

「らぁ麺 満月」。


「ここの豚骨ベースの塩ラーメンは絶品だから、一度行った方がいい」


そう言われて来てみたが、俺も槙原も、ラーメンは好きでも

わざわざ店を探して食べに行くタイプではなかった。


しかもオープン間もなく、今はまだ空いているらしい。

――行くなら今だ。


食券を買い、しばらくしてラーメンが運ばれてきた。


「おっ……豚骨の旨味もあるけど、それ以上に塩がまろやかだな」

「スープがすっきりしてて、具材との絡みも抜群で……箸が止まらないんだけど」


「……待て待て楔。

 うまい料理コメント合戦みたいになってるけど、用があったんじゃないのか?」


「悪い悪い。あんまりうまくてさ。

 ……実は、バイト代が入ったんだけど、何に使えばいいか分からなくなってな」


「え?それ本題?

 そんなの、欲しいもの買えばいいだろ」


「……そうだよな」


「真面目すぎるんだよ、お前は。

 そのまま考え続けたら、ラーメンの味忘れるぞ」


こうして、他愛もない話をしながら、

俺たちはラーメンを堪能し、気づけば時間が過ぎていた。


──────────────────

今日は、文化祭の決起集会の日。

サークル全体が、どこか浮き足立っているように感じた。


「そういえば石動君、中部圏の私鉄株、この前紹介してたよね」


辰野先輩が声をかけてくる。


「はい。どうかしましたか?」


「いや、いい株だなと思って。

 一定のレンジで上下しながら、ちゃんと戻ってくる」


「俺もそう思ったわ。

 多少下がっても、優待や決算のタイミングでちゃんとプラスになる」


「いや……そんな」


「みんな褒めてるんだよ。

 利益に走らず、優待がもらえるまで我慢できるのは立派だ」


神林先輩の言葉に、思わず照れくさくなる。

でも、正直……嬉しかった。


──────────────────────


「よし、それじゃ文化祭の出し物を決めようか」


天竜部長が場を仕切る。


「ちなみに、神流アングラ投資クラブは

『ビットコインは儲かる。中井部長独演会』らしい」


「神流トレーディングクラブは

『これだけ覚えれば勝てる、元手が二倍になる技術』のレポート配布だそうです」


「尖ってますね……」


「うちは、あれはやらない」

天竜部長は即答した。

「真似したら、どこも同じになるからな」


「例年通りだと、株主優待の展示ですが……

 他に案はありますか?」


舞華さんは、少し考え込んでいるようだった。

(株主優待の展示だけで、大丈夫かしら……)


「身近になってきた“株そのもの”を紹介したことって、ありますか?」


俺がそう口にすると、部長が顎に手を当てる。


「いや……ないな。

 でも口座だけ作って、何もしてない人も多いらしいし……石動、やってみるか?」


「え? 発表なんて、やったことないですよ」


「俺たちもサポートする。

 そんなに人も集まらないだろうし、それに……」


「それに?」


「お前なら、面白いものができそうな気がする」


「大河内、お前も手伝ってやれ。なんとなくだ」


「なんとなくって……」

舞華さんは苦笑しながら、俺を見る。

「いいわ。一緒にやろう、楔君」


──────────────────────


議題は、そのまま進んでいった。


「松下、お前、北国まいたけファクトリーの炊き込みご飯の素、いっぱいあるって言ってたよな?」


「えぇ!? 何人分いると思ってるんですか!」


「足りなきゃ市販のやつで補えばいい。

 目玉になるぞ、これは」


「……誰もやりたがらない理由が分かるな」


「……あはは」


「……面白いですね、それ」


「よし、やるか!

 せっかくの文化祭だ。炊飯器くらい、家から持ってくる!」


「決まりだな。

 今年も“らしさ”全開で、文化祭を楽しむぞ!」


派手ではない。

でも、こういう発想が次々に出てくるのが、このサークルだ。


――やっぱり、いい場所だな。


そう、改めて思った。

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