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玉藻前の過去
殺されるか、封印されるかの
どちらかだと思っていたのに、あたしは
いつの間にか彼の妻の座についていた。
彼の友人からは強く反対されたらしいけど、
なんでそんなことをしたのか、
あたしには分からないし興味もない。
「何故、あたしなんかを妻にしたの?」
そう聞くと彼は笑みを讃えながら
「綺麗だと思ったから」と
何でもないことのように青空を見上げた。
まるで、空が綺麗だと言うかのように
ごく自然に。
一瞬だけ妙な胸の高鳴りを感じた。
「貴方、名前は?」
「はははっ、ようやく僕に興味を
持ってくれたのかい?
僕は宮前優。好きに呼んでくれ」
その笑顔が眩しくて、あたしは目を逸らした。
優は、いつも笑顔を絶やさない人間だった。
あたしはそんな人間を見たことが無かった。
戸惑い、怒り、悲しみ、
そんな当たり前の感情をおくびにも出さない。
何でだろう?
そう思った時、自分の中で初めて
人間に興味が湧いたことを知った。
「貴方は何故いつも笑っているの?」
「……さあ、なんでかな」
声色に戸惑いが混じっているのを感じて
それ以上は聞けなかった。
ただ、優の隣に座って2人して沈みゆく
夕陽を眺めていた。




