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ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
大学生編

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11/30

第11話 新歓イベントで気持ちが先行する楔と舞華のホンネ

※本話は【美玲視点・株投資サークル】の回です

提灯の明かりがこうこうと照らす。

居酒屋「田助」では、ゆるゆる株投資サークルの新歓イベントが始まっていた。


平林副部長が、天竜部長の肩を軽く叩く。


「部長、そろそろいいんじゃないですか? 乾杯しましょうよ」


「おう、やるか。今日はみんなお疲れ。楽しい新歓にしよう。

じゃあグラス持ってくれ。乾杯!」


「カンパーイ!」


店内にグラスの音と笑い声が広がる。


──────────────────


新入部員の自己紹介


しばらくして、新入部員の紹介タイムが始まった。


「じゃあ新入部員は、学部・学年と、欲しい株主優待を一つだけ挙げてくれ」


最初に名指しされたのは、舞華さんだった。


「国際政経学部・国際政治学科一年の、大河内舞華です。

株については、まだ本当に何も分からないので……

カテゴリーで挙げるなら、洋服系の割引優待、でしょうか」


一瞬、店内がざわつく。


「……大河内?」

「もしかして、あの……?」


鈴ノ下さんが、空気を和らげるように笑った。


「あ~分かる分かる。洋服系の優待って、3000円とか5000円分だったりして、意外とお得だよね。期限も長めだし」


確かに、洋服系の優待は使い勝手がいい。

父さんからもらったときも、そんな金額だった。


次に、俺の番が回ってくる。


「国際政経学部・国際経済学科一年の石動楔です。

欲しい優待は……正直、一つに決めきれませんが(笑)

カタログや商品一覧から選べるタイプが好きですね。自由度が高いので」


それ以上、特別なコメントはなかった。

このサークルは、そういう距離感らしい。


雑談と、価値観のズレ


あちこちでビールを片手に会話が始まる。


「二年の松神智也だ。よろしくな楔。

さっき言ってた優待、キャピタルゲイン狙えそうか?」


「……どうでしょうね」


「昔その株で、俺けっこう儲けたんだよ。買っといた方がいいぜ」


鈴ノ下さんがすかさず突っ込む。


「ちょっと智也くん、また自慢話になってるよ」


「おっと、悪い悪い」


話題は自然に、優待の中身や酒の話に流れていく。

場は和やかだった。


──────────────────


その頃、美玲は自分の部屋で、スマホを眺めていた。


サークル、新歓、株。

最近の楔は、前に進む話題ばかりだ。


(……私、何も知らないままなんだ)


知らないことを理由に、聞かないでいた。

分からない世界を、遠くから見ていただけだった。


美玲は、スマホをぎゅっと握る。


(このままじゃ、置いていかれる)


答えはまだ出ない。

でも――何かを始めなきゃいけない気がしていた。


──────────────────


舞華の異変


店内を見回すと、舞華さんの姿が見当たらない。


「すみません、ちょっと舞華さん探してきます」


店の奥。

ロングボブにチェックのブラウス、フェミニンな雰囲気の女性と一緒にいる舞華さんが、かなり楽しそうに笑っていた。


「舞華さん、大丈夫ですか?」


「ごめんね~♪ 女子トークしてたら、みるみる酔っちゃって~」


「……どちら様ですか?」


「神流トレーディングクラブ一年、浅見雪菜よ♪

あなたたちのライバルサークル。覚えといてね」


一瞬、空気が張りつめる。


「おい、なんでぬるいサークルと一緒に飲んでんだよ」


「酒がまずくなるぜ」


「そんなことで酒はまずくならねぇよ」


天竜部長が間に入る。


「おいおい、今日は新歓だろ。仕切り直しだ、楽しくいこうぜ」


浅見さんは軽く手を振り、引き上げていった。


──────────────────

送る決断


それよりも問題は――舞華さんだ。


「だいたい楔、よそよそしすぎるのよ。

なんで“さん”付けなの。早く呼びなさいよ、舞華って」


「……飲みすぎです。帰りましょう」


そのとき、舞華さんのスマホが鳴った。


「楔、出てよ~」


「無理ですって」


「多分、メイドの関さんよ~」


仕方なく電話に出る。


事情を説明し、住所を聞き、タクシーを手配した。


──────────────────


財閥の現実


門の前で、俺は言葉を失った。


「……なにこれ」


東京ドーム六個分くらいはありそうな、広すぎる敷地。


関さんが駆け寄ってくる。


「お嬢様!? こんなお姿、初めてです……!」


「じゃあ、僕はこれで」


「またね~、楔~」


無邪気な声に見送られ、俺はタクシーに乗り込んだ。


スマホは、もう電池が限界だった。


深い闇の中、車は静かに走り出す。


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