第12.5話 美玲の小さな一歩
※本話は【美玲視点】の回です
私は、せっかくの休日に楔に会いに行くこともなく、
部屋で一人、モヤモヤしていた。
どうしよう。
楔に「私、変わるから」なんて言っちゃったけど、
肝心の中身が、まったく浮かんでこない。
――変わりたい。
でも、どう変わればいいのかが分からない。
……図書館に行こう。
神流学園なら、休日でも無料開放している。
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そう思い立って、私は外に出た。
図書館の中は、静かだった。
平日よりも人が少なくて、
余計に自分の足音が響く気がする。
私は棚の前に立ち、背表紙を眺めた。
「株とは何か?」
「株でお金が儲かる方法」
「株の研究をする上で欠かせないこと」
……多すぎる。
どれを取ればいいのか、まったく分からない。
タイトルだけで、もう頭がいっぱいになる。
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私は一度、図書館の外に出た。
「こういう時は……甘いものだよね」
売店で、よくあるチョコレート菓子を買って、
ベンチに腰を下ろす。
甘さが、少しだけ頭を落ち着かせてくれた。
――落ち着いて考えよう。
楔がいつも見ているのは、
難しいグラフとか、数字の羅列だけじゃなかった。
まずは――
どんな会社があるのか。
そして、どんな優待があるのか。
やっぱり、そこからだよね。
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私はもう一度、図書館に戻った。
「食品関係」
「飲食店の株主優待特集」
ページを開くと、
見覚えのあるお菓子メーカーの名前が並んでいた。
……そうだ。
昔、楔も株ができない頃、
こうやって株主優待を眺めてばかりいたっけ。
儲けるとか、難しい理屈とかじゃなくて。
「これ、いいな」って言いながら。
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私の株の勉強は、まだ始まったばかりだ。
でも――
立ち止まっているだけだった私が、
スタートラインに立てた気はした。
少なくとも、
「何も知らないまま」では、もういたくない。
私は、そう思った。




