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ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
大学生編

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12/30

第12話 二日酔いの舞華と、ゆるめのサークル

※本話は【舞華視点/心情】の回です

「……うぅ、頭が痛い……」


「お嬢様、大丈夫ですか? 本当に心配しましたよ」


「ありがとう、関さん。迷惑かけたわね……」


「私は何も。大学のサークルの方が、きちんとお連れくださったんです」


「え……そうだったかしら」


「石動さん、とおっしゃっていましたよ」


――石動君。


そうだ。確かに、石動君に送ってもらったんだ。


どうしよう……。

あまり覚えてないけど、かなり恥ずかしいことを言った気がする。

顔、合わせられるかしら。


私はベッドの上で身を丸めたまま、そっとスマホを手に取った。

ラインの通知が一件。


「おはようございます、舞華さん。

よく眠れましたか? また、ゆるゆるサークルで」


……心配、かけちゃったわね。


「今度、ちゃんとお礼を言わなきゃ……」


そう呟いて、スマホを伏せた。


──────────────


学内カフェ「セント・ウォール」で、俺はカウンターに立っていた。


「おっ、様になってんじゃん」


「よ、よう槙原」


「なんだその距離感。まだ気にしてんのか? 先週のこと」


「……ちょっとな。気持ちがすっきりしなくて」


「気にすんなよ。いろいろ言ってたけど、俺はお前、正しかったと思うぜ」


「槙原……」


──────────────


午後からはサークル活動がある。

俺は自分が初めて買った日本酒関連株の値動きを確認しながら、部室へ向かった。

時間には、ちゃんと間に合った。


「石動君。この前の舞華ちゃん、大丈夫だった?」


声をかけてきたのは鈴ノ下さんだ。


「ああ、大丈夫です。今日は頭痛がひどいから休むって、伝えてほしいってラインが来ました」


「さすが石動君だね~。あのとき、噂になってたよ」


「……どんな噂です?」


「“ここに紳士的な騎士様がいる~!”って」


「騎士って……」


話題を変えるように、俺は隣の部屋をちらりと見た。


「神流トレーディングクラブの人たち、仲悪いって聞いてましたけど……隣でやるんですね」


「いつもだよ」


松神さんが肩をすくめる。


「向こうの部長は、天竜さんのことそこまで嫌ってないと思うけどな」


この日の活動内容は、近況報告。

今どんな優待を持っているか、どんな株を探しているか。

眠くなるくらい、ゆるい。


「じゃあ自由に話してくれ~」


鈴ノ下さんが、届いたばかりのコスメ優待を披露すると、部屋が一気に盛り上がった。


その後、日本酒銘柄の話になり、俺が買ったと告げると、意外と食いつきが良かった。

このサークルは、やっぱり“優待を楽しむ”視点が強い。


――今日は、これで終わりかな。


そう思ったとき、ひとりの部員が口を開いた。


「……俺、ヤフー掲示板の情報に釣られて株を買って、含み損出しちゃって」


部屋の空気が、少しだけ変わる。


「煽り屋につられて、イナゴになったか」


部長の言葉は厳しいが、責める調子ではなかった。


「情報で買った株って、売り時が分からなくなるんだよ。

 愛着を持って買った株とは、そこが違う」


「……確かに」


「“たぶん”“いけるだろう”は、投資では危険だ」


部屋の空気が、少しずつ引き締まっていった。


──────────────


サークル終了後、俺は日本酒株をもう一度確認した。

少し下がってはいるが、全体としては横ばい。


「……今は、これでいい」


そのとき、スマホが鳴った。


美玲からの着信だ。


「おう、美玲。どうした?」


「忙しいところごめんね。声、聞きたくて……」


「最近はサークルとか株の確認とかで、まあ忙しいな。でも嫌な疲れじゃない」


「……そっか」


少し間があって、美玲が言った。


「ねえ、楔。私……変わるから」


「変わる?」


「じゃあね」


通話は、それで切れた。


変わるって……何を?


考え込んだまま、俺はスマホを見つめていると、

もう一件、通知が届いた。


謎のライン友だち――“I”。


「『これでいいんだ』じゃないことも、あるよな」


画面を閉じ、俺は深く息を吐いた。


答えは、まだ見えない。

でも、何かが少しずつ動き始めている。


そんな予感だけが、確かにあった。

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