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ゆるゆる株式投資物語ー配当と優待が人生を少しだけ変える  作者: 稲毛塔名
高校生編

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1/8

第1話:株に熱中する高校生、だがしかしこの世界は甘くない

※本話は【高校生】の回です

四月。

校門の前の桜は、もう半分ほど散っていた。


俺、石動楔は、二年生になっても特に変わらない朝を迎えていた。

制服のポケットにはスマホ、バッグの中には教科書。

ただ一つ違うのは、頭の中にある“関心事”だった。


それは美怜との再会だ


美玲「楔先輩、高校でもよろしくね?」


振り向くと、美怜が満面の笑みで立っていた。

中学のころから知っている幼馴染。

神流学園高等部に入学したばかりで、制服がまだ少し大きい。


「……おう。よろしくな」


俺はそっけなく返す。

だが内心では全く落ち着かなかった。


(こいつ、また近くにいるのか……)



昼休み。

教室の隅で、楔はスマホを伏せ気味に操作していた。


ニュースアプリの日経欄。

ゲーム会社のバンガイケムコの業績記事が目に入る。


「……バンガイケムコって、意外と儲かってるんだな」

声に出さず、心の中でつぶやく。

数字を眺めるだけで、何かが少し楽しくなる。


隣の槇原から声が飛ぶ。


「また日経見てるの?好きだねお前も」

「俺から株取ったら何が残ると思うよ?

「株のニュースだろ。好きだよな、そういうの」

「まぁ……嫌いじゃない」


それ以上、説明はしない。

まだ、自分でも“どこまで本気なのか”分からないからだ。



体育館、教師の声がやけに軽く聞こえる。


「はーい、今日はバドミントンなー。試合形式でやるぞー」


歓声とため息が混じる体育館

俺はラケットを持ちながら、正直思う。


(……決算発表の方が緊張するんだけどな)


美怜は元気いっぱいに動き回り、

楔はほどほどにラリーを続ける。


二人の距離感は、昔と変わらないようで、少しだけ変わっていた。



夜。

石動家の食卓。


テレビでは経済番組の再放送が流れている。


「お兄ちゃん、またWBS録画してる?」


妹の葵が呆れた声を出す。


「いいんだよ、すき家の新商品特集とか言われたらちょっと見てみたいから」


父・透は、新聞をたたんで言った。


「最近な、また株を始める人が増えてきた」


俺は箸を置いた。


「……そうなんだ」


「悪いことじゃない。

 ただな――」


透は少し間を置いて続ける。


「株は、楽しいけど甘くはない。

 一喜一憂して終わると、だいたい痛い目を見る」


その言葉は説教でも忠告でもなく、

経験者の静かな実感だった。


楔は、何も返さなかった。

ただ、胸の奥にその言葉をしまった。



その夜、布団に入ってからも、

昼に見たニュースと父の言葉が頭に残っていた。


(楽しいけど、甘くない、か……)


株は、まだ“遊び”の延長かもしれない。

だが、確実に楔の世界に入り込み始めていた。


――それが、後に人生を揺らすとは、

この時の彼はまだ知らない。

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